◆保育士が活躍できる場所=保育園だけじゃない!
保育士の資格を活かして働ける場所と言うと、真っ先に浮かぶのが保育園でしょう。
しかし、保育士が働けるのは保育園だけではありません。
今回は、何らかの障がいがある子どもたちの支援を行うための児童発達支援施設や、母子のみの家庭の子どもとその母親が入所している母子生活支援施設、何らかの事情で家庭による保育が困難な乳児が入所している乳児院の3つについて詳しく見ていきましょう。
◆児童発達支援施設について
児童発達支援とは身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいのある未就学の子どもたちを対象とした支援、またはその子どもたちが通うための施設のことで、療育を必要とする子どもと、発達に心配を抱える保護者の方に対する事業のことです。
近年、このような子どもが増加し、保護者の方からもニーズが高まっています。
施設では、日常生活の中での基本動作や知識や技術を学び、集団生活に適応できるように支援を行っています。
〇児童発達支援施設の内容
児童福祉施設の中には、「児童発達支援センター」と、その他「児童発達支援事業」に分けられており、さらに児童発達支援センターには「福祉型」と「医療型」の二つがあります。
それぞれの違いとして、簡単に言えば、児童発達支援センターでは、施設の持つ専門的な機能を活かし、地域の障がいのある子どもやその家族への相談、障がいのある子どもを受け入れている保育園などへ援助、助言を行うなど、施設に通う子どもたちのケア以外の支援も行っています。
また、医療型については上肢、下肢または体幹機能に障がいのある未就学児が対象で、児童相談所、市町村保健センター、医師などより療育が必要と認められた場合は手帳の有無を問わず利用できます。
また、その他の支援として、デイサービスを行っているところもあります。
それに対し、児童発達支援事業は施設に通う障がいのある子どもたちが日常生活における基本動作や知識技術を身につけ、集団生活に適応できるよう支援するための通所施設のことであり、施設に通う子どものケアを中心に行っています。
また、放課後デイサービスとの違いは、対象年齢によって区別されています。
放課後デイサービスが原則就学児童なのに対して、児童発達支援は、保育園などに通う年齢の未就学児を対象としています。
〇児童発達支援施設の利用方法
身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいの未就学児が対象となり、児童相談所、市町村保健センター、医師から個別療育の必要性があると認められたら、利用ができます。
また、幼稚園や保育所に在籍しているものの、併せて児童発達支援事業所において、専門的な療育、訓練を受ける必要があると認められた児童や、発達に心配を抱える保護者の相談なども受けたりする、地域支援も行っています。
申請は、利用したい場合都道府県単位の各事業所で行います。
〇子どもへの対応について
子どもたちの障がいの種類や、抱える悩みはそれぞれであり、決して他と比べるのではなく、個々の発達段階を見極め、じっくりと根気よく向き合うことが大切であり、無限の可能性をひとつでも多く見つけられるよう支援していくことが重要です。
◆母子生活支援施設について
母子生活支援施設とは、1947(昭和22)年に制定された児童福祉法に定められている施設で、子育て支援を進めながら母子の生活と自立を目指しています。
18歳未満の子どもを養育している母子家庭、または何らかの事情で離婚の届出ができないなど、母子家庭に相当する家庭の女性が、子どもと一緒に利用することができる施設になっています。
(特別な事情がある場合は例外的に入所中の子どもが満20歳になるまで利用することが可能となっています。
)さまざまな事情で入所された母親と子どもに対し、心身と生活を安定するための相談・援助を進めながら、自立を支援しています。
〇母子生活支援施設の内容
(1)母親とその子どもが一緒に生活できる住居の提供をします。
ここでの住居は、独立した部屋になっており、家事・育児を行うことができます。
母親は施設が提供する生活の場を利用しながら職場に通うことができます。
(2)自立を支援するための仕事や育児、健康、家族関係、将来の生活設計のことなどについての相談や助言をします。
