学校や幼稚園・保育園などで筋の通らない主張を繰り返す「モンスターペアレント」が話題になって久しいですね。
保育士を目指すみなさんも、実習現場などでいろんな噂を耳にしたのではないでしょうか。
しかし、実際のところ、大半の保護者は「モンスター」ではありません。
かわいい子どもを預けている保育士に対して、初めから「噛みついてやろう」と息巻いているような保護者はいないということです。
それでは、一体なぜ保護者との間にトラブルが起こるのかと言うと……その原因の多くは、コミュニケーション不足にあります。
そこで今回は、「保護者とのトラブルを防ぐコミュニケーション術」と題し、保護者の心理を探り、保育士として一体どう振舞えば、保護者を満足させることができるのかをお伝えします。
◆保護者とのコミュニケーション術(1)保護者の話を聞く
保護者は常にわが子のことを考え、普段の子育てについて、誰かに話したいことや相談したいことがたくさんあるものです。
先生が保護者の良き話し相手、相談相手になってくれると、保護者は心を開き、互いにいい関係が持てるようになるでしょう。
では、具体的にどのようにしたら良いのか、一緒に見ていきましょう。
○保護者の心理=「担任の先生に話を聞いてほしい」
子育てについて、たくさん話したいことはあるけれど、他の保護者では分かってもらえないという話も多々あります。
一番分かってくれそうなのが、担任の先生なのです。
ある意味、わが子のすべてを見て知っているので、頼りになるんですね。
担任の先生が育児・家庭のこと、その他何でも聞いてくれる人であったならば、保護者はとても心強く感じ、強い信頼感を持ってくれるでしょう。
○人間の心理=話を聞いてくれる人を良い人認定!
では、どうしてそうなるのでしょう。
人は自分の話を聞いてくれる人を「何でも分かってくれるいい人」と思う傾向があります。
あるお医者さんは、いつも患者の話を最後までじっくりと聞くだけで「名医」と呼ばれていたそうです。
保護者はわが子や子育ての話を聞いてもらいたいので、そんな話ができ、相談できる人を探しています。
それが、わが子のことをよく知っている先生ならば、申し分ないのです。
話を聞いてあげるだけで、「よく分かってくれる先生」という評価になり、先程の「名医」と同じことが起こるのです。
「先生、聞いてくださいよ。昨日ね…」などと保護者が言って来るようになれば、いい関係が築けている証拠ですよ。
○保護者を満足させるには?
では、そうなるには具体的にどうすればいいのでしょう。
保護者の方から少しでも話しかけてきたら、「そうですか」で終わるのではなく、「それでどうしたのですか」などと、その話に興味を持ち、話の続きを引き出していきましょう。
保護者は「先生は自分の話に関心を持ってくれている。うれしいわ。じゃあ、もっと話そう」となるのです。
一旦、「自分の話をきちんと聞いてくれる人」という印象を持つと、人はその人に心を開き、何でも話すようになるものです。
そして、話が弾むようになり、好感さえ持ち、自然に「いい人」という印象を持つようになります。
何でも気軽に話してもらえる間柄になっておくと、保護者との関係がうまくいきます。
そのためには、普段から話を十分に聞き、よき相談相手になりましょう。
◆保護者とのコミュニケーション術(2)保育士側から保護者に話しかける
「最近、保護者との会話が不足している」「保護者と話が弾まない」、そんな風に感じたことはないでしょうか。
その原因は、保護者側ではなく、保育士側にあることが多いものです。
保護者は保育士と話をしたくないわけではなく、話しかけられるのを待っています。
保育士の方から親しげに話しかければ、保護者は話をするスタンバイはいつもOKなものです。
○人間の心理=基本的に人は人見知り!?
街中で、他人に道を聞いたことはありますか?大概はみんな親切に答えてくれるものですよね。
バスや電車で隣の席の人から話しかけられて、それをきっかけに話が弾んだ、なんて経験もある方もいるのではないでしょうか。
特に日本人は性格的にシャイな人が多いので、なかなか自分から話しかけようとしないですよね。
ですが、話しかけられさえすれば、笑顔で答える準備はみんなできています。
保護者もそれと同じで、自分から話しかけるのは苦手でも、保育士の方から話しかけてもらえれば、いつでも話をする準備はできています。
いえ、むしろ話がしたいのです。
話をしない人同士は、気持ちもだんだんはなれていってしまうものです。
○保護者の心理=「先生から話しかけてほしい」
保護者と仲良くなりたいのであれば、とにかく自分から話をすることが大事です。
挨拶だけ、なんてダメですよ。
子どもたちの送り迎えの時や、通園バスの停留所、保護者参加の行事など、保護者と会うタイミングでこちらから積極的に話しかけてみましょう。
たとえば、「今日は寒いですね!お母さん、薄着で大丈夫ですか?」なんて、何でもいいのです。
それをきっかけに、そのあと必ず会話が始まるはずです。
人は自分の親しく会話してくれる人を好きになるものなのです。
保護者はみんな、保育士から話しかけられるのを待っています。
みんな保育士との楽しく会話したがっているものです。
こちらから積極的に話しかけさえすれば、どんな保護者ともすぐに仲良くなれるはずです。
こちらから話しかけてみましょう!
