主に共働き家庭において、子どもが保育園から小学校に進学した際に母子が直面する問題あるいは子どもを巡る環境が急変することを「小1の壁」と呼んでいます。
そしてこの壁は大きくわけて二つの壁が存在します。
第一の壁
第一の壁は「預かり時間」の差という壁です。
保育園時代は、認可や認証など自治体が運営・補助している場合、預かり時間は概ね19時前後まででした(トータルの保育時間は概ね12時間)。
それに対し、小1の場合、入学当初は正午まで、2学期以降になっても14時頃には授業が終了します。
その時間に親などが子どもを迎えられない場合は、「学童保育」に保育を委ねることになります。
しかし、学童保育の預かり時間は自治体によって異なるものの17時から18時までとなっています(遅くまで預かってくれる民間の学童保育はあるものの普及していない)。
もちろん、親などが短時間勤務などを活用して17時から18時に迎えに行ければ問題はありませんが、短時間勤務そのものがまだ普及途上にあることに加え、短時間勤務が認められる「育児期間」は「小学校入学前」までとされていることが多いのが現状です。
そのため、小学校進学と同時に短時間勤務が認められなくなる企業も多くあります。
よって子どもの帰宅時間が早くなるのに、親の帰宅時間が変わらない(もしくは遅くなる)ことによって発生する問題が「第一の壁」です。
第二の壁
第二の壁は「保護者の負担の急増」という壁です。この負担の増加は三つの側面から説明できます。
第一に、毎日の通学前の準備作業です。
保育園の頃はオムツや着替えの準備ぐらいだったのが、小学校に入ると、教科書・文房具・体操着・補助教材・宿題など持ち物が増え、親のサポートが求められます。
第二に、宿題の管理です。小学校に入ると保育園には無い「宿題」が出るようになります。
小学一年生の段階では自己管理が難しいので、保護者が学習面のフォローをすることが必要です。
学童保育で宿題を済ませさせることも可能ですが、全てを委ねることは困難です。
第三に、保護者のタスクの増加です。
保護者にはPTA役員の会合や保護者会などのタスクが課されます。
保育園時代は土曜日に実施されることが多かったタスクが、小学校に入ると平日に課されるようになり、また、個人面談、町内パトロール、授業補助、行事の写真の申し込みなど、タスク自体が急増します。
親の帰宅時間が変わらない(もしくは遅くなる)のに、子どもが寝るまでの間にこなさなければいけないタスクが増えるという問題が「第二の壁」です。
壁が発生する理由
かつての子どもたちは放課後に、父母の一方もしくは祖父母のいる家庭や地域社会において育児されてきました。
家事や自然体験などを通し、基本的な生活習慣、生活能力、他人に対する思いやりや善意の判断、自立心や自制心、社会的なマナーなどを身につけてきました。
しかし、核家庭化の進展、共働き世帯の増加に伴い、家庭や地域社会の放課後の育児機能は失われつつあります。
そのため、全ての負担が保護者に集中してしまうことにより、「小一の壁」という問題が顕在化しています。