昨今、共働き夫婦の増加等で保育士不足が大きな問題となっています。大学や短大、専門学校で国家試験を経た新人保育士は毎年約2万人誕生しているなか、退職する人は約3万人と言われており、保育士を目指す人は多いのですが、離職率も高いため、なかなか保育士不足の問題が解消できていないのが現状です。そのため、各自治体によって保育士の処遇改善が進められています。今回は待遇改善の一つである補助金制度についてご紹介します。
東京都が保育士への補助制度を実施
東京都は、平成27年度から保育士一人当たりに月額平均2.1万円の補助金を出す方針を明らかにしました。2013年から、国から保育所に対し平均0.9万円が交付されていましたが今回の施策と合わせると、月給が平均3万円上がる見通しとなっています。この施策は東京都独自の補助金制度ですが、国の交付金と比べてみると、以下の2つのメリットがあります。
1.補助される金額の増加
2.認可保育園のみでなく、認証保育園や小規模園等にも適用
実際にどんな補助制度が行われているの?
それでは、実際にどのような補助制度が実施されているのでしょうか。
・世田谷区
保育士資格保有者の家賃82,000円を上限に家賃補助。
対象は保育所が借り上げた住宅に住む、経験5年以下の保育士とする。
・千代田区
保育士1人当たり月額2万円分を上限に、補助金を支出。
・江戸川区
保育士資格保有者の家賃82,000円を上限に家賃補助。
対象は保育所が借り上げた住宅に住む、当該施設に「採用されてから」5年目の保育士とする。(「保育士となってから」5年目ではない)
・横浜市
保育士資格保有者の家賃60,000円を上限に家賃補助。
※対象は保育所が借り上げた住宅に住む、経験5年以下の保育士です。
上記の江戸川区を例にすると、県外で保育士資格を有する方が、都内へ移住して江戸川区の保育士として働く場合、家賃が5年間補助金でまかなえます。
江戸川区の場合、当該施設に「採用されてから」5年目であり、「保育士となってから」5年目ではないため、県外で保育士として何年も経験されてきたベテランの保育士の方でも補助を受け取ることが可能となっています。
仮に8万円の家賃を5年間補助された場合、8万円×12カ月×5年で480万円の支出を抑えることができるので、これはかなり大きいですよね。
補助金対象は、なぜ採用後5年間?
補助金制度は、ほとんどが、採用後5年間となっていますが、これは保育士として採用されてから立ち上がりの5年間の経済的自立を図ることで、離職の防止や保育士として働くことの魅力を高めることが目的です。
ただし、6年目以降の保育士との差を埋めるために、各園が5年目までの保育士へ自己負担額の導入や、6年目以降の保育士に対し独自に補助を続けることは可能としています
いかがでしたでしょうか。これから保育士を目指す方にとっては嬉しい制度ですよね。
しかしながら、この補助金制度ができる前から、該当の施設で5年以上働いていた方は対象外のため、待遇差の問題や、補助金が理由で転職する人が増えて、補助金がない保育所の保育士が不足するのではないかといった懸念点もあるようです。
それでも、保育士の処遇改善としてはプラスに働いている部分が大きく、今後もこうした動きが拡大していくことが期待されています。