◆乳幼児期の発達に必要な外部刺激
乳幼児の発達に欠かせないのは、外部からの刺激です。
外部とはすなわち、人とのコミュニケーションや遊びのこと。
赤ちゃんはそれらの刺激を受け取り、考える力を鍛えたり、社会性を育んだりするのです。
乳幼児期の発達を促すためには、保育者としてどのような働きかけが必要なのでしょうか?今回は、乳幼児期の発達をテーマに、「赤ちゃん言葉」と「おもちゃ」について取り上げてみたいと思います。
◆乳幼児期の発達(1)赤ちゃん言葉
保育士のみなさんは、普段の保育で赤ちゃん言葉を使っていますか?これまで、赤ちゃん言葉を使って話しかけるのはあまり良くないと言われてきたようです。
インターネットで関連情報を検索してみても、ご両親や保育士さんの間で、使用するかしないか悩んでいる方が多く見受けられます。
推奨されない理由としては、
・一度赤ちゃん言葉を覚えて、そのあと正しい言葉を覚えるのは2度手間だ
・本来の正しい言葉を使ってあげたほうが良い
・赤ちゃん言葉のまま大きくなったらどうするの
などなど。
確かに、正解がないので不安ですよね。
そもそも赤ちゃんの言葉は、どのように育まれていくのでしょうか?
〇言葉の発達ステップ
【生まれたばかりの時】
赤ちゃんの発声・発語練習は、おしゃべりをする前から始まっています。
生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳やミルクを飲むことが大切な仕事です。
そのため、口や喉の構造は大人と違って、ミルクや母乳が飲みやすく、誤飲をしにくいようなつくりになっています。
口での呼吸がほとんどできず、声を出すこともできません。
【生後2~3ヵ月】
話しかけられたり、機嫌の良い時に「あーうー」など叫び声ではない声が出るようになり、呼びかけに対して笑顔を見せる頻度が増えてきます。
また、咽頭が広がるなど喉の構造の変化も見られます。
【生後4~8ヵ月】
4ヵ月~8ヵ月頃にかけて、「喃語(なんご)」が活発に出る時期です。
最初のうちは聞いていてはっきりとわかりやすい「あー」などの母音から発音し、5~6ヵ月くらいから「ぷー」「きー」などの子音が出るようになります。
また、「まんまんまん」などの反復された喃語も発音するようになっていきます。
8ヵ月頃から「ま」や「ぱ」など、唇を合わせて出す音がこれまでよりやや明瞭に出せるようになり、徐々に「まま」「ぶーぶー」など、発音しやすい意味のある言葉を話すようになります。
〇言葉の発達を促そう!
1~6ヵ月くらいまでは、こういった言葉を練習したり、大人とのやりとりを楽しむ中で「思いが通じるって楽しい」という感覚を身につけていく時期です。
この時期の赤ちゃんの「あ~、ば~」という声に応えて一緒に会話をしてあげましょう。
赤ちゃんの中にそれらの言葉がどんどん貯まっていきます。
これが言葉を話せるようになった頃に外に出てくる、赤ちゃんにとってのボキャブラリーになります。
お天気やその日のできごとなど、優しい言葉でどんどん話しかけてあげましょう♪
〇赤ちゃん言葉によって言語が発達する!?
「赤ちゃん言葉で話しかけられた子どものほうが、言語の発達が促され、たくさんの言葉を覚えている」という研究結果が、米ワシントン大学とコネチカット大学の共同研究として発表されました。
1歳児26人を対象として、普段の言語環境を4日間にわたって記録・分析。
親が赤ちゃん言葉で多く語りかけている赤ちゃんは「アー」「ウー」といった喃語をしゃべる回数が多かったとしています。
更に、2歳になった時点での語彙力を調査すると、赤ちゃん言葉を多く使っていた赤ちゃんたちは、平均433語。
赤ちゃん言葉で話しかける機会が少なかった赤ちゃんたちは、平均169語。
約3倍の差があるとは驚きですね!
