保育所保育指針・幼稚園教育要領の改訂により示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」。今回は、その10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちにつなげるポイントをまとめました。子どもたちが身近な自然や動植物と関わりながら成長していくために、保育士さんは何をすべきでしょうか。
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■目次
10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは
厚生労働省「保育所保育指針解説」の資料によると、「言葉による伝え合い」とは以下のように示されています。
自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。
また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わるようになる。
出典:保育所保育指針解説p92/厚生労働省より抜粋
戸外遊びの中で季節の自然に触れる機会はたくさんあるでしょう。
遊びの中で自然物の面白さに気づくだけでなく、自然とどのように関わっていくかまで考えられるといいかもしれませんね。
保育の中で「自然との関わり・生命尊重」が子どもの姿にあらわれる事例
10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」を育む実践事例をもとに、子どもの育ちや保育士さんの援助のあり方を考えてみましょう。
0歳児~1歳児
<活動内容:保育室の中で出会う自然>
自然物は植物や動物だけではありません。
0歳児クラスでは、保育園の中で感じることができる自然を大切にし、子どもたちに伝えています。
乳児期の子どもたちにとっては、身の回りのあらゆる自然が新鮮な刺激かもしれません。
保育士さんが子どもと同じ目線に立ち、わかりやすい言葉で自然のよさを伝えていくことで、子どもたちも興味を持って楽しむことができそうです。
2歳児~3歳児
<活動内容:冬の日の戸外遊び>
ある寒い冬の朝の戸外遊び、水たまりが凍っているのを発見した3歳児の子どもたち。
身近な自然が持つ美しさや不思議さに触れることが、自然の変化に関心をもつきっかけとなるでしょう。
保育士さんはその季節ならではの体験を取り入れながら、子どもたちの興味に寄り添っていけるとよいですね。
4歳児~5歳児
<活動内容:生き物とのふれ合い、飼育>
5歳児クラスが散歩に出かけた時、田んぼでカエルの卵を見つけました。
初めてカエルの卵を見た子は「ちょっと怖い」と言っておそるおそる眺めていましたが、家でお兄ちゃんがカエルを飼育していたというC君は「カエルの卵だ!おたまじゃくしが生まれるんだよ。 虫かごに入れて保育園で飼いたい」と興味津々。
これは身近な生き物を発見し、飼育し、命との関わり方を考えることができた実践事例です。
生命の尊重について、言葉やお話で伝えていくことは難しいかもしれません。
保育士さんは、子どもが感じている生き物への愛着や親しみといった心の動きを汲み取り、見守りながら支えていくことが大切となりそうです。
0歳児~5歳児
<活動内容:季節の自然散歩>
3月の末、例年よりも少し早く桜が咲きました。
主任保育士のI先生は通勤途中に通る桜並木を子どもたちにも見せたいと思い、ミーティングの時に園長やクラス担任の保育士さんたちに相談しました。
自然に触れることができる場所は、大抵の場合は保育園の外にあるでしょう。
地域ならではの自然や動物に会える場所などを日常的に探し、どうしたら保育の中に取り入れることができるか考えていきたいですね。
10の姿「自然との関わり・生命尊重」の観点を意識するときのポイント
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10の姿「自然との関わり・生命尊重」の観点から、保育をするうえで意識したいポイントをまとめました。
さまざまな自然にふれる機会を作る
戸外や園の外にある自然を保育士さんが見つけ、子どもの気づきを促せるとよいですね。
保育士さん自身が自然の美しさや不思議さを感じ取り、豊かな表現で伝えていくことで子どもたちの情緒を育んでいけそうです。
その季節ならではの自然を見つけ、保育に取り入れていきましょう。
感じたことや考えたことを伝え合えるよう促す
子どもたちは実際に自然にふれ合ううちに、「ざらざらしてる」「冷たい」「なんか気持ち悪い」などさまざまなことを感じ取っているのではないでしょうか。
保育士さんは子どものつぶやきや率直な言葉を受け止めつつ、他の子どもと感想を分かち合えるように関係を仲立ちしていくとよさそうです。
命を大切にできるよう働きかけていく
絵本のお話などから命の大切さを実感することは、なかなか難しいかもしれません。
子ども自身が生き物とふれ合って命の温かみや愛着を感じるうちに、大切に思う気持ちが自然と芽生えてくるのではないでしょうか。
時には生き物との関わり方を間違えてしまうこともあるかもしれませんが、子どもの心の動きに寄り添っていっしょに考えていくことが、命をいたわる姿勢につながっていくでしょう。
自然を大切にする心が、「自然との関わり・生命尊重」につながる
今回は、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちを見つけるポイントをまとめました。
身の回りの自然に触れ、美しさを感じたり、興味を持って調べたりする気持ちは、自然を守り大切にする姿勢の土台となります。
大人が「自然保護は大切なことですよ」と伝えるだけでは、その気持ちは育ちません。
手で触れ、目で見て、友達と一緒に豊かな経験をする中で、初めて「この自然(命)を大切にすべきだ」と学んでいくのです。
乳児期にそよ風の心地よさを伝えることは、生命を尊重する姿勢の第一歩めでもあるのです。
実践事例を参考に、10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは何かについて理解を深め、保育に活かしていきましょう。
改定保育所保育指針 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿
新・保育所保育指針の重要ポイント!「10の姿」について、それぞれの視点とエピソードを解説します。