子ども家庭庁において、2024年度以降の保育士の配置基準の改定が発表されました。4歳児・5歳児クラスの子どもの人数の見直しが行なわれますが、改定に伴う保育士の確保が大きな課題となりそうです。今回は、保育士の配置基準について徹底解説します。各施設・自治体ごとの基準や計算方法、緩和措置などもまとめました。
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■目次
76年ぶりに保育士の配置基準が見直しへ
保育士の配置基準とは、国が定めた子ども1人に対する保育士の必要人数のことです。
今まで「子どもの人数に対して保育士が少なすぎる」「今の基準では十分な保育ができない」など、保育士の配置基準の見直しについてさまざまな声が挙がっていました。
このような背景をふまえ、2023年12月22日の子ども家庭庁の「こども未来戦略」において、2024年度から保育士の配置基準が一部改定されることが盛り込まれました。
今まで4歳・5歳児クラスは子ども30人に対して1人の保育士の配置が義務づけられていましたが、子ども30人→25人へと子どもの人数が変更になりました。
つまり、配置基準の改定により、保育士1人に対して担当する子どもの人数が5名少なくなったのです。
<国が定める配置基準>
職員配置基準の改正に伴い、4歳児・5歳児は各クラス25名定員となることが予想されます。
園によってはクラスが増え、担当する保育士の拡充が必要になるでしょう。保育士の拡充の経費においては、国から補助金が加算される方針です。
また、保育業界は現在、人材不足の状況が続いているため、改正において混乱が生じないような対策も行なわれます。
従来の基準により運営することも認め、各保育施設の実情にあわせて当分の間は経過措置の期間を設けるとしています。
その他にも子ども家庭庁では、以下のように他の年齢のクラスの保育士の配置基準においても改善を進めることを示しています。
- 3歳児クラスにおいて最低基準等の改正を行なう(20:1→15:1)【2024年度こども家庭庁予算案のポイントP8/子ども家庭庁参考】
- 1歳児クラスにおいて最低基準の改正を進める(6:1→5:1)【子ども未来戦略p19/子ども家庭庁参考】
上記のような配置基準の見直しを進めるためには、子どもを見守る側の保育士の確保が急務になりそうです。これからも、配置基準の改正における議論が行なわれる予定であることから、政府の動向を見守りましょう。
また、保育士の配置基準は各施設や自治体によって異なります。
国の配置基準の変更により、各施設の配置基準においても変更が行なわれる可能性がありますが、今回は現行の基準について紹介します。※2024年1月15日時点
【各施設別】保育士の配置基準
まずは、各施設の保育士の配置基準を詳しく見ていきましょう。
幼保連携型認定こども園
幼保連携認定こども園は、幼稚園的な機能と保育園的な機能の両方を併せ持った施設で、2015年に施行された「子ども・子育て支援新制度」によって新設されました。
職員の配置基準は以下のように定められています。
また、満3歳以上の子どもの教育時間は学級を編成し、専任の保育教諭を1人配置することも決められています。
地域型保育事業
地域型保育事業には、預かる子どもの対象年齢は0歳児~2歳児となり、以下の4つの事業類型があります。
- 小規模保育事業
- 家庭的保育事業
- 事業所内保育事業
- 居宅訪問型保育事業
各施設の配置基準を紹介します。
小規模保育事業
A型、B型、C型の3種類に分かれており、種類によって配置基準が変わります。定員は6人〜19人になります。
<A型・B型>
A型は全て保育士の有資格者を配置する必要があります。
B型は職員の2分の1以上が保育士の有資格者の配置が必要です。
保健師、看護師または准看護師を1人に限り、保育士としてカウントすることができます。
<C型>
C型は保育士の有資格者の配置が義務づけられていませんが、家庭的保育者という市町村長が行う研修を修了した保育士同等以上の知識や経験を有する方を配置する必要があります。
また、家庭的補助者(市町村長が行う研修)が1人つく場合のみ、5人まで担当できます。
家庭的保育事業
家庭的保育事業は、保育者の自宅やそのほかの場所で行われる5人以下の少人数保育所です。
小規模保育事業のC型と同様の配置基準となっています。
事業所内保育事業
事業所内保育事業は、事業所の従業員の子や地域の保育を必要とする子を受け入れて、保育を提供します。
子どもの人数が19名以下と20名以上の場合の配置基準は以下の通りです。
このように子どもの人数によって保育士の配置人数も変わっていきます。
居宅訪問型保育事業
居宅訪問型保育事業は、保育を必要とする子どもの居宅において1対1で保育を行います。
居宅訪問型保育事業の配置基準は、0~2歳児1人に対して職員が1人と定められています。保育を行えるのは、必要な研修を修了し、保育士や保育士と同等以上の知識や経験があると市町村長から認められた人とされています。
認可外保育園
認可外保育園は、国が設置する基準を満たしておらず、認可を受けていない保育施設のことを言います。
認可外保育園における保育士の配置基準は、保育時間が11時間以内の場合は認可保育園
主たる保育時間が11時間以内の場合、以下のように国が定める認可保育園同様の設置基準です。
11時間を超える時間帯では、現に保育されている子どもが1人である場合を除いて常時2人以上を配置する必要があります。
また、職員の3分の1以上は保育士または看護師であることが決められています。
このように保育士の配置基準は施設ごとに違いがあるため、確認しておく必要があります。
施設によっては保育士さんの働きやすさを考えて配置人数を多めに設定する園もあります。
【自治体別】保育士の配置基準
自治体によっては地域の実情に合わせて独自の基準を決めているケースもあります。
どのような基準であっても、国の配置基準を下回ることはなく、むしろ厳しい基準を設けて保育の質を確保しているようです。
横浜市
横浜市では国配置基準よりも多くの保育士の配置を義務づけています。
保育士の配置人数が多いと手厚く子どもたちを見守ることができますね。
京都市
京都市についても国配置基準よりも多くの保育士の配置を義務づけて保育の質の向上を図っています。
保育士の配置人数を増やし、丁寧な保育が可能な環境を整えています。
このように自治体によって配置人数が異なるため、どの地域で働くべきか迷っている保育士さんは配置人数の多さを考えて勤務場所を選ぶのもよいかもしれません。
保育士さんへ
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保育士の配置基準違反はどうなる?
