子ども、保護者、先輩の保育士など、さまざまな人とかかわる保育士は、子どもの悩み、保護者とのかかわりでの悩みなど、多くの不安があるでしょう。これから保育士を目指している人や保育士として働いている人はどう対処しているのでしょうか。ここでは、筆者が保育者として担任を持った経験も合わせて、解説していきます。
(1)保育士が不安に思う事と対処法
どんなときに不安を感じるか
保育士さんが、お仕事のなかで不安に感じていることはさまざまですが、保育士バンク!に寄せられる声を見ていくと、以下のような不安が多いようです。
・ピアノが弾けない
・持ち帰りの仕事が多すぎて仕事が終わらない
・クラスにすぐ手が出る子がいる、集まりに集まれない子がいるなど接し方の難しい子がいる
・先輩などの人間関係
・給料が安い
など、ピアノや子どもへの接し方といった保育の技術にかかわるものから、待遇や職場の人間関係など不安が目立つようです。
(2)新年度
新年度に保育士が感じる不安
持ち上がりでクラス担任になる場合もありますが、新年度は、新しい子どもたち、保護者の方との生活が始まる時期です。
まだ子どもや親との信頼関係ができていないときに、クラス全体をまとめて保育をするのはとても大変なことです。
子どもとの関係ができていないので、「クラスで集まろう」と声をかけても子どもは遊びの方が楽しく、すぐには集まってこないでしょう。
新年度、新しく4歳児クラスの担任になったときのエピソードです。
新しいクラスになったとき、仲間同士や先生と子どもの関係をつくっていくために、
歌を歌ったり、ゲームをしたりクラスで楽しむ時間を意図的に作っていました。
集まりの時間に声をかけようとすると、園庭に隠れて集まってこない子が……。
この子は集まる時間になると、いつもどこかに行ってしまい、困っていました。
クラスでの集まりはいつもその子を待ってから始まるため、時間がどんどん遅くに。
困っていると、園長先生から「なんで集まってこないかわかる?」とたずねられました。
「集まりが楽しくないからですか?」とこたえると、「集まりよりも自分で遊んでいる方が楽しいからだよ。今日〇〇ちゃんとどれだけ遊んだ?」と一言。
そこで、自分がその子と遊べていないことに気づかされました。
対処法
・クラスの集まりを充実させ、子どもが楽しめる活動を考える
個人個人で興味のあることが違うため、1つの活動をクラス全員で楽しむことは難しいかもしれません。
子どもの表情や行動から楽しめているかを観察し、活動の内容を工夫したり、変えていくことが大切です。
十分に楽しめていない姿を感じたら、
次の日はその子が十分に楽しめる活動を仕組んでいくように心がけると良いでしょう。
・子どもとの信頼関係を築く
新年度の時期に、子どもと信頼関係を築くにはいっしょにたくさん遊ぶことが大切です。
「この先生といっしょにいると楽しい」「たくさん遊んでくれる」という思いが信頼関係につながります。
大好きで信頼している先生に子どもは自然とついてきますよ。
(3)担任
初めて担任を受け持ったときの保育士の不安
筆者の体験談ですが、初めての担任は3歳児でした。
朝、お母さんといっしょにいたくて泣く子や着替えが1人でできずに
「先生、やって!」と手伝いを求めてくる子が多数、あちこちでおもちゃの取り合い。
「ちょっと待っててね!」と言ってすぐにかかわってあげられず、
20人全員を1人で対応していけるか不安になった経験があります。
対処法
・すべてに一気にかかわろうとしない
「困っているからすぐにかかわらなくては」という思いと、全員にすぐにかかわれずにいる現状で葛藤がありました。
同時にすべてにかかわることはできないので、ケガにつながりそうなトラブルを止めに入ることやトイレなど優先すべき内容を考えてかかわり、
解決したら次にかかわるようにしました。
そのときに子どもには、「これが終わったら手伝いに行くから待っててね」と
先生が自分を見てくれていると感じられるように声をかけることを大切にしました。
優先すべき事柄が2つ以上あるときには、先輩の先生や補助の先生がいれば、補助の先生に声をかけて手伝ってもらいましょう。
忙しいのはほかの先生も同じと声をかけづらいかもしれませんが、
子どものケガなどにつながるよりもお願いすることが大事です。
(4)ブランク
産休、その他の理由でブランクから保育士に復帰する際の保育士の不安
ブランクがあって保育現場に復帰するときには、
・保育現場を離れた間に技術が衰えていないか
・新しい保育の知識など変化に対応できるか
・体力がもつか
などの不安を抱えている人が多いようです。
対処法
・技術や知識の変化への不安は、初めは戸惑うこともあるかもしれませんが、手遊びや歌は歌っていくなかで思い出したり、子どもたちから教えてくれたり、助けてくれる場合も多いのでいっしょにたくさん遊び、慣れると感覚も戻って来るでしょう。
・体力の不安は、初めからフルタイムで勤務するのではなく、パートタイムや非常勤で働く時間を短くする方法もあります。
しかし、疲れていても子どもの笑顔を見たら頑張れたり、子どもの前ではやり切れる場合も多いので心配し過ぎず、まずはやってみることが大切かもしれませんね。
まとめ
初めての担任、新年度だからこそ心配なこと、
ブランクからの保育現場への復帰など保育士にはいろいろな不安があるでしょう。
新卒でもベテランの先生でも保育の不安はつきものです。
毎日の保育のなかで、今日上手くいかなかったことを次の日に生かし、
試行錯誤しながら保育の経験を積んでいくと不安の対処の仕方も分かって来るでしょう。