上記についてのさまざまな心配ごとを相談できる職員がいるので、施設によっては、休日や、家事が一段落した夜間でも相談が可能となっています。
また必要に応じて専門機関に取り次ぐことも可能となっています。
(3)ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者の一時保護や相談をします。
〇母子生活支援施設の利用方法
住んでいる自治体が管轄する福祉事務所が窓口になっています。
福祉事務所には、母子・母子家庭の相談窓口があるので、相談内容をふまえ、適切なサービスや施設について説明を受けることが可能です。
母子生活支援施設の利用申し込みについても、これらの相談の中で進める流れとなります。
また費用については、世帯の所得(住民税や所得税などの税額)に応じた負担があり、光熱費や水道代については実費負担となります。
〇子どもへの対応について
入所している子どもは、年齢にあわせて学校や保育所に通いながら生活します。
施設では放課後や長期の休み中でも、遊びや日常生活の援助、学習指導や進路の相談などに応じています。
集団活動(子ども会活動や季節ごとの行事、文化・スポーツ活動)を提供し、子どもの健全な心身の発達を支援しています。
また、母親の突然の残業や、保育所が休みの場合などの時間外保育、軽度の疾病等で通園できない場合も、希望に応じて保育を行っています。
(認可保育所と同じような保育を行っている母子生活支援施設もあります。
)
◆乳児院について
乳児院は児童福祉法に基づき、生後間もない新生児から3歳くらいまでの乳児(孤児)を保育士・看護師・栄養士などの専門スタッフによって養育する施設です。
状況によっては就学前までの幼児を養育する場合もあります。
私生児や被虐待児、親の死亡や病気・離婚・経済的理由などのさまざまな事情により家庭での養育が困難な乳幼児が対象です。
預かる期間は一カ月未満から一年以上にわたる長期など個々の状況によって異なりますが、昼夜を問わずに24時間体制の保育が行われます。
3歳までに家庭への引渡しを行いますが、戻ることのできない場合は、特別養子縁組等で里親の元へ行くか、児童養護施設への措置変更を行います。
〇子どもへの対応について
保育士・看護師・児童指導員・医師・家庭支援専門相談員・心理療法担当職員・栄養士・調理師・事務員などが勤務しています。
入所している乳幼児はまだ体の抵抗力が弱いので、医師・看護師のもと医学的管理を中心としたスタッフ構成となっています。
保育士の仕事は、ミルクを飲ませてあげたり、沐浴をしたり、おむつの交換をして、お散歩しながら外気浴をさせたり、保護者が家庭で行っていることそのものです。
保育園と大きく違うのはお迎えがないことです。
入所している乳幼児はずっと乳児院で過ごしているため、精神的安らぎや安心・安全に生活できるよう配慮していくことが大切です。
栄養士と調理師は、乳幼児の発達段階に合わせた食事の提供を行います。
新生児にはミルク、幼児には離乳食を中心とした発育に欠かせない栄養バランスを考えた食事管理を行います。
乳児院は24時間体制で子どもたちの生活を支えます。
乳児院をお世話する保育士・看護師にはそれぞれ担当児が決まっていて、職員は交代制の勤務体制をとっています。
1日の労働時間は8時間で、乳幼児の生活リズムに合わせて、平常勤務・早番・遅番・夜勤などを組み合わせて勤務が組まれます。
〇乳児院の今後
乳児院の新設はわずかながら増加傾向にあります。
現代の複雑化した育児環境が乳児院の存在を必要としているのです。
さらに福祉制度改革の一環として、家庭における仕事と育児の両立を支援するための一時預かり事業や、地域の育児相談の拠点としての役割を担うといった、「子育て家庭の支援事業」などの新しい取り組みが行われるようになってきました。
子育て環境の変化見られてきた今、求められるのは専門知識による質の高い公的なサービスのようです。
◆保育園以外の施設で働くということ
上記で紹介したような各施設でも保育士の募集を行っています。
保育園での仕事とは異なり、さまざまな考慮すべき事由が発生する施設の業務。
困難な部分も多々ありますが、その分やりがいはあることでしょう。
自分の保育士としてのキャリアをどう活かすかを考えたときに、施設勤務という方向性もあるということを頭に入れておくと、就活の幅も広がります。
興味があるようなら、ぜひさらに掘り下げて調べてみてくださいね。