保育士の求人を見ていると、よく「ブランクあり歓迎!」の文字を見つけます。厚労省の調査によれば、出産や子育て、異業種への転職などで職を離れた「潜在保育士」の数は75万人以上(2013年調査)。他業種に比べて、いちど現場を離れた人向けの求人は多そうですが、ブランクを抱えた保育士が再就職を考えるとき、どんな不安があるでしょうか?また、その解決方法は?今回は、ブランクのある方が安心して復帰するためのポイントをお伝えしていきます。
ブランクからの復帰で不安なこと
まず、保育士として復帰するにあたって、みなさんどのようなことを不安に思っているのでしょうか?
今の保育現場、仕事内容についていけるか?
保育現場を離れていた人がまず不安に感じるのが、「そもそも、仕事についていけるのか?」という点。保育の現場は日進月歩。IT化を積極的に取り入れる園も増え、保護者の価値観も少しずつ変化しています。
いきなり現場に入るのが不安という方には、できればボランティアや研修など、肩慣らしの期間を設けられると良いですね。
体力が低下している
20代でバリバリ保育士をしていた人が、出産・子育てを経て30代~40代で復帰するとき、以前と同じような働き方ができるでしょうか?
複数の乳幼児の相手にするのは、想像以上に体力を消耗します。運動をして体力づくりをするのも良いと思いますが、無理のない範囲で働けるよう、まずは勤務日数や時間を考えてみましょう。
人間関係など、職場環境への不安
ブランク前にどれだけ素晴らしい経験を積んでいたとしても、新しい環境で働く際には、まずは「新人」として仕事を学んでいく必要があります。年下の若い保育士さんから指導を受けることもあるでしょう。
応募の書類や面接でも、まずは自分の価値観を置いて、まっさらな気持ちで仕事を覚えていく姿勢をアピールしていくことも、時には必要です。
育児など私生活と両立できるのか?
小さなお子さんがいる方や介護中の方など、仕事以外にもやるべきことがある場合は、仕事とのバランスを考えなくてはなりません。
フルタイムかパートか?緊急時はどうするか?応募する前にしっかり自分の気持ちを整理し、家族や周囲の方と相談しながら無理のない勤務形態を選びましょう。
不安に思うのは当たり前!
保育士として復帰したい気持ちがあっても、何かと不安を覚えるのは当然だと思います。
ですが今、保育士の有効求人倍率は6倍にも迫ると言われている超売り手市場です。
「ブランクあり歓迎!」と書かれた求人は山ほどありますし、潜在保育士が復帰するためのサポートとして、さまざまなプログラムがあちこちで始まっています。
こうした対策を事前に積んでおけば、ブランクがある方でも安心して復帰できますよ。具体的な方法をご紹介していきましょう。
潜在保育士向けの研修・セミナー
深刻な保育士不足を解消するため、潜在保育士に向けた研修やセミナーが、いろいろな場所で開催されています。働く側にとっても、大いに役に立つでしょう。
参考までに、全国の各自治体で行われてきたセミナーをご紹介します。
これらの情報はほんの一部です。全国各地の自治体で、同様の研修やセミナーが行われていますが、応募できる期間や定員が限られていることがほとんどなので、チャンスを逃さないよう定期的にチェックしましょう。
研修の内容は、数日間かけて講義や実習を行うもの、就職を具体的に支援してくれる就職フェアのようなものなど、自治体によってさまざまです。自分の希望に合うものを探してぜひ参加してみてくださいね。
復帰後の働き方と求人探しのポイント
ブランク有り保育士は、どんな雇用形態で復帰してる?
保育士がどのような理由で離職し、どのような勤務形態で復帰したいと望んでいるのか?
