保育園に通う0歳から5歳児までの子どもたちが年齢、性別を問わずにあそべるおもちゃは何でしょうか?それはボールではないでしょうか。
幼稚園の生みの親フレーベルが考案した「恩物」も最初は玉状のものですね。
ボールは子どもたちと、とても相性が良いです。
まず、どこの保育園にもボールは必ずありますよね?だから、あそび環境コーディネーターとして活動する時には、ボールはよく使います。
特にカラーボールや、ボールプールに使われているプラスティック製のボールです。数がたくさんあり、子どもたちが片手でも扱いやすいサイズなのでいろんな遊び方ができます。
今回は、そんなカラーボールで4~5歳児のクラスで遊んだ時の様子です。
まずは一人キャッチボールから
まずは好きな色のボールを一人1個ずつ手にします。ボールを右手から左手へパス、上に投げてキャッチできるか?など一人キャッチボールをします。この時の手や体の動かし方、ボールとの距離感などを見ると子どもたちの発達の様子が見られます。あそんでいる様子から今の子どもたちの発達の姿をとらえることは保育士の専門性の一つですね。
遊びに集中すればするほどその子の素の姿、本質が見えるような気がします。その姿は普段自分がその子に抱いているイメージとちょっと違うもの。そんな経験、皆さんもあるのではないでしょうか。
床の上でのキャッチボールが発展して…
話を遊びに戻しまして、一人キャッチボールの後は床に座り、お友達と向き合い床の上でキャッチボール。空間にボールを「投げる」のと「転がす」のでは手の動かし方も空間認知も違ってきます。
2人から4人、6人とどんどん人数を増やしていくと、ラリーが続かなくなりました。するとあるグループが両足を開いて前に出し、隣の子と足と足をくっつけ輪を作りボールが出ていかないようにしました。
子どもの遊び方の「発明」を広げるアナウンス
それを見た担任の保育士さんが「みんな!こんなやり方があるよ」と他のグループの子どもたちにアナウンスし、子どもたちの遊び方の「発明」を広げました。(このクラスは3人担任制)それを見た他のグループも足をつなげ輪を作り、最後はクラス全員で輪になりキャッチボール。ボールは一つとは限りません。子どもたちと相談し数を決め、ラリーが続くにはどうしたらいいか?道具を使ったらどうか?優しくボールを転がすべきだ、などいろんな意見が出ました。
アナウンスはするべき?しないべき?
さて、この日の振り返りの時間に保育士さんと話し合ったのが、子どもたちの中から良いアイディアが出たときにそれを保育士がアナウンスするべきか?ということ。今回は、ボールのキャッチボールを数人でする際に足を繋げたグループの様子をアナウンスしましたが、これは必要だったのでしょうか?
アナウンスせず、子どもたちが考えたり相談したりするのを待つべきだったのか?こういう正解があるような、ないような問いは日々の保育の中のさまざまな場面で遭遇しますよね。
結局、この日の結論は「アナウンスはしなくても良かったのでは?しかし一つのやり方を知ったことで楽しい時間が増えたので結果良かった」となりました。
毎日のあそびで起きたことを振り返り、話し合おう!
あそびの状況や保育士さん一人ひとりの考え方もありケースバイケースではあります。ただ、こういう事を保育士同士で日常的に話し合うことがまずは大事ではないでしょうか?
保育に正解はないとよく言われますが、あそびの中の一つの事象を振り返り、みんなで検討し、意見を出し合うことが、あそびの質の向上につながっていくのではないかと感じた瞬間でした。
プロフィール
横尾 泉(よこお いずみ)
木のおもちゃ「チッタ」店主、あそび環境コーディネーター、保育士。
保育士養成校を卒業後、乳児保育園の保育士などを経験。
その後、フィリピンの孤児院や、オーストラリアを放浪しながら現地の保育園にてボランティアを行う。
結婚を機に上京、子育てに行き詰まったことをきっかけに、おもちゃコンサルタントマスター取得。
その勢いで自宅ショップ「木のおもちゃチッタ」オープン。
こだわりのおもちゃ屋を経営しながらあそび環境コーディネーターとして保育現場で活動。
園内研修、保護者向けのおもちゃの講座などを手掛ける。石川県出身、2児の母。 Facebook https://www.facebook.com/woodtoychitta/