これまで3回に渡ってカラーボールのあそびについて書いてきました。
一年を通していろんな保育園で1~2歳児さんとカラーボールであそんできて思うのが、この年代の子どもたちは「入れる」「出す」「見る」という3つのあそびが大好きだということ。1~2歳児さんは、この3つを飽きずに何度も何度も繰り返します。私も、この3つのあそびのバリエーションをずっと考えてきたように思います。
長~い筒の中をカラーボールが転がるのに夢中!
ある日、知り合いから2メートルほどの長さの紙筒をもらいました。子どもたちと遊べそうだよと連絡をもらったのです。
高低差をつけて高い方の穴からカラーボールを入れると、コロコロと筒の中を転がり下の穴から出てきます。なんせ2メートル。なかなかボールは出てこないのですが、子どもたちはその待ち時間も楽しんでいるように見えました。
穴にボールを入れたら目線は下の穴へ。期待に満ちた目でボールの行方を見守ります。
今度は玉を入れる穴を覗き込み始めました。
暗い穴の中をボールが光に向かって転がる様子はとても興味深いようで真剣に時には笑ったりしながら見つめていました。
ボールが転がる穴の不思議さ
一人がその楽しさに気づくと他の子も真似をし、その面白さかクラスにじわじわと広がっていきました。
どの園もその子のペースで来たい時に来て覗き込み、(来ない子もいます)やがて穴を覗く場所は順番待ちになりました。自分の手にあったボールが穴の中に一度は消えまた下から出てくる。
視界から消えたとしても物は存在し続ける、という不思議さは「いないいないばあ」と同じ現象です。ピアジェが提唱した「物の永続性」につながる あそびですね。
その後、子どもたちは「下の穴」の面白さに気づきます。
写真のように覗き込み、転がってきたボールがポンポン顔に当たるのですがお構いなし!
笑いながら転がってくる様子を覗き込んでいました。
上の穴ではいかに早くたくさんのボールを入れるか、真剣に取り組んでいる子ども達がいます。
下ではボールが来るのを待っている子がいるので、使命感に燃えたのか?
大人にもあることですが、単純な作業を無心でやり続けると頭が真っ白になり、充実感に満たされすっきりしたりしませんか?あの感覚を子ども達も感じているように見えました。
ボールが転がる筒の中の、ふしぎな非日常感!
さて、穴の中を上から見るのと下から見るのでは見える世界が全然違います。私ものぞき込んでみると、視界が狭く暗いのですが、その狭さが絶妙な安心感で、ボールがころころ転がる音も響き、ちょっとした非日常間を味わえます…。
大人は子どもが楽しんでいる様子を見ただけで理解できたような気になりますが、実際にやってみると理解を超えて感じるものがあると思います。皆さんにも、子どもが「何が楽しいのか」「何に熱中しているのか」を観察するだけでなく、ぜひご自分でもやってみる、というのをおすすめします。
同じ紙筒でも、長さによって遊び方はガラっと変わる!
後日、紙筒の短いバージョンを手に入れました。立てて置いたところ、子どもたちがその状態でボールを入れ始めました。入れては穴の中を覗き込みます。
しばらくボールを入れ続けるといっぱいに。すると穴の中に手を入れボールを取り出し始めました。はじめは簡単にボールを掴めますが、だんだん手が届かなくなります。覗き込めば確かにボールはあるのに届かない。子どもたちはこの体験から「深さ」を体験したのではないでしょうか?
このように、同じ紙筒という素材でも、長さが違うとあそび方がガラッと変わります。あそびの内容自体は「入れる」「出す」「見る」という単純な動きですが、それを何度も満足するまでさまざまな形で繰り返す。そのことが満足感につながり、安心感、達成感、情緒の安定につながるのではないかと思いました。
プロフィール
横尾 泉(よこお いずみ)
木のおもちゃ「チッタ」店主、あそび環境コーディネーター、保育士。
保育士養成校を卒業後、乳児保育園の保育士などを経験。
その後、フィリピンの孤児院や、オーストラリアを放浪しながら現地の保育園にてボランティアを行う。
結婚を機に上京、子育てに行き詰まったことをきっかけに、おもちゃコンサルタントマスター取得。
その勢いで自宅ショップ「木のおもちゃチッタ」オープン。
こだわりのおもちゃ屋を経営しながらあそび環境コーディネーターとして保育現場で活動。
園内研修、保護者向けのおもちゃの講座などを手掛ける。石川県出身、2児の母。 Facebook https://www.facebook.com/woodtoychitta/