保護者は常にわが子のことを考え、普段の子育てについて、誰かに話したいことや相談したいことがたくさんあるものです。
保育士が保護者の良き話し相手、相談相手になってくれると、保護者は心を開き、互いに良い関係が持てるようになります。
また、トラブルにならないよう、普段から保護者とのコミュニケーションを取っていくことは大切となります。
今回は保護者とのトラブルを防ぐために、気を付けたいことをご紹介していきます。
◆保護者が喜んで答えられる質問をしよう
◯質問をしよう
保護者は自分が先生の役にたつことができるのを嬉しく思ってくれるものです。
そのため、保護者が喜んで答えてくれるような質問を多くするといいですね。
「そのバッグ、素敵ですね!どこで買われたのですか?」「最近、歯が痛いのですが、近くでいい歯医者さんはご存じですか」」など、
「先生、それはね・・・」とそのあと笑顔で話が続くような質問をしてみましょう。
◯役にたてるのは嬉しいもの
人は自分が相手の役にたったと思うと、自尊心がくすぐられて誇らしく感じるものです。
ましてやその相手が自分の子どもの先生であると、先生に教えてあげられることができた、自分は先生の役にたてた、と思うだけでも保護者にとってはちょっとした優越感を持つことができて、嬉しい気持ちになるものなのです。
街を歩いていて、人から道を尋ねられてうまく教えてあげることができると、何となく嬉しい気持ちになりますよね。
そんな気持ちに似ているのです。
人の役にたった、と思うだけで人は気分が良くなりますし、さらにその人からお礼まで言われたりすると、質問をしてくれた人に対して、いい感情を持つようになるものなのです。
◯笑顔で答えられる質問をしよう
それではどんな質問がいいのでしょうか。
その保護者しか答えることができないような質問をさりげなく会話に挟み込みましょう。
質問の内容は何でもいいのです。
「お肌がいつもつやつやですよね!どんな化粧品を使われているのですか?」、「髪型がいつも素敵ですね、どこの美容院に行かれているのですか?」、「○○ちゃんは好き嫌いがないですよね、どうしたら何でも良く食べる子に育てられるのですか?」など。
こんな風に、感心しているからこそ聞いている、という質問がベストでしょう。
または、「このあたりで○○のお店はありますか?」、「○○までの近道はご存じですか?」など、保護者の住んでいる地域に関する情報を聞くのもいいでしょう。
いずれも保護者は得意げに答えてくれるはずですよ。
保護者には少し優越感をくすぐるような質問をたくさんしてみると関係性も良くなります。
質問に答えられて先生の役にたったと思うと保護者の気分もいいのです。
保護者が笑顔で答えられるような質問を日常的に会話に取り入れるようにしてみましょう。
◆一人ひとりと話をしよう
◯保護者と仲良くなりたい
保育士は誰でも、保護者と早く仲良くなりたいと思いますよね。
そのために、その日1日の保育の様子やクラスでのできごとを毎日きちんとノートに書いたり、クラス便りを毎日発行したり。
そのように、さまざまな方法で、保護者のみなさんに親しみを持ってもらおうとしていると思います。
ですが、なぜかイマイチ効果がなく、いつまでもよそよそしかったり、なかなか仲良くなれなかったりすることもあるようです。
いったいなぜでしょうか?
◯保護者一人ひとりに心が向いていないかも
どうして、保護者の方となかなか打ち解けられないのでしょうか。
「保護者」というものを、ひとかたまりで見ていて、常に「保護者のみなさん」という感覚でお付き合いをしているために、そうなってしまっているかもしれません。
たとえば、20人の保護者がいたとすると、いつも「1対20」という関係で見てしまい、保護者一人ひとりとは、誰とも良い関係を作っていなかったということです。
クラスの懇親会などでも、保護者全員と仲良くなるチャンスと、必死で「保護者みなさん」とお話ししようとしているかもしれません。
でも、結果、誰とも仲良くなれていなかったりするのです。
◯相手が同僚やクラスの子どもたちでも同じこと
「みなさん、おはようございます」「みんなー、聞いてちょうだい」など、いつも大勢に向かってまとめて話をする感じでいると、結局は誰とも仲良くなれていないものなのです。
ひと言ずつでもいいので、一人ひとりと話をしましょう
相手が20人いたとすると、「1対20」の関係を「ひとつ」作るのではなくて、「1対1」の関係を「20個」作ろうと思えばいいのです。
毎日「保護者のみなさん」に向かって、話をするだけでは、一か月たっても誰とも仲良くなれませんが、一人ひとりの保護者と毎日30秒ずつでもいいので話をするだけで、3日で全員と仲良くなってしまうものです。
たとえば「みなさん、おはようございます」とまとめて話かけるのではなく、
「○○さん、おはようございます!」「先日はいかがでしたか?」などと、ひと言ずつでも、一人ひとりと話をしてみましょう。
保護者は「みんな」の中のひとりではなく、保育士と1対1の人間関係を持ちたがっているものです。
一人ひとりに話しかけながら、1対1の関係を作ると、あっと言う間に全員と仲良くなれるものですよ。
◆こちらから話しかけよう
◯保護者とのコミュニケーションが取れていますか?
