保育士さんのイメージといえば女性を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?実際に男性保育士の数はデータから見ても少ない一方で、男性保育士がいることは園にとって大きなメリットになります。
このコラムでは男性保育士さんの実態をデータを用いて表すとともに、男性保育士さんを取り巻く保育の現状をご紹介したいと思います。
「男性保育士」とは?
「男性保育士」とは、男性の保育士さんのこと。以前は保父さん、と呼ばれていましたが、1997年の児童福祉法改正で男女ともに「保育士」という名称に統一されました。近年では男性保育士の人数も増えていますが、それでも保育士全体に占める割合としては、依然として低い状況が続いています。
男性保育士はどんな存在?データに見るその実態
では、男性保育士は全国的に見てどれくらいの人数が働いているのでしょうか?その実態をデータを通してみていきましょう。
現役の男性保育士さんは少ない!
男性保育士として現役で活躍している保育士さんは、女性と比べると圧倒的に少ないです。厚生労働省の賃金構造統計基本調査のデータを見てみましょう。
2017年の時点で保育士として勤務している男性は1万6480人。一方で女性は23万6710人。男性保育士が保育士全体に占める割合は約6.5%。保育士全体に占める割合は圧倒的に少ないといえます。
ですが、この人数は時代とともに増えてきていることも事実です。2012年の同調査では現役の男性保育士は1万280人でした。つまり、この5年間で約1.5倍以上の増加しています。給与アップの取り組みや男性保育士が働きやすい職場環境の整備なども手伝って、男性が保育士として働きやすい環境が整備されてきているのでしょう。
男性保育士の活躍を推進する千葉市の取り組み
人数の少ない男性保育士ですが、男性保育士の就職を支援する自治体の取り組みも進んでいます。その取り組みを主体的に進めているのが千葉市です。
千葉市では2017年に「男性保育士活躍推進計画」を策定しました。これは、主に市立保育園において、10年後に向けて、男性保育士が保育の現場でも活躍できるような具体的な目標を掲げた計画。男性保育士が孤立しないように1園に複数の男性保育士を配置したり、更衣室やトイレなども男女の区別を設ける、など男女の区別なく保育士として働きやすい職場づくりを目指しています。
また、男性保育士が継続して働き、キャリアアップを目指せるような環境を実現し、10年後には5人の保育所長、10人の主任保育士がいることを目指します。
首都圏の中でも大きな都市でもある千葉市が、男性保育士の支援をすることでこうした取り組みが全国的にも広まることが期待されますね。
男性保育士がいることで得られるメリット
女性の職場と思われがちな保育園ですが、男性ならではの得意分野を保育に活かしたり、子どもや職員にとってよい影響があったりと、男性保育士が働くことには保育園にとってメリットがたくさんあります。
防犯や力仕事で頼りになる
男性保育士は身体的に力強い存在です。男性が一人職場にいるだけでも、子どもたちや保護者にとっても防犯の面で安心感が持てるでしょう。
また、お遊戯会や運動会前の大道具の準備や壁面の高いところの飾りつけ、重い荷物の移動などその身体的特徴を活かした仕事ができるのも男性保育士の強みの一つです。
父親的な役割で保育の幅が広がる
保育園のお父さん的な役割が期待できるのが男性保育士です。男の子のトイレの付き添いがしやすかったり、体力を活かしたダイナミックな外遊びや表現ができる、など園の保育の幅も広がるでしょう。ごっこ遊びや絵本の読み聞かせでも、お父さんや、男性的な役割を表現できるなど、日常の保育で表現できることが広がることでしょう。
職場の雰囲気向上に一役
職場の雰囲気の向上に一役買うという点でも、男性保育士が園にいることはメリットになります。保育園は女性が多い職場であるため、その雰囲気も人間関係に気をつかうものになりがちです。ですが、そこに男性が一人加わるだけでも、職場の雰囲気は大きく変わることでしょう。男性保育士という存在が、職場の風通しを良くすることが期待されますね。
男性保育士の悩み
男性保育士がいることで園には大きなメリットがある一方で、男性保育士は働くうえでさまざまな悩みを抱えていることがわかっています。
男女分離化が進んでいない職場がある
男性保育士にとっての悩みの一つは男女分離化が進んでいない職場があるということです。女性の割合が圧倒的に多い保育の現場ではトイレが男女兼用になっていたり、更衣室やロッカールームも男女の区別がない職場が、まだまだ一般的です。
近年では設備の男女分離化は進んでいますが、施設が古い職場では今でもトイレや更衣室が男女兼用の園もあるようです。着替えやトイレの際も気を遣わなければいけない職場では男性保育士も働きにくいもの。男性保育士の活躍も期待される中、こうした環境の整備が求められています。
異性のおむつ替えや着替えに対する保護者のきもち
男性保育士の悩みの一つとして挙げられるのが、異性の子どもへの対応です。特に0~2歳児で女の子を預けている保護者の中には、おむつ替えや着替え、トイレへの付き添いなど、異性である男性保育士が担当することを快く思わない方もいます。
そうした配慮が求められた際は、女性保育士がおむつ替えや着替えの時だけ対応することも。男性保育士が責任をもって保育に参加できないと感じて悩むこともあるようです。
男性の平均と比べてお給料が低い
給料の低さも男性保育士の活躍を妨げる悩みの一つです。一般的に給与が低いとされている保育業界ですが、男性に限ってみるとその給与には大きな差があることがわかります。
2017年の時点では、男性の月給平均は約35.5万円。男性保育士の月給は約23.1万円と1か月の給与だけで10万円以上も差があることがわかります。これにボーナス等を加えた年収を見ると、男性平均が約516.9万円に対して、男性保育士は約326.5万円。年間200万円近くも差ができています。男性保育士が活躍するためにもますますの保育士の給与改善が期待されますね。
男性保育士の今後の活躍に期待!
男性保育士さんは働いている人数が少ない一方で、その役割にはさまざまな期待が集まっています。職場での父性的な役割や、得意分野を活かした保育ができることは園の保育を考えるうえでの大きなメリットになることでしょう。
近年は男性保育士が園の中心として活躍している保育園もあり、「保育士バンク!」の求人の中にも男性保育士を歓迎している施設は増えています。今後は給与改善や施設の整備が進み、より男性保育士が活躍しやすい環境づくりに期待したいですね。
参照:厚労省 賃金構造基本統計調査