潜在保育士とは、保育士資格を持っているのにも関わらず、保育士として働いていない人のことを指します。今回はそんな潜在保育士の定義はもちろんのこと、潜在保育士といわれる人たちが働かない・復帰しない理由などを詳しく解説します。また、国が保育士不足を解消させるために行なっている潜在保育士の職場復帰支援などの取り組みも一緒に確認しておきましょう。
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■目次
潜在保育士とは
潜在保育士とは、保育士資格を持っているのにも関わらず、保育士として働いていない人のことです。一般的に、以下のような状況にある人が潜在保育士といわれています。
- 過去に保育士として働いていた経験があるが、現在は離職している人
- 保育士資格を持っているが、一度も保育士として働いたことがない人
こども家庭庁が公表した保育士の登録者数と従事者数の推移によると、2021年時点での保育士登録者数は約173万人となっていました。しかし、そのうち仕事に従事していたのは約66万人です。
ここでいう登録者とは、保育士資格を持っている人のことを指します。つまり、保育士として登録されているものの、実際に働いていない人は2021年時点で約107万人もいるということがわかります。
なお、潜在保育士は年々増加傾向にあります。ここで、2021年以前の過去5年の登録者・従事者・潜在保育士の推移を確認しておきましょう。
年度 | 登録者数 | 従事者数 | 潜在保育士数 |
---|---|---|---|
2020年 | 約167万人 | 約64万人 | 約102万人 |
2019年 | 約160万人 | 約62万人 | 約98万人 |
2018年 | 約154万人 | 約58万人 | 約95万人 |
2017年 | 約147万人 | 約57万人 | 約90万人 |
2016年 | 約139万人 | 約53万人 | 約85万人 |
上記の表を見てもわかるとおり、保育士登録者数の増加に比例して潜在保育士の数も年々増加傾向にあります。
過去に保育士として働いていた人たちの主な退職理由
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せっかく保育士資格を取得したにも関わらず、潜在保育士が増え続けてしまう理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
それを知るためには、過去に保育士として働いていた人たちの主な退職理由を知っておくことが大切です。
厚生労働省が2020年に公表した「保育士の現状と主な取組」によると、退職した理由には以下のようなものがあることがわかりました。
- 職場の人間関係
- 給料の安さ
- 仕事量の多さ
- 労働時間の長さ
- 妊娠・出産
- 健康上の理由
- 結婚
- 他業種への興味
- 育児・家事
- 転居
上記の結果を見てみると、人間関係や給料、仕事量といった職場環境があまりよくないことが退職理由の要因となっていることがわかります。
また、結婚・妊娠・出産などのライフイベントにより、以前と同様の働き方に難しさを覚え、退職に至ることも多いようです。
潜在保育士が退職後に働かない・復帰しない理由
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多くの保育士さんがさまざまな事情から退職を決意していることがわかりました。続いては、潜在保育士が退職後に働かない・復帰しない理由を確認しておきましょう。
給料が安い
保育士業界は昔から、ほかの職種よりも給料の低さが問題視されてきました。国家資格という専門職であるのにも関わらず、仕事量や残業の多さなどの実質的な負担と比べると給料が見合わないと感じることが多いといいます。
子どもの命を預かるという大変な仕事をしているのに関わらず給料が安いとなると、保育士として復帰すること、働いてみようと思うこと自体をためらってしまうようです。
子育てとの両立が難しい
保育士は男性よりも女性が多い職場であるため、結婚・妊娠・出産などのライフイベントがきっかけとなって退職する人の割合も高いそうです。
休みが取りづらかったり、残業や持ち帰り仕事が多かったりするため、子育てや家庭との両立に難しさを感じ、保育士として復帰・就職することを選択しない人が多いといいます。
希望条件に合う求人が見つからない
保育士として働きたいという気持ちは持っていたとしても、必ずしも自分のライフスタイルに合った求人を見つけられるとは限りません。
どのような仕事でも、求人を探すときは給料や勤務時間、家庭の事情などを考慮して選ぶのが一般的でしょう。
希望する条件に見合う求人を探してみたとしても見つからなかった場合に、保育士としての再就職や就職を諦めるという人も少なくないようです。
潜在保育士の職場復帰を支援するための国の取り組み
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国は慢性的な保育士不足を解消するために、潜在保育士の掘り起こしを積極的に行なっています。ここでは、潜在保育士の職場復帰を支援するための取り組みを紹介します。
潜在保育士の再就職支援事業
潜在保育士の再就職支援を図るために、再就職にあたって必要な費用を貸し付ける制度です。貸し付け額は40万円で一人1回限り利用できます。
無利子で貸し付けてもらうことができ、保育士として2年間勤務した場合、返還を免除されるのが特徴です。
未就学児をもつ潜在保育士に対する保育所復帰支援事業
未就学児をもつ潜在保育士が保育士として復帰するにあたり、その子どもを保育所などへ入所させた場合に保育料の一部について貸し付けを行なう制度です。
貸し付け額は月額2万7000円が上限となっており、最長1年間の貸し付け期間があります。こちらの制度も無利子であり、2年間保育士として勤務すれば返還を免除される仕組みです。
未就学児をもつ保育士の子どもの預かり支援資金
未就学児をもつ潜在保育士が保育士として復帰するにあたり、その子どもがファミリー・サポート・センターやベビーシッターなど事業を利用する場合に利用料の一部の貸し付けを行なう制度です。
貸し付け額は年12万3000円が上限となっており、最長2年間の貸し付け期間があります。なお、こちらの制度も無利子であり、2年間保育士として勤務すれば返還を免除される仕組みです。
行政や民間企業も潜在保育士向けのセミナーを実施している
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潜在保育士が安心して保育士に復帰できるように、行政や民間企業も積極的に潜在保育士向けのセミナーを実施しています。
行政主催の場合は、保育内容を中心とした研修や就職相談などを行ない、民間企業主催の場合は復職相談に乗ってもらえたり、実際の求人を紹介してもらえたりするそうです。
いずれのセミナーも、潜在保育士が保育士として不安なく働くうえでのサポートをしてくれるので、保育士としての復帰を考えているのであれば利用を検討してみてはいかがでしょうか。
出典:未就学児をもつ潜在保育士に対する保育所復帰支援事業/東京都社会福祉協議会
出典:未就学児をもつ保育士の子供の預かり支援資金/東京都社会福祉協議会
潜在保育士向けの支援をうまく活用して保育士の仕事に復帰しよう
保育士資格を持っているものの、現在は保育士として働いていない潜在保育士はたくさんいます。人によって潜在保育士の状態でいる理由は異なりますが、給料が安かったり、子育てとの両立が難しかったりするなどさまざまな事情があるようです。
日本では現在、国や行政、民間企業などで潜在保育士向けの再就職支援の取り組みを行なっています。将来的に保育士として復帰したい・働きたいと考えているのであれば、これらの支援をうまく活用するとよいでしょう。
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