〇伝えたい気持ち、意欲が大切です
言葉を発するためには、相手に伝えたい、わかってほしいという意欲が必要です。
赤ちゃんが何か言葉を発したら、必ず「なあに?」と応えてあげましょう。
この応答性の高い関わりで、コミュニケーションの意欲が育っていきます。
わかる言葉が増えると、言える言葉も自然と増えていきます。
高い声色でゆっくり語尾を伸ばしたり、単純な発音の繰り返しなどが効果的ですよ。
◆乳幼児期の発達(2)おもちゃ
乳幼児期の発達においては、おもちゃも欠かせない道具の一つです。
おもちゃに関心を持ち始めたら、おもちゃを上手に活用して、子どもの発達を促していきましょう。
〇子どもの発達に合わせて準備しよう
身体的な発達が進み、外界に興味を持つようになると、おもちゃで遊ぶようになります。
発達に伴って、さまざまなおもちゃに触れさせてあげましょう。
【0~3ヵ月】
動くものを視線で追ったり、光や音に反応します。
安全なガラガラ、押すと音が出るおもちゃやぬいぐるみなどを喜びます。
【4~6ヵ月】
だんだん自分の意識で手足を動かせるようになります。
また、自分の意思でものをつかみ、口に入れて確かめるようになりますので、安全なおしゃぶりやガラガラ、指遊びのおもちゃや、布絵本などを喜びます。
【7~9ヵ月】
お座りが安定してきます。
また、はいはいやつかまり立ちができ、行動範囲も広がってくるので、さまざまなものに興味を持ち、探求し始めます。
電話やソフト積み木、立ったままいじれるおもちゃやごっこ遊びなどを喜びます。
【10~12ヵ月】
つかまり立ちから伝い歩きを始めるようになります。
指先は器用になり、ものを摘んだり、出し入れできるようになります。
さまざまな仕掛けのあるものや、つなげるおもちゃを楽しんだりします。
【1歳~1歳半】
手と腕が別々に動かせるようになり、ものに応じた遊び方ができるようになります。
また、観察力が高まり、大人の話す言葉と実際のものとが繋がり、意味を理解し始めるので、絵本のお話にも興味が出てきます。
お人形ハウスや積み木、低いジャングルジム、大きなパズルなどを喜びます。
【1歳半~2歳頃】
いろいろな遊びが展開でき、活発に動き回るお年頃です。
三輪車やブロック遊び、お絵かき、粘土、おままごとやお人形など遊びの幅が広がります。
大人や他の子の行動に興味が出てきて模倣するようになります。
〇安全・衛生面に配慮したものを
乳幼児期は何でも口に入れてしまいがちです。
衛生面への配慮も大切ですが、特に誤飲には注意です。
おはじきやビー玉、ボタンなど小さなものを避けるようにしましょう。
また、とがっているもの、体に巻き付いてしまう恐れのあるものも避け、安心・安全に遊べるものを整えていきましょう。
〇点検・管理をしっかりと
使っていると壊れてきたり、ほつれてきたり、食べこぼしなどで汚れていることもあります。
こまめにチェックして、修繕、消毒をしましょう。
◆保育士として発達を促すよう積極的な働きかけを!
赤ちゃん言葉が赤ちゃんの言葉の発達を促すとは、「意外だった!」という方も多いのではないでしょうか。
しかし、これは園の方針もあるかと思います。
必ず上長(園長や主任)に確認をとってから、どのような言葉がけをしていくのかを決定してくださいね。
保育園で過ごす時間が長い子どもたちにとって、昼間の時間帯は保育士がママ&パパの替わりです。
赤ちゃんの成長は大変目まぐるしく、その一瞬一瞬が貴重。
そんなかけがえのない大切な時間を保育士が預かっているのですから、ぜひ、子どもたちの発達を促すよう、積極的に働きかけていってほしいと思います。