知っているようで知らない保育士の世界
保育士不足や待機児童問題が騒がれる現状においても、「子どもの成長の手助けをしたい」「保育士として世の中の役に立ちたい」と希望する人はたくさんいます。しかし、保育士として働くとはどういうことか、なぜ保育を辞めてしまう人が多いのか、
実は保育士をサポートする支援策があること、などが十分に理解されているとは言い難いのが現状です。
今回は保育士として働くことについて考えてみたいと思います。
保育士として働くということ
◯資格がなくても働ける
まず、あなたは資格を持っていますか?
資格や免許を持ってるかいないかで、働く条件はかなり変わってきます。具体的には、
・保育士資格
・幼稚園教諭免許
・両資格保有
・資格なし
・その他(看護師、調理師免許等)
という方がいらっしゃいます。
一般的には、保育士資格を保有していれば保育士として働けますし、幼稚園で働きたいなら幼稚園教諭免許を持っている必要があります。園によっては、両資格を保有していることが条件となる場合もありますので、注意が必要です。
また、資格がなくても補助として働ける場合もありますが、その場合は正社員は難しく、お仕事も限られてきます。
そのほか、病院内での保育所勤務の場合は看護師さんでもOKだったり、給食等を作る調理師の方の募集もあります。
保育園でのお仕事は、何も保育士だけとは限らないんです!
◯多様な勤務形態
保育園での働き方は千差万別です。
・正社員
・パート、アルバイト
・契約社員、時短正社員
・派遣
このように、働き方も選べます。ほとんどの保育園、幼稚園は正社員は資格保有者のみ。学歴によって、初任給が変わってくる園もあります。パートさんも、資格を保有しているか否かでお給料が変わってくることも。
子育て中で、でも保育士として働きたい!という方にうれしいのが、契約社員、時短正社員。子育て中も働く時間を制限できますし、賞与も出るのがうれしい!というお声を聴きます。
派遣社員になるとまた毛色が違い、直接雇用ではなく、派遣会社の仲介が入ることになります。
園の選定も会社にお任せできますし、不安があれば園に直接ではなく、派遣会社を通して伝えられるので、気が楽ではあるのですが、お仕事の環境によっては、「派遣だから」と思うようにお仕事ができない場合も。
どういった環境で、どのくらいお仕事されたいかを考え、自分に合った勤務形態を選ぶのがベストですね。
◯働く場所!
お仕事されるうえで一番大切なのが、働く場所です。まずは、どういった形態の施設があるのか、ご紹介していきます。
・幼稚園
・保育園(認可保育園、認可外保育園)
・こども園
・学童
・家庭的保育室
・院内保育所等の保育施設
ざっと分類しましたが、これでも一部。詳しくは、保育士バンクの「いろんな働き方」でぜひご確認ください。
保育士の勤務時間
◯原則
保育園は早い園で朝7時から夜は18時くらいまでの間子どもを預かっているところが多いようです。認可保育園だと朝8時から開園の場合が多く、延長保育も含めると、大体11時間程度の開園時間が一般的のようです。
実働時間は8時間、休憩時間は1時間とすると、
・早番:7時〜4時まで
・中番:8〜9時の間〜5、6時まで
・遅番:9〜10時〜子どもが帰るまで
上記が主な勤務時間となります。
◯延長保育、早朝保育、夜間保育
閉園時間に遅れても子どもを預かってくれるのが延長保育のある園です。
開園前に子どもを迎え入れてくれるのが早朝保育、夜間保育は主に深夜帯で保育を行う園で、最近では24時間保育を行っている園も増えています。延長保育を取り入れている保育園では、大体2時間程度子どもを長く預かってくれるところが多く、18時閉園の場合は20時まで預かってくれるようです。
◯残業時間、持ち帰り業務
保育士の方にお話しをうかがうと、「残業がつらい」ですとか、「持ち帰り業務でプライベートがない」といった声を聞きます。
多くの保育士さんは、こういった時間外の業務により私生活を削られ、リフレッシュのできないまま仕事に追われていることを当然だから仕方ないと思っていらっしゃるようです。
園長さんや上の方に相談しても、ご自分たちもそうやって仕事をしてきたからと一蹴されてしまう・・・
そんな慣習が、現在変わりつつあります。「サービス残業なし」「持ち帰り業務禁止」こういった理念を掲げる園が増えているんです。
保育士の仕事は、ただでさえ体力勝負。家ではゆっくりお休みしたいですよね。転職を考えられている方は、労働時間や残業時間の改善をひとつの条件にしてもいいかもしれません。
