遊びこなせていますか?園のおもちゃ
連載1回目に続いて、「リグノ」という積み木のあそび方を深めていきます。
今回も対象は1~2歳児。リグノは0~2歳ぐらいの子どもたちととても相性のいい積み木です。
積み木は床で遊ぶもの……とは限らない!
あそび環境コーディネーターとして保育園で活動を始めたとき、積み木は床で遊ぶものだと思っていました。
床の上でリグノをいろんな形に積んでみせると、子どもたちが集まってきて一緒にあそび始めます。
しかし、しばらくするとどこかに行ってしまう、もしくは手で積み木を「ぐしゃぐしゃ」と広げてあそびはおしまいとなっていました。
何度かそれを繰り返したある日、机の上に積み木を置いて、椅子に座って遊ぶよう提案してみました。
すると子どもたちが以前より意欲的に積み木であそぶようになり、取り合いがなくなることはないですが、その頻度も減りました。
これは、椅子に座って机に向かうことで「自分のあそぶスペース」が明確になり、目の前の積み木に自然と集中できているようでした。
あそびに集中すると「取り合い」は減る
どんなあそびにも言えますが、子どもたちがおもちゃに興味をもち、あそびに集中し始めると自然と取り合いは減ります。
1~2歳児さんでも、今、目の前にある自分の世界に没頭すると、他の人がやっていることに意識が向かなくなる瞬間があるのです!
皆さんは体験したことないですか?この瞬間を見たくて、私はあそび環境コーディネーターをやっているといっても過言ではありません。
そして、こういう瞬間を作るために現場に入っています。
あそびこむためには「おもちゃの数」が重要
子どもたちが真剣にあそびこむ姿を見ると、声をかけるのもはばかられるほどです。
そういう瞬間に導くためには、「おもちゃの数」が重要です。
今回のリグノでしたら、1~2歳児さん1人に、最低でも3~5個手渡せるぐらいの数があるといいですね。
ちなみに数がありすぎても、子どもたちはあそびこめないので、最初から全部の積み木を出す必要はありません。
1~2歳児に多すぎる積み木という環境は、手でぐちゃぐちゃと広げておしまいとなりがちです。
ですから、子どもたちのあそぶ様子を見て、積み木の量を調節する。ここが保育士としての腕の見せ所ですね!
あそぶ人数が減ってくれば、当然積み木の数も減らします。
子どもの集中力が途切れないよう、積み木の量を調節する
どれぐらい増やしたり減らしたりするかは、子どもたちのあそぶ様子を、とにかくよく見ているとわかります。上に積んでいくか、横に並べていくか。
子どもが積み木を探しに行くことで集中力が途切れてしまわないように、量を調節したり子どもの傍にそっと積み木を置いたりします。
そういうことが保育士の専門性につながります。
積み木を通して1~2歳児が気づくこと
リグノを通して子どもたちはあることに気づきます。自分を中心にして上下、前後、左右に円柱が動くということです。
リグノの真ん中の穴を上向きに置き、円柱を入れる・出す。この動きは上下の動きです。
また、穴を正面に向いて置くと、円柱は前後に動きます。横向きに置くと円柱は左右に動く、そして穴は見えなくなり面が見える。見えないところにも穴はあり円柱の動きは見える。
一つの積み木で3通りのあそび方ができて、自分から見て「物の動きには3つの方向性がある」。
あそびながら子どもたちは認識します。
それは物事の成り立ち、自分を取り巻く世界の成り立ちの一部を知ることにつながっているのではないでしょうか?真剣な表情で、そっとリグノの中心の円柱を押す子どもの手先への神経の配り方。
どこまで押せば、円柱は穴から落ちるのか?
子どもたちはこうやって自分が持つ力の使い方、手先や体の使い方、自分という存在を学んでいくのではないかと思います。
プロフィール
横尾 泉(よこお いずみ)
木のおもちゃ「チッタ」店主、あそび環境コーディネーター、保育士。
保育士養成校を卒業後、乳児保育園の保育士などを経験。
その後、フィリピンの孤児院や、オーストラリアを放浪しながら現地の保育園にてボランティアを行う。
結婚を機に上京、子育てに行き詰まったことをきっかけに、おもちゃコンサルタントマスター取得。
その勢いで自宅ショップ「木のおもちゃチッタ」オープン。
こだわりのおもちゃ屋を経営しながらあそび環境コーディネーターとして保育現場で活動。
園内研修、保護者向けのおもちゃの講座などを手掛ける。石川県出身、2児の母。 Facebook https://www.facebook.com/woodtoychitta/