「遊びの環境を充実させたいけれど、保育室が狭い」といった悩みをもつ保育士さんもいるかもしれません。特に小規模保育施設などスペースが限られている場合、レイアウトをする際にどんな工夫をすればよいか気になりますよね。今回は、保育室が狭い場合の環境設定や遊び方、保育士さんの援助のポイントを紹介します。
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■目次
保育室が狭い理由
保育士さんのなかには、勤務先の園の保育室が狭いことに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
それが原因となって室内での動きがスムーズにいかなかったり、子ども同士がぶつかってケガや事故が増えたりすると活動もしづらくなってしまいますよね。
そもそもなぜ保育室が狭い、またはそう感じるのでしょうか。
その理由として以下が挙げられます。
- 小規模保育園や認可外保育施設など、園自体の面積が小さく保育スペースが狭い
- 園児の受け入れ人数に対して、ギリギリの面積基準で保育室が設計されている
- 東京都では、子ども一人あたりの面積が国の基準以下に緩和されているため、空間に対する子どもの人数が多い
このように、小規模保育園や認可外保育園ではそもそもの保育スペースが狭いこともあるため、そう感じやすいと言えそうです。
面積が小さい場合、大きい園と同じ環境を作るのは難しいかもしれません。
しかし、工夫をしてスペースを有効に使えば、保育しやすい環境に変えることは可能でしょう。
では、どのようにレイアウトすればよいのでしょうか。
ここからは、環境設定や遊び方の工夫について紹介します。
出典:東京福祉保健局
【環境設定】保育室が狭い場合の工夫
まずは、保育室が狭い場合の環境設定の工夫について紹介します。
区分けや使い方を調整できるようにする
狭い保育室でも、以下のように区分けや使い方の工夫をすれば、スペースを有効に使えるかもしれません。
- 棚やパーテーションで遊びのコーナーを区分けする
- 可動ロッカーや持ち運びできる仕切りを使って柔軟にスペースを調整できるようにする
- 「食事はここ、昼寝はここ」と決めず、活動によって変更できるようにする
このように、仕切りを上手く使って室内で遊びのコーナーを分けたり、内容によってスペースを調整できるようにレイアウトしたりすれば、さまざまな活動がしやすくなるかもしれません。
たとえば遊びのスペースにゴザなどを敷くことでお昼寝のスペースに変えるなど、複数の活動で共有できるようにすると、それぞれの場所を確保しなくて済みそうですね。
子どもや保育士の動線を考慮した配置にする
レイアウトを考えるときは、それぞれの年齢の子どもや保育士の動線を考慮しましょう。
保育園によっては、0歳児~2歳児または3歳児~5歳児の異年齢の子どもが同じ保育室で過ごすこともあるかもしれません。
子ども同士がぶつかったり、保育士さんがすぐに子どものそばに行けなかったりすることを防ぐためにも、スムーズに動けるよう考えた配置にすることが大切です。
具体的には、以下のような工夫が挙げられます。
- 乳児クラス:室内には仕切りをつけ、ハイハイの子どもと走り回る子どもが混じらないようにする
- 幼児クラス:遊びコーナーを最小限にし、それぞれを広めに確保する
保育しながら、子どもの動きや自身の動きやすさを常に確認して調整するとよいですね。
【遊び方】保育室が狭い場合の工夫
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次に、狭い保育室での子どもの遊び方の工夫を紹介します。
保育室以外でも遊べるようにする
保育室以外を遊びのスペースとして活用するのも工夫の一つと言えるかもしれません。
たとえば廊下を運動スペースにし、体を使った遊びは廊下で楽しめるようにしたり、エントランスを絵本スペースにしたりするなど、園の共有スペースで遊べるようにしてもよさそうです。それにより、保育室での遊びのスペースに余裕が生まれるかもしれませんね。
道具やおもちゃを共有する
園のなかで道具やおもちゃを共有するようにし、保育室内の収納物を少なくするのもよいでしょう。
クラスごと・個人ごとに管理するのではなく共同にすれば、その分の収納スペースが減り有効に使えるかもしれません。
また、収納場所も同じにし、定期的に入れ替えれば子どもたちが幅広い種類のおもちゃで遊べるようにもなりそうですね。
保育室内での遊びのスペースを区分けする
保育室内での遊びのスペースを区分けることで、子どもが希望する遊びに集中しやすいかもしれません。
事例として、15人程度のクラスでの遊びのスペースを区分けしたレイアウトを紹介します。
- 机上遊びのコーナー:同時に5人程度が座れる机と椅子を置き、お絵かきや製作ができるようにする。
- 構成遊びのコーナー:パーテーションや低い仕切りなどを使って、4~5人がブロックや積み木などを楽しめるようにする。
- ままごと遊びのコーナー:食材や食器のおもちゃを収納できる棚、調理台を利用して仕切り、4~5人でままごと遊びができるようにする。
室内で遊びのスペースを区切れば、子どもが自由に遊びを選択でき、それぞれのおもちゃや道具が混ざることを防げそうです。また、一つの活動に集中して取り組むことにもつながりそうですね。
スペースの区切りとして動かせるパーテーションなどを利用すれば、1カ所に子どもが集中した場合でも調整しやすいかもしれません。
保育室内に動けるスペースを作る
保育室内での構成遊びやままごと遊びのスペースのほかに、動けるスペースも作るとより遊び方の幅が広がるかもしれません。
実際に、以下のようなポイントを参考に作ってみましょう。
- 遊びのスペースと少し離れた位置に、体を動かして遊ぶ遊具やバランスを取るような遊具を置く
- 遊具などは置かず、自由に動き回れるスペースを広めにとる
保育室以外に体を動かすスペースがない場合は、室内に小さな平均台や跳び箱などの遊具を置くのも工夫の一つかもしれません。
また、動き回れるスペースをとると運動遊びやゲームなどを楽しみやすくなりそうですね。
狭い保育室で活動の援助をするときのポイント
最後に、狭い保育室で保育士さんが活動の援助をするときのポイントを紹介します。
死角に注意する
室内に仕切りの棚などを設置することで、死角が生まれることも考えられます。
できるだけ死角ができないようなレイアウトし、常に子どもの位置を把握しながら援助することが大切です。
仕切りとして使うアイテムは背の低いものにしたり、子どもがすっぽりと入ってしまうような棚の設置は避けたりすることを心がけましょう。
子どもが落ち着いて遊べるよう配慮する
保育室内のスペースをさまざまな遊びで共有する場合、子どもたちが落ち着いて遊べるように配慮した環境設定にしましょう。
ゆったりと遊ぶ子どものなかに、急に走り回る子どもが入ってくると、思わぬ事故が起きることも考えられます。
別の遊びをする子どもが混じらないようできるだけ区切りを離すなど、それぞれの遊びに集中できるようなレイアウトにするとよいかもしれませんね。
ポイントを押さえて、狭い保育室でも充実した保育環境に整えよう
今回は、保育室が狭い場合の環境設定や遊び方の工夫について紹介しました。
園によってはそもそも保育室の面積が小さく、狭いと感じることもあるようです。しかし、レイアウトの工夫次第ではスペースを有効活用できるでしょう。
室内を遊びのコーナーごとに区分けして複数の遊びを楽しめるようにしたり、保育室外でも活動ができるようにしたりといったポイントを押さえながら、充実した環境設定ができるとよいですね。