「最近、保護者との会話が不足している」「保護者と話が弾まない」、そんな風に感じたことはないでしょうか。
その原因は、保護者側ではなく、保育士側にあることが多いものです。
保護者は保育士と話をしたくないわけではなく、話しかけられるのを待っています。
保育士の方から親しげに話しかければ、保護者は話をするスタンバイはいつもOKなものです。
◯人は自分から話しかけにくいもの
街中で、他人に道を聞いたことはありますか?大概はみんな親切に答えてくれるものですよね。
バスや電車で隣の席の人から話しかけられて、それをきっかけに話が弾んだ、なんて経験もある方もいるのではないでしょうか。
特に日本人は性格的にシャイな人が多いので、なかなか自分から話しかけようとしないですよね。
ですが、話しかけられさえすれば、笑顔で答える準備はみんなできています。
保護者もそれと同じで、自分から話しかけるのは苦手でも、保育士の方から話しかけてもらえれば、いつでも話をする準備はできています。
いえ、むしろ話がしたいのです。
話をしない人同士は、気持ちもだんだんはなれていってしまうものです。
◯こちらから話しかけよう!
保護者と仲良くなりたいのであれば、とにかく自分から話をすることが大事です。
挨拶だけ、なんてダメですよ。
子どもたちの送り迎えのときや、通園バスの停留所、保護者参加の行事など、保護者と会うタイミングでこちらから積極的に話しかけてみましょう。
たとえば、「今日は寒いですね!お母さん、薄着で大丈夫ですか?」なんて、何でもいいのです。
それをきっかけに、そのあと必ず会話が始まるはずです。
人は自分の親しく会話してくれる人を好きになるものなのです。
保護者はみんな、保育士から話しかけられるのを待っています。
みんな保育士との楽しく会話したがっているものです。
こちらから積極的に話しかけさえすれば、どんな保護者ともすぐに仲良くなれるはずです。
こちらから話しかけてみましょう!
◆保護者が何か話しかけてきたときは
◯先生に聞いて欲しい
子育てについて、たくさん話したいことはあるけれど、他の保護者では分かってもらえないという話も多々あります。
一番分かってくれそうなのが、担任の先生なのです。
ある意味、わが子のすべてを見て知っているので、共感してもらえやすいからです。
担任の先生が育児・家庭のこと、その他何でも聞いてくれる人であったならば、保護者はとても心強く感じ、強い信頼感を持ってくれるでしょう。
では、どうしてそうなるのでしょう。
人は自分の話を聞いてくれる人を「何でも分かってくれるいい人」と思う傾向があります。
あるお医者さんは、いつも患者の話を最後までじっくりと聞くだけで「名医」と呼ばれていたそうです。
保護者はわが子や子育ての話を聞いてもらいたいので、そんな話ができ、相談できる人を探しています。
それが、わが子のことを良く知っている先生ならば、申し分ないのです。
話を聞いてあげるだけで、「良く分かってくれる先生」という評価になり、先程の「名医」と同じことが起こるのです。
「先生、聞いてくださいよ。
昨日ね・・」などと保護者が言って来るようになれば、いい関係が築けている証拠ですよ。
◯話が続くようにもっていこう
では、そうなるには具体的にどうすればいいのでしょう。
保護者の方から少しでも話しかけてきたら、「そうですか」で終わるのではなく、「それでどうしたのですか」などと、その話に興味を持ち、話の続きを引き出していきましょう。
保護者は「先生は自分の話に関心を持ってくれている。
嬉しいわ。
じゃあ、もっと話そう」となるのです。
一旦、「自分の話をきちんと聞いてくれる人」という印象を持つと、人はその人に心を開き、何でも話すようになるものです。
そして、話が弾むようになり、好感さえ持ち、自然に「いい人」という印象を持つようになります。
◆気楽に話してもらえる間柄になろう
いかがでしたか?
何も用事がないときでも話題を作り、保護者に話しかけ、何でも気軽に話してもらえるような間柄になっておくと、保護者との関係がうまくいきます。
良き相談相手、話し相手になり、自然に好感を持ってもらうことでトラブルが起こりにくくなります。
新人保育士にとって保護者に話しかけることは緊張してしまいますが、「今日は寒いですね」というような簡単な話題から少しずつコミュニケーションを取っていくことを心がけましょう。