保育士の配置基準は、保育園の質を保ちながら安全に運営するために定められているものです。
もし基準に違反した場合にはどうなるのでしょうか。認可保育園と認可外保育園の場合に分けて見ていきましょう。
認可保育園
認可保育園を運営するのには、国が定めた基準を満たしていることが原則となります。
そのため、保育士の配置基準を満たしていないと、認可保育園として運営することができなくなってしまいます。都道府県や市区町村による指導監査が行われ、改善が認められない場合には認可が取り消され、国からの補助金が受けられなくなるようです。
認可外保育園
認可外保育施設においても、基準を満たしていない場合には指導監督が行われます。
認可外保育施設の運営状況を把握するために年に1度立ち入り調査が実施され、実施後1カ月以内に改善指導の内容が文書によって通知されます。その後、改善がみられない場合には改善勧告がなされ、児童福祉にふさわしくないと判断された場合には、事業の停止命令や施設の閉鎖命令が行われます。
保育士配置基準の見直しや緩和
2016年に施行された「保育所等における保育士配置に係る特例」によって、待機児童が解消し保育の受け皿の拡大が一段落するまでの緊急的な対応として保育士の配置基準が緩和されました。
では、制度の内容について詳しく見ていきましょう。
朝夕など児童が少数となる時間帯の配置人数
朝夕などの子どもが少ない時間であっても保育士2人が必要とされていましたが、そのうち1人を子育て支援員研修を修了した人に代替することができるようになりました。
幼稚園教諭や小学校教諭などを保育士としての活用
幼稚園教諭や小学校教諭、養護教諭の免許を持っている方を保育士としてカウントできるようになりました。
ただ、幼稚園教諭は3歳以上児、小学校教諭は5歳児を保育することが望ましいとされており、保育をするうえで必要な研修の受講が必要です。
開所時間における配置人数
8時間を超えて開所している保育園では最低基準上必要となる保育士数について、一定の研修を受けた「子育て支援員」を保育士としてカウントできるようになりました。
保育士2人のうち1人は子育て支援員研修を修了した方が配置職員として代替えが可能です。
保育士の配置基準の計算方法とシミュレーション
実際の保育園ではどれくらいの保育士が必要になるのでしょうか。ここでは、自身の働いている園が配置基準を満たしているかを確かめられるように計算方法のシミュレーションを、流れとともに紹介します。
1.園の定員を確認する
園の定員は保育士の最低配置基準を確認するためにとても重要なものです。ここでは、0~5歳児まで預かる保育園を想定します。年齢ごとに割り切れるような数字で定員を以下のようにおきます。
0歳児:9人
1歳児:12人
2歳児:12人
3歳児:20人
4歳児:30人
5歳児:30人
定員113人という大きめの認可保育園と仮定します。
2.保育士の配置基準で定員を割る
次に、国が定める配置基準をもとに、保育士が何人必要なのかを計算します。各年齢の定員を配置基準で割ることで必要な保育士の人数を算出することができます。
今回は割り切れる数字を設定していますが、もし割り切れずに小数点が発生した場合には小数点以下を四捨五入して計算します。
<国が定める配置基準>
国が定める基準をもとに計算すると、結果は以下のようになります。
<仮定の配置基準との割り出し>
0歳児:9人÷3→保育士3人
1歳児:12人÷6→保育士2人
2歳児:12人÷6→保育士2人
3歳児:20人÷20→保育士1人
4歳児:30人÷30→保育士1人
5歳児:30人÷30→保育士1人
以上より、最低でも合計で10人の保育士が必要ということがわかります。
また、認可保育園の場合は常に2人の保育士が園にいなければならないため、その点を考慮して配置人数を計算することも大切ですね。
保育士の配置基準は改定内容を把握し、状況の変化をチェックしよう
国が定めた配置基準において「もっと保育士の人数を増やすべき」という声が高まっている現在。
これから保育士を取り巻く環境が変化することが考えられます。
状況の変化をチェックしながらこれからどんな風に働いていきたいのか、自身の働き方を見直すことも大切ですね。
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出典:2024年度こども家庭庁予算案のポイント/子ども家庭庁
出典:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準/厚生労働省 小倉大臣記者会見(2023年4月11日)
出典:認可外保育施設に対する指導監督の実施について/厚生労働省
出典:保育所等における保育士配置に係る特例【平成28年4月から実施】/厚生労働省