保育士として勤務していると、保護者に対して「本当はこんなこと言いたくないのだけれど、言わなくては…」といった状況に置かれる場面が来ることもありますよね。
例えば、子どもがふざけて園の花瓶を割ってしまったり、けんかをしてお友達にケガをさせてしまったり、写真代が数十円足りていなかったりなどさまざまにあると思います。
このような話をする時は、顔を合わせたタイミングでいきなり切り出してしまうと、保護者は顔色を変えて次々に反論したり、逆に保育士を質問攻めにしたり、かえってこちらが気分を害するような反応が返ってきてしまうこともあるかもしれません。
では、保護者に対して「言いにくいこと」を伝える時はどうしたらいいのでしょうか。
言いにくいことを言う時は…
〇人は悪い話は、いきなり聞きたくないもの
人は、驚く話や、悲しくなる話、腹が立つ話など自分のマイナス感情を引き起こすことを突然言われると、その感情を受け入れる準備ができていないことから、激しく動揺してしまうものです。
いきなり悪いニュースを聞くと、素直に「そうですか」とは受け入れられないものなのです。
心理学的に言うと、自我防衛機能が働いて、素直に認めまいとする気持ちが沸いてきて、言われたことに対して否定しようとするのです。
保護者としてみたら、機嫌良く園に来たのに、何の前触れもなくいきなり嫌な話や驚く話を聞かされると、動揺の方が先に来てしまい、素直な反応が非常に出にくく、そんなつもりはなかったのに反論したり、逆に質問攻めに遭わせてしまうこともあるのです。
〇思い出したように言ってみる
保護者に言いにくい話、気分が悪いだろうなという話をしないといけない時には、その話をいきなり切り出さないようにして、まずはお互いに笑顔になるような話をしてみましょう。
例えば、「○○ちゃんって本当に○○が好きなんですね~。びっくりするほど△△していましたよ!」など、何でもいいのできっかけを作りましょう。
保護者が、それに対して「そうなんですよ、いつもうちでも~…」などと笑顔になるような話を最初にしましょう。
そして、その話の後、思いついたように「あ、そうそう、実はですね…」と「本件」を伝えましょう。
人は、笑顔になっている時は気分が良く、心もおおらかになっているものです。
保育士からの話も素直に聞ける状態になっていますので、いきなり切り出した時とは全然違う反応が返ってくるはずですよ。
いきなり悪いニュースを聞かされると、誰でも混乱してしまうものです。
言いにくい話を保護者に伝えなくてはいけない時は、ワンクッションおいて笑顔になってもらってから聞かせましょう。
では次に、保護者とのトラブルを防ぐために日頃から保育士がおこなって欲しいことを挙げてみます。
積極的に褒めよう
新学期が始まり、これから保護者と話す機会も増えてくることでしょう。
では、どのようにしたら保護者とうまく話せるようになるのでしょうか。
〇まずは褒めてみよう
保護者会や個人面談、その他イベント事など、保護者と話す機会はこれからたくさんあります。
そんな時、まずは保護者を褒める言葉から話してみましょう。
そうすれば、保護者は自然と笑顔になり、保護者側からいろいろと話し始め、会話も弾むようになります。
「今日は先生にひとこと言っておこう」と思っていても、「やっぱり今日はやめておこうかしら」などと苦情を遠ざけることさえあるのです。
では、どうしてそうなるのでしょう。
人は誰でも、自分を褒めてくれる人には好感を抱くものです。
そして、好感を持った相手には少々の不満点があったとしても目をつぶるようになります。
目をつぶるというよりは、不満点が気にならなくなっていくのです。
自分を褒めてくれる人に対しては、不満点よりも満足点を探すようになります。
毎日、少しずつでもそういったやりとりをしていると、自然と「いい関係」が築け、笑顔でたくさん話し合えるようになるでしょう。
〇何気ないことを褒めよう
まずは、保護者それぞれの褒めるところを探してみましょう。
褒め言葉は「すごい」「きれい」「えらい」「じょうず」だけではありません。
日常のこと、当たり前のことでもいいのです。
元気良く挨拶されたら、「お母さん、いつも元気で明るい声ですね!」とか、提出物を持ってきたら、「いつも早く出してくださり、助かります!」などと声かけしましょう。
本人は別に褒められたくてしているわけではないことを、あえて褒めるのです。
言われた側は、「え、普段通りなのに」と意外に思い、いつも通りが評価されたことをしみじみ喜べるのです。
本当に感じたことを言っているのですから、決して「お世辞」を言っているとは思われませんよ。
保護者に対して、感心するところやいいなと思うところは、口に出してどんどん褒めてあげましょう。
すぐにうまくいかなくても、見つけて褒めてを繰り返していけば、必ず褒め上手になれます。
褒め上手になれば、自然と保護者ともうまくいくことでしょう。
保護者は、我が子の様子が分からないと不安
子どもを保育園に預ける保護者は、園で我が子がどんな風に過ごしているのか、とても気になっているものです。
そのため、お迎え時や、保護者の参加行事などで先生に会ったら、少しでも我が子のことについて何か話して欲しいと思っているでしょう。
そんな時に、保育士が子どもについて何も教えてくれないと正直がっかりしてしまいます。
また、そういったことが続くと、保育士や園に対しての不信感にも繋がってしまいます。
〇保護者は園での子どもの様子が知りたいもの
3歳未満の小さな子どもはもちろんのこと、4歳や5歳の子どもであっても、園であったことや、今日のできごとなどを家に帰って保護者にあまり話さない子もいます。
別に話したくないのではなく、特別、話しておきたいとも思わないのでしょう。
「聞いて、聞いて!」とお話しが好きな子どもなら問題ないのですが、逆に保護者、特に母親は、我が子が今日1日どう過ごしていたのかが大変気になるものなのです。
でも、子どもは話してくれないとなると、我が子の様子を聞くことができるのは、園の先生だけということになりますよね。
また、客観的な様子を知りたいというのは保護者の気持ちとして当然のことです。
園の先生は、子どもの様子を伝えてくれてしかるべき、と思っている保護者もいるようです。
〇じゃあどうすれば? ~些細なことを伝える~
「昨日は食べきれなかったのに、今日はお昼ごはんを残さず食べましたよ。」「おかずをおかわりしていましたよ。」「お友達におもちゃを貸してあげていました。やさしいですね。」「鉄棒で前まわりができましたよ。」…こんな些細なことでもいいのです。
その日あったこと、または最近の子どもの様子を何か伝えてあげるだけで、保護者は安心するものです。
子どもについて、特に感心したこと、かわいかったこと、ほほえましかったことなどを伝えてあげると、それだけで保護者は「先生はいつもうちの子をよく見てくれている」と、先生に対して信頼感を募らせていくでしょう。
日頃から保護者とのコミュニケーションを大切にしましょう
大事なのは、コミュニケーションをとろうという気持ちです。
保護者と出会う機会ごとに、その子どもの園での様子を何か一つでもいいので必ず伝える、そのくらいの心づもりでいましょう。
普段から、子どもの話を通じて、保護者とコミュニケーションを取っておくことも大切ですね。