発達が気になる子への対応を考えるとき、保育士を悩ませる問題の1つは保護者との関係性の築き方です。
保護者に子どもの状態を伝えようと試みたものの、子どもの課題を意識していなかったり、認めようとしていなかったり、という経験はありませんか?
まずは、保護者が「自分の子どもをどのように受け止めているか」を保育士が理解することがとても大切です。
今回は、保護者が子どもの姿をどのように受け止めているか、タイプ別に分け、掘り下げて考えたいと思います。
1.子どもの問題を意識していない場合
「自分の子どもしかみていない」か、「子どもの状態を理解する視点をもち合わせていない」などが要因で、自分の子どもの発達を客観的に捉えられない保護者がこのタイプになります。
まずは、子どもの行動に気付いてもらうため、じっくりと関係を作っていくことから始めましょう。
具体的な取り組みとしては、送迎時など、日々のコミュニケーションを大切にし、深刻な話題を話せる土台作りに励みましょう。
保護者に子どもの問題を意識するよう、仕向けるような姿勢は、保護者に伝わり、かえって身構えさせてしまうこともあります。
まずは、子どもの「良かった行動や楽しかったできごと」などを中心に、保護者と談笑できる関係性を目指しましょう。
2.子どもの問題を心配していて、保育士に相談しようか迷っている場合
子どもの問題に気づいていますが、年度はじめなど、保育士と基本的な信頼関係が築けていない状態の場合、保育士を相談する対象として考えていないケースがあります。
まずは、「この人なら相談できるかも」と思えるような、親しみをもった接し方を心がけるようにしましょう。
ときには、同僚保育者に頼んで、保護者との接し方で気づいた点を教えてもらうなど、客観的な視点で保護者との接し方を振り返ることも有効ですね。
3.子どもの問題を心配しているが、保育士に相談しようと思っていない場合
「保育士に相談をして、障がい児扱いをされると困る」など、保護者が相談することをデメリットと受け止め、保育士を「発達の専門家」と捉えられていないケースも多くあります。
保育士としては残念なことですが、まずは子どもを深く理解し、「現在の子どもの姿」と「配慮していること」をわかりやすく保護者に伝えることから始めましょう。
そして「この先生は子どもの良い面をちゃんとみてくれて、頼りがいがある」と思ってもらえるよう、子どもの良い面を繰り返し伝え、安心感を与えることが大切です。
4.子どもの問題を心配しているが、周囲には隠したい場合
1~3のタイプと違い、保育士からのアプローチは必要最低限にして、保護者が相談してくるまで待つことが鉄則です。
このケースの場合、保護者が子どもの行動を隠したい気持ちが、周囲に伝わっている可能性もあり、保護者自身が追い込まれていることも考えられます。
また、母親が子育てについて、親族関係から非難されていて、園だけでなく家庭でも孤立しているような状況も予想できます。
その他に、気になる子の保護者が、他児の保護者から「クレーム」という形で子どもの園での行動を耳にしているケースも珍しくありません。
まずは、さまざまな情報を収集し、保護者が今置かれている状況を把握しましょう。
保護者が保育士の話を受け止められると判断できるときは、「あいまいな表現」ではなく、「正確な情報」を伝えます。保育士は、保護者の唯一の理解者になるよう努めましょう。
発達が気になる子の状態を保護者に伝える際に大切なのは、「焦らないこと」です。
保護者は保育士の意図するところが見えないと、途端に不安になり、保護者に対して「私たちは困っています」と言われているのでは、と受け止めてしまいます。
園では課題に対してどのように取り組んでいるか、今後どう取り組んでいくのか、ということをきちんと整理した上で、子どもの様子や心配に感じていることを丁寧に伝えることが大切ですね。