都市部に住む方を対象にした調査ではありますが、「東京都保育士実態調査」の資料から読み解いていきたいと思います。
参考:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査」2014年
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2014/04/DATA/60o4s201.pdf
保育士が離職する理由(※雇用形態問わず)
調査によれば、保育士が離職する理由は以下の通りでした。
第1位…「妊娠・出産」25.7%
第2位…「給料が安い」25.5%
第3位…「職場の人間関係」20.6%
保育士はまだまだ女性の多い職場です。妊娠・出産で現場を離れる方が多いのは、ある程度仕方ないのかもしれません。
復帰後の雇用形態の希望
「保育士として再就職するに当たって希望する条件」の質問では、勤務日数・時間や通勤時間が上位に挙げられています。
その中でも「雇用形態」は3位に上がっており「パート・非常勤採用で」と考えている人が半数を占めていました。また、パート希望の方の「配偶者・子ども有り」の割合は59.0%。子育てしていて家庭のある方は、保育士に復帰してもパート勤務でと考える傾向があるようです。
復帰後の就業時間の希望
パート・非常勤雇用として再就職を希望する保育士は、どのくらいの頻度で働きたいと考えているでしょうか?(※無回答を除いた調査結果)
週4日…38.9%
週5日…30.1%
週3日…27.2%
1日当たりの勤務時間の希望は、
5~7時間未満…40.7%
7~9時間未満…30.6%
3~5時間未満…26.9%
です。無理のない時間で働こうという姿勢が伺えます。
復帰後の勤務希望まとめ
これらの調査結果をまとめると、ブランクの有る保育士は「妊娠出産を機に離職し、パート職員として週4~5日、1日5~7時間程度」の勤務体系で働こうと考える方が多いようです。
子どもがいてもいなくても、正社員やフルタイムで復帰する方はたくさんいます。離職理由や環境は人それぞれなので、自分の環境や体力に見合った働き方を検討しましょう。
求人を探す際のポイント
「ブランク有り歓迎」を探す
ブランクありの保育士が就活をする際、まずは求人票に「ブランク有り歓迎」と書かれている所を探しましょう。
求人票にこう書いている保育所は、以前働いていたベースがあれば、早めに戦力になってくれるだろうと期待しています。同じくブランクを経て働いている同僚も見つかるかもしれません。
可能な限り情報を集める
再就職を希望する保育士が職場を選ぶ条件として、「勤務時間」は2位に挙がっていました。ブランク有り保育士の多くは、近所の保育園から職場を選ぶようです。
職場選びには、ママ友やご近所さんから評判を聞いたり、一時預かりの枠があるなら自分の子どもを預けてみるのも良いかもしれません。
ボランティアから復帰するのも有り
体力・技術面に不安のある方は、復帰前にボランティアに参加してみるのも良いかもしれません。自治体の研修だと定員があったり、参加できても数日程度のところが多いです。
保育園で直接募集しているボランティアなら、長く参加できるところもありますし、絵本の読み聞かせやイベントの手伝いなど、実際の保育士の仕事と似たような体験ができます。今の保育現場の雰囲気もよく分かりますよ。
ブランクあり保育士の就職活動
ブランクのある保育士にとっては、久しぶりとなる面接や就職活動なども一つのハードルです。これから復帰しようという保育士さんが、就職活動の際にアピールすべきポイントはなんでしょうか?
志望動機
採用担当者がブランクのある応募者に一番聞きたいのは
「なぜまた保育士として働こうと思ったのか?」です。
・「現場を離れてみて改めて保育士の魅力が分かった」
・「子育てを経験してみて保護者の気持ちが分かった。こんな保育をしてみたいなど、改めて意欲が湧いた」
など、復職したいと思ったきっかけを自分なりに具体例を挙げて書きましょう。
面接
常識が身についているか、保育士としての資質があるかはもちろんですが、ブランクのある方が特に見られているポイントは、
・「やる気があるか?」
・「ほかの職員と上手くやっていけそうか?」
という点です。経験をアピールするのも大事ですが、まずは低姿勢に、改めてイチから仕事を学んでいきたいという姿勢を伝えましょう。
お子さんがいる方は、行事や病気のとき仕事を休めるかどうかも確認しておきましょう。
まとめ ブランクがあっても大丈夫!
復帰に当たっていろいろ不安はあるかと思いますが、「子どもを大切にする」という保育の根っこは、いつの時代も変わりません。
せっかく取得した保育士の資格を眠らせておくのはもったいないですよ。
ブランクがあっても歓迎してくれる保育所は必ずあるので、焦らず思い立ったところから行動してみましょう。