離職率が高い保育士
保育のお仕事は、たくさんの可愛い子どもたちと関われるだけではなく、体力勝負な面もあり大変なことも多いでしょう。単に「子どもが好き!」という気持ちだけでは、正直やっていけない・・・というのも正直なところ。
他の保育士さんは一体、どんな時に辞めたいと感じているのでしょうか。
◯人間関係
この問題は保育士に関わらず、どんな職場でも出てくる悩みですよね。
モンスターペアレントという言葉があるように、保護者の対応には気を遣う保育士さんも多いかもしれません。
また、経験値がバラバラな保育士さんが集まる園では、保育の方針や考え方も人それぞれに違うでしょう。お互いが歩み寄って協力していける環境がベストですが、考え方が違うと難しいですよね。
◯仕事がハード
保育士さんは子どもたちと身近に関わるので、憧れる職業ですよね。ですが実際は、一人で何十人もの子どもたちの面倒を見たり、毎日保護者への連絡帳を書いたり、行事が近づくと事務作業も増え、残業や持ち帰りの仕事をしている人も多いのではないでしょうか。
また、人様の子ども=命を預かる仕事なのでその責任の重さに耐えられず辞めてしまう保育士さんがいるのも現実です。
◯給料が安い
厚生労働省の統計調査によると、保育士の平均年収は315万円。専門職なのに低賃金なことに不満を感じている保育士さんも多いはず・・。待機児童問題に加え、保育士不足を加速させている要因のひとつではないでしょうか。
東京都の舛添前都知事が、「保育士不足の解消にむけ、補助金による賃金の引上げを検討する」と公約していましたが、2015年から始まる新制度では給与の引上げ幅を5%から3%へ圧縮を検討していると政府は発表しています。財政不足が原因なようですが、給与が上がるのにはまだ時間がかかるのでしょうか・・・
◯園の保育方針が合わない
子どもの数だけ個性があるように、園にもそれぞれ保育方針があります。食育に力を入れている園や、体を動かすことに重きをおいている園、英語教育を行う園などさまざまです。
自分にはどのような園が合うのか、入社したのちに何をやりたいのか、迷ってしまうかもしれませんが、きちんと自分の考えと園の方針を理解しなければミスマッチが生じてしまい、せっかく頑張って就職しても仕事を続けることが難しくなってしまうかもしれません。
保育環境に対する支援策
政府が産業競争力会議で提示した新成長戦略が話題になっています。この戦略には、企業の競争力をアップさせる対策だけではなく、働く女性のための案件もふんだんに盛り込まれています。新成長戦略では「子育ての・保育」についてはどんな戦略が示されているのでしょうか。
◯女性に活躍の場を!!放課後児童クラブの定員増加
出産によって一度職場を離れると、復帰は難しいもの。子育てをしながらの仕事は、想像をするよりはるかに難しいものです。
ですが、少しでも「働きたい」と思う女性の思いを尊重したいという考えから生まれたのがこの、放課後児童クラブ、つまりは学童保育の定員増加です。平成31年度、5年後には30万人分の増加を目指し、共働き世帯の増加に伴う、就学児童の預け先がないという問題の改善をしようという動きです。
◯保育士不足解消!?保育士確保プラン・子育て支援員(仮)
上記のような学童クラブの人員増加と、保育士不足のために、提案されたのが、「保育士確保プラン」内の「子育て支援員」です。
子育て経験のある主婦を対象としたこの計画ですが、反発が大きいのも事実。子育て経験があるとは言っても、自分のこどもと他人のこどもは違うもの。自分の子以外の保育をするというのは、想像のつかない世界ではないでしょうか。
また、共に働く側も、資格を持つ保育士に負担が偏ることは明白です。
・専門性のある保育士への負担の増加。
・それに伴った、監督者の目の届かない範囲での事故の増加の懸念。
・賃金水準の低下
このような問題点がある中で、安易な人員増加職場環境が改善されるとしても、あくまで一時的なものに過ぎず、根本的な賃金・制度の見直しを図らなければ、大きな一歩とは言い難い状況にあるといえます。
政府の支援策に今後も期待
「子育て支援員(仮)」によって人員増加が見込めることは確実ですが、しっかりとした研修制度と間違いのない人選をお願いしたいものです。同時に、潜在保育士にとって魅力的な制度を作り、保育の場が、理想的な職場であるように、改善されていくことを願っています。