◆保護者とのコミュニケーション術(3)子どもの様子を保護者に伝える
子どもを保育園に預ける保護者は、園でわが子がどんな風に過ごしているのかが、とても気になっているものです。
そのため、お迎え時や、保護者の参加行事などで先生に会ったら、少しでもわが子のことについて何か話してほしいと思っているでしょう。
そんな時に、保育士が子どもについて何も教えてくれないと正直がっかりしてしまいます。
またそういったことが続くと、保育士や園に対しての不信感にもつながってしまいます。
○保護者の心理=「園での子どもの様子が知りたい!」
3歳未満の小さな子どもはもちろんのこと、4歳や5歳の子どもであっても、園であったことや、今日のできごとなどを、家に帰って保護者へはあまり話さない子はいます。
別に話したくないのではなく、特別、話しておきたいとも思わないのでしょう。
聞いて聞いて!とお話しが好きな子どもなら問題ないのですが、逆に保護者、特に母親は、わが子が今日1日どう過ごしていたのかが大変気になるものなのです。
でも、子どもは話してくれない。
そうなると、わが子の様子を聞くことができるのは園の先生だけということになりますよね。
また、客観的な様子を知りたいというのは保護者の気持ちとして当然のこと。
園の先生は、子どもの様子を伝えてくれてしかるべき、と思っている保護者もいるようです。
○保護者への伝え方のコツは?
「昨日は食べきれなかったのに、今日はお昼ごはんを残さず食べましたよ」「おかずをおかわりしていましたよ」「お友達におもちゃを貸してあげていました。やさしいですね」「鉄棒で前まわりができたんですよ」……こんなささいなことでもいいのです。
その日の、または最近の子どもの様子を何か伝えてあげるだけで、保護者は安心するものです。
子どもについて、特に感心したこと、かわいかったこと、ほほえましかったことなどを伝えてあげると、それだけで保護者は「先生はいつもうちの子をよく見てくれている」と、先生に対して信頼感を募らせていくでしょう。
保護者とうまくいくポイントは、コミュニケーションです。
保護者と出会う機会ごとに、その子どもの園での様子を何か一つでもいいので必ず伝える、そのくらいの心づもりでいましょう。
◆保護者とのコミュニケーション術(4)保護者には常に感謝の気持ちを伝える
人は感謝されると謙虚な気持ちになるものです。
保護者だって例外ではありません。
たとえば、お知らせのプリント1枚でも「○○について」と、最初から要件から入るのと、まずは「いつもご協力いただきありがとうございます」と一文書かれているのではかなり印象が違って見えるものですよね。
懇親会などでも、「いつもご協力ありがとうございます」と最初に先生からの言葉があるのとないのでは、そのあとに続く言葉の受け止め方は保護者にとってずいぶん変わってきます。
○人間の心理=感謝された人に好感を持つ
人は「ありがとう」と言われると無条件にうれしくなるものですよね。
自分に感謝をしてくれた人に対して、好感を持ちますし、自分もその人に対して謙虚な気持ちが持てるようになります。
人は小さな子どもからでも「ありがとう」の感謝の言葉を言われたら、その子に対してもっと何かをしてあげたいと思うものなのです。
○保護者へ感謝の気持ちを伝えるには?
お知らせのプリントや園の便り、告知板など、保護者に読んでもらいたいものには、どこかに「ありがとう」の5文字があるだけで大きな違いを与えるものです。
そこに書かれたことを最後まで読んでもらえるか、しっかり守ってもらえるかどうかにまで影響します。
ですので、保護者に読んでもらうものには、感謝の気持ちを表す文言を入れるようにしまよう。
たとえば、今日の遠足の様子を伝えるプリントだったら、「朝早くから、お弁当の作りなどのご協力ありがとうございました」というねぎらいの言葉や「みなさんが集合時間を守ってくださったおかげで……」といったひと言を入れてみましょう。
その言葉があるだけで、保護者も「こちらこそありがとうございます」と引率してくれた先生への感謝の気持ちが起こるものなのです。
体面上だけではなく、実際に保護者に感謝すべきことはたくさんあるかと思います。
そのため、日ごろから保護者に感謝の気持ちをしっかり伝えておくことも大事ですね。
保育士から「ありがとう」の言葉を言われると保護者も恐縮し、「こちらこそ」という謙虚な気持ちになってくれるものですよ。
◆保護者とのコミュニケーション術を身につけてトラブル回避!
以上、保護者とのトラブルを防ぐためのコミュニケーション術をお届けしました。
これらのコミュニケーション術は、保護者との関係のみならず、職場の先輩との関係にも使えるオールマイティな手法です。
心のドアを開いて、積極的に人に話しかける、人の良いところを褒める、人の話に興味を持つという態度を身に着けていきましょう。