保育園では、子どもの噛みつきが起こることがあります。保育士さんにとっては珍しいことではなく、常に気を付けていることではないでしょうか。しかし、保護者にとっては心配になったり、クレームにつながったりする問題でもあるかもしれません。子どもの噛みつきに対して理解を深め、適切な対策や保護者対応を行っていきましょう。
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■目次
保育園での噛みつきは保育士さんが悩む要因のひとつ
子どもの噛みつきは、保育園にいると珍しいことではないでしょう。
しかし、常に気を張って見ているにもかかわらず防ぐことが難しい場合もあるため、保育士さんが悩むことの多い問題かもしれません。
子どもの動きは俊敏で、予想だにしない場面で噛みつくこともあるため、未然に防げないことに責任や申し訳なさを感じることが保育士さんには何度もあるかもしれないですね。
まずは、噛みつきの要因を理解しましょう。
保育園での噛みつきはなぜ起こる?
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乳児は、歯が生え始めると歯茎がむずがゆいためなにかを噛んでしまうことがあるといわれているようです。
また、「噛みつくことが悪いこと」とまだ理解ができていないから、という要因も考えられます。
他にはどのような噛みつきの理由があるのか、くわしく見ていきましょう。
言葉で気持ちを表現できない
乳児期は、噛みつきがとくに多く見られるでしょう。
「あのおもちゃがほしい」「その場をどいてほしい」など、自我が芽生えているにもかかわらず伝えるすべがない状況で、咄嗟に噛みついてしまうのかもしれません。
興味がある
興味が沸いて噛みつくこともあるようです。
おもちゃだけではなく、目の前に人の手があり興味がわいたり、じゃれたい気持ちになったりすると、悪気なく噛みついてしまうのかもしれません。
気持ちの表れ
先述の通り、噛みつきには子どもがなにかを伝えたい気持ちが表れているようです。
そのため、甘えたい、落ち着かない、などそれぞれの思いがあるのでしょう。
例えば、進級して担任や保育室が変わったり、ご家庭の事情だったり、周りの変化も影響するかもしれないですね。
保育園でできる噛みつき対策
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噛みつきが起きた場合、噛まれたら痛いことや、誰に対してもやってはいけないこと、という内容は伝えた方がよいかもしれません。
しかし、叱るだけでは保育士としての適切なかかわりとはいえないでしょう。
噛みつきが起きたときのかかわりや対策を紹介します。
子どもの気持ちを汲み取ってみる
まずは、噛みついた子どもの気持ちを汲み取ることが大切でしょう。
例えば、おもちゃを取られたことが嫌で噛みついた場合、噛みついたことだけを叱られると、根本的な気持ちを理解してもらえなかった子どもは悲しい気持ちのまますごすことになります。
まずは気持ちを受け止め、理解を示すことが大切かもしれません。
集中できる遊びを用意する
子どもが集中できる遊びを用意することも、噛みつき対策のひとつになるでしょう。
他のことに気が散らないだけではなく、集中して遊ぶ時間は、子どもの気持ちの安定にもつながるのではないでしょうか。
密になることを避ける
密集していると、そばにある腕をなんとなく噛んでしまったり、邪魔だと感じた子に対して噛みつきが起こったりする場合もあります。
遊びやすく落ち着ける環境を整えることも大切でしょう。
噛みつきを防ごうと友だちとのかかわりを遮断するのではなく、いっしょに遊ぶことを楽しめる工夫をすることも必要ではないでしょうか。
友だちとのかかわりを持ちながら噛みつきを防ぐ、難しい課題のひとつかもしれません。
担当を決める
子どもの情緒の安定を図るには、根気強く時間をかけてかかわることが必要でしょう。
担当を決めて特定の保育士と一対一でかかわることは、子どもの安心につながるかもしれません。
