◆保育士の退職金事情
終身雇用制が崩壊しつつある今、長年正社員で働いていても退職金が出ないということが、一般企業で多くなってきています。
では、保育士ならばどうでしょう?保育士として長く同じ保育園に勤務していても、退職金は支払われないのでしょうか?公立と私立で違いはあるのでしょうか?
そこで今回は「保育士と退職金」について徹底分析したいと思います。
◆退職金が出なくても、法律的には問題はない
◯退職金0円…「あり?」「なし?」
「退職金がないなんて、そんな会社ありえない!違法じゃないの?」なんてちょっと過激な声も聞いたことはあります。そもそも「退職金=当たり前」って根拠があることなのでしょうか?「だって、退職金で老後の生活を安心して暮らせるって…」と思う方もいるかもしれませんが、世の中はそんなに甘くありません。退職金というのは、法律で会社が支払うことを義務付けられたものではありません。言い換えると、退職金を支払う会社は(義務ではなく)任意で(自社の意志で)労働者に退職金を支払っているのです。
◯「契約」に基づいて働く
保育士に限らず、人に雇われる場合は、雇用してくる会社と雇用契約を結びます。雇用契約に含まれる重要な約束事が「就業規則」です。就業規則はさまざまな約束事の固まりです。例えば、就業時間は何時から何時までか(逆に考えるとこの時間以外は「時間外労働」といい、割増賃金の対象となります)、就業日は何曜日か(ここで定められた曜日以外に出勤した場合は「休日出勤」の扱いとなり、割増賃金の対象となります)、業務内容は何か、給与はいくらで毎年いくら昇給するか、ボーナスは月給の何カ月分かなどが定められています。
◯退職金があるのは「退職金規程」がある会社だけ
就業規則の一つに「退職金規則」や「退職金規程」がある会社は退職金のある会社です。その一方で退職金に関する規則や規程がない会社の場合は、それはそれで問題ないのです。勤務先に退職金規程がなければ退職金0円でもなんら問題はないのです。退職する時になって「退職金がないなんて…!」と騒いでも、会社から言わせれば「だって、就業規則の中に退職金規程はないでしょう?」と一言で終わってしまいます。そしてこれは、保育園でも同様です。
◆公立保育園の場合
◯公立保育園では基本的に退職金有り!
公立保育園で保育士として働いている場合、待遇としては「地方公務員」となります。
地方公務員であっても非常勤の場合は退職金規程の適用対象外になります。
しかし、正規の地方公務員であればほとんどが退職金規程の適用対象です。
ですから正規の保育士であれば、他の職種の公務員と同様に退職金の支給対象となります。
そして公務員で退職金なしというのは聞いたことがありませんから、公立保育園に勤務する保育士の場合は、退職金はあるものと考えていいでしょう。
◯勤続年数が長くなれば、退職金も増える
基本的には、公務員としての勤続年数に応じて退職金の額が多くなります。
さまざまな計算方法で退職金を決めているようですが、基本的には「退職金=勤続年数×基本給×給付率」という計算式が適用されているところが多いようです。
例えば勤続5年で退職した時の基本給が20万円ならば、20万円×3.0×80%で48万円になります。ちなみに公務員保育士として定年退職した場合、平均退職金額は2,000万円程度になるようです。
◆私立保育園の場合
先程も書いたとおり、就業規則の中に退職金規程がなければ、何年勤務し続けていたとしても、退職金は支払われません。
私立保育園は位置づけとしては一般の民間企業と同じ位置づけです。
民間企業の中に退職金規程がない会社があるのと同様に、私立保育園の中にも退職金規程のない保育園はあります。
また、仮に退職金規程がある会社でも注意が必要です。
私立の場合半年や1年勤務しただけでは、退職金が支払われることはほぼないと思っていいでしょう。 目安として3年以上勤務し続けた場合に、退職金が支払われます。
◆就業規則の確認を!
公立保育園の求人に人気が集まるのは、勤続年数が伸びれば伸びるほど給与が上がることに加え、退職金が増えるからかもしれません。
当然のことながら、公立保育園に一旦就職が決まれば、やめたくはありませんよね。
公立保育園の保育士がなかなかやめたがらないので、公立保育園の求人は出にくいのです。
そのため保育士の求人の多くは私立保育園によるものです。
私立保育園に就職したらまずは退職金規程を含む就業規則を確認して下さい。
「こんなはずじゃなかった」ということをなくし、気持ちよく働きたいものですよね。