「保育士の年収が低い」って、どこかで聞いたことはありませんか?
でも、保育士の年収って、本当に低いのでしょうか。
また、低いとしたら、どのくらいなのでしょうか。
今回は、さまざまな統計を元に、保育士の年収について検証してみたいと思います。
■保育士の初任給はいくらくらい?
保育士の多くが働く保育園には、市町村立などの公立と、そうではない私立とがあります。
公立の正職員になると、地方公務員という扱いになるので、一般的な地方公務員と同じくらいの給与が支払われます。
また、各種手当も、公務員並になるので、私立よりも安定しているといえます。
実は、私立でも、公立の場合と同じくらいの給与が支払われる場合が多いようです。
ただし、公立の場合と違って基準がしっかりと定められているわけではないので、施設によってばらつきがあることも事実です。
さて、気になる初任給ですが、地域や経験年数などによっても違いはあるものの、一般的には16万〜17万円程度が多いそうです。
実際には、年金や保険料が天引きされるので、手元に残るのは13万〜15万くらいになります。
社会保険料を自分で払う場合も、同じくらいの額になります。
しかし、私立の中には手取りの初任給が10万円程度になってしまう保育園もあります。
勤務先を選ぶ際には、待遇をよく確認しておく必要があります。
■保育士って、昇給するの?
保育士の年収は、年を追うごとに、上がっていくのでしょうか。
公立の保育園の場合は、初任給と同じく、地方公務員の扱いになるので、勤続年数が長くなるごとに、年収は上がっていきます。
一方、私立の場合、昇給はあまり期待できないことが多いようです。
こうして比べると、公立の方が離職率が低いのもうなずけます。
また、地域によっては、福祉関係の仕事の給料を高めに設定しているところもあるようです。たとえば、神奈川県の場合、保育園の給料も高めに設定されており、中には基本給が20万円という羨ましい保育園もあるそうです。
■保育士の年収の実態
平成27年に厚生労働省が行った賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は35歳で323万円ほどだそうです。
月給にすると、22万円ほど。
また、年齢別の保育士の年収を見てみると、こんな感じです。
女性の場合、20代が最も低く、338万円。
年収のピークを迎えるのは40代の429万円と、
それほど大幅な年収アップは見込めないようです。
ところで、実は、意外にも保育士は、男性よりも女性の方が年収が高い傾向にあります。
全年齢の平均で見ると一目瞭然、年収で50万円以上の差があります。
保育士社会が女性社会なのが、よくわかります。
■保育士の年収はなぜ上がらないの?
待機児童の問題がたびたびニュースで取り上げられるように、保育士の需要は年々高まっています。
一方、保育に当たる保育士は国家資格。学校に通って単位を取るか、合格率1割の国家試験を通過しなければなりません。
現状、保育業界では、需要が供給を大幅に上回っていると言えます。
ふつうなら需要が高まれば高まるほど、年収は上がっていくはずです。
それなのに、どうして保育士の年収はなかなか上がらないのでしょうか。
その理由は、保育所の収入源にあります。
認可保育所の場合、収入源のほとんどは「保育料」と「公的な補助金」です。
この2つの収入源は、保育所の自由がきかないため、なかなか保育士の年収アップにつながらないのです。
■自由度の低い保育所の収入源
先ほど書いたように、認可保育所の収入は、主に保育料と公的な補助金によってまかなわれています。
保護者が毎月支払う保育料は、親の所得や、子どもの年齢によって公的に定められているものです。
ですから、保育所が勝手に上げることはできません。
一方、公的な補助金は、保育所が施設や人的体制を整えることで受け取れるものです。
この額は、運営形態や園の規模によって細かく決められています。
このように、保育所の収入源は、ほとんどが独自に決められない、固定されたものです。
保育所が独自の取り組みを行って保育料を勝手に上げる、というようなことはできないのです。
そのため、競争原理が働かず、保育士の年収がなかなか上がらない、と考えられます。
最近は、国もこの問題を認め、保育士の年収が増えるようにあの手この手を打っているところです。今後の年収の底上げに期待しましょう。
■まとめ
ここまで、保育士の初任給と年収について見ていきました。
保育士の年収は、公立か私立かによって異なり、
公立の方が安定した昇給が見込めることが分かりました。
また、保育業界全体としてみると、保育士の年収は年齢が上がっても、そこまで大幅には上がらないことが分かりました。
勤務先を決める際には、こうした年収の動向についても見ていく必要がありそうです。