また、噛みつきが起きそうな場合にすぐに止めるための対策にもつながるでしょう。
一対一でかかわっている最中に噛みつきが起きた場合、担当者が責任を感じてしまうかもしれませんが、必要以上に落ち込むのではなく園全体でフォローしていける体制を整えることが重要と言えます。
しかし、「ゆったりかかわりたいけど、保育士が足りない!」というもどかしい現状もあるのかもしれません。
噛みつきは保育園の責任?適切な保護者対応とは
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第一に、保育園で起きた怪我は保育園の責任として、反省し対策をとる必要があるでしょう。
一方で、「保育士さんのせい」というわけではありません。
しかし、不誠実な対応はクレームにつながるだけではなく、不信感を抱かせることとなるため、適切な保護者対応を心がけましょう。
噛まれた子どもの保護者対応
当日
噛みつきは、保育士さんにとって珍しいことではなくても、保護者にとっては驚いたり心配になったりするできごとのひとつです。
「怪我をさせられた」と感じてクレームにつながることもあるかもしれません。
まずは、防げなかったことや痛い思いをしてしまったことに対する謝罪を伝え、処置の内容やその後の様子などをくわしく説明することが大切ではないでしょうか。
噛みつきの傷が消えた場合
降園時、噛みつかれた傷跡が残っていない場合もあります。
「傷がないから保護者には伝えなくても大丈夫」と思っていてはいけないでしょう。
子どもが話をしたり、傷があとから出てきたりすると信用を失い、大きなクレームにつながる可能性もあります。
噛みつかれたとき、子どもが痛い思いをしたことには変わりないので、きちんと保護者に伝えることが大切でしょう。
翌日
翌日は、「噛みつきの怪我、お家で痛がったり気にしたりしていなかったでしょうか?」などと再度様子を伺ったり謝罪をしたりすることも大切かもしれません。
保護者としても、気にかけてくれていることは、安心感につながるでしょう。
クレームが入った場合
噛みつきが起きた事に対して、クレームを受けることもあるかもしれません。
そのような場合は、まず上司に相談し、適切な対応を仰ぎましょう。
「噛むついた相手の名前を教えてほしい。」といわれることもあるかもしれません。
しかし、保護者同士のトラブルとなることも考えられるため、個人の名前を伝えることは避けた方がよいでしょう。
噛みつきだけではなく、どのようなときでも誠実な対応をすることが、保育士さんとご家庭との信頼関係につながります。
保育園で起きたことは保育園の責任ということを伝え、保育士さんが謝罪し、誠心誠意最後まで対応することが望ましいのではないでしょうか。
噛みつきをする子どもの保護者対応
そもそも噛みつくことを保護者に伝えるべき?
子どもの噛みつきは、共有してかかわり方を考え、子どもの情緒安定を図ることも大切でしょう。
しかし、友だちに噛みついていることを知ると、「また友だちを噛むのではないか」と心配になったり、子育ての悩みを助長してしまったりするかもしれません。
噛みつく子どもの保護者対応は、保育園の方針によって大きく異なります。
何度も噛みつきが続く場合などは、園長など上司と相談しながら保護者対応をしていくとよいでしょう。
伝える場合のポイント
噛みつきの事実だけを伝えるのではなく、子どもの気持ちを汲み取ったその場の状況説明や、どのような対応をしたのかを話すとよいでしょう。
保護者の方が不安にならないよう、気遣いながらケアすることも、ポイントのひとつですね。
保育園での噛みつきは誰のせいでもない!対策や保護者対応をみんなで考えよう
保育園で起こる子どもの噛みつきについて紹介しました。
噛みつきは、防ごうと対策し細心の注意を払っていても止められず、何度も起きてしまうこともあるでしょう。
保育士さんも悩み、大変な思いをしているかもしれません。
保育園で起こる噛みつきは、誰かが悪いわけではないので、悩ましい問題でもあるのではないでしょうか。
担任の先生だけで抱え込まずに、保育園全体の課題として取り組んでいけるとよいですね。