転職を考えている保育士さんのなかには、新しくオープンする「新規園」を条件として探している方もいるかもしれません。一からのスタートというさまざまな魅力がある一方で、新設ならではの大変さもあるようです。今回は、保育士が新規園で働くメリットや大変なこと、転職に役立つ志望動機の書き方などを紹介します。

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■目次
新規園の特徴や取り巻く現状
転職するにあたって、新規園で保育士として働きたいと考えている方もいるかもしれません。
ここでは、新規園の特徴や保育園が新しく設置されている背景などを紹介します。
新規園とは
新規園とは、文字通り新しく設置される保育園のことです。
新規園は、開園に向けた準備を職員が一から行う必要があり、すべてがゼロからのスタートとなるのが特徴です。
一般的に、新規園で働く職員を募集する求人をオープニング求人と言います。
保育士や園長、調理師など、保育園で働くあらゆる職種の方を対象として募集することが多いようです。
保育園の設置状況
近年、保育園の設置数は全国的に増加傾向にあります。
厚生労働省「「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」を公表します」の資料によると、全国の保育所等(特定地域保育事業、幼稚園・幼保連携型認定こども園を含む)は、2015年から2020年にかけて約9000カ所増えています。
また、保育所等の増加に伴い、2019年から2020年の1年間で、保育所等利用児童数は約5万8000人増加しています。
これらの結果より、保育所等の設置数が増えることで、利用できる子どもの人数も多くなっていることが分かりますね。
では、どうして保育園の数が年々増加しているのでしょうか。
新規園が増加している理由
毎年新しく保育園が設置されている背景には、待機児童問題があります。
待機児童は、共働き世帯が増加したことを発端としており、特に0歳児から2歳児の低年齢児の割合が多いようです。
日本の待機児童数は減少傾向にあるものの、いまだ解消には至っていません。
そこで、待機児童問題を解消することを目標として、「子育て安心プラン」という施策が作られました。
この子育て安心プランによって示されている取り組みの一つが「保育の受け皿の拡大」です。そして、この施策によって保育園の設置促進が目指されています。
つまり、新規園を設置して受け皿を拡大することで、待機児童問題の解消を図る目的があると言えるでしょう。
出典:保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」を公表します/厚生労働省
保育士が新規園で働くメリット
ここでは、新規園で働く保育士にどのようなメリットがあるのか紹介します。
園舎が新しく設備も整っている
新規園は、できあがったばかりの保育園なので設備や備品などが新しいというメリットがあります。
たとえば、空調設備が最新のものだったり防音機能が付いた窓ガラスがあったりと、快適に保育を行える環境が整備されているでしょう。
また、設計の段階から子どもや保育士の導線をしっかり考慮して作られていたり、以前は少なかった男性用の更衣室などを設置していたりする園もあるようです。
新しくきれいな環境があれば気持ちよく仕事ができるので、職員のモチベーションのアップにもつながりそうですね。
人間関係を一から築ける
新規園で働くメリットには、人間関係をゼロから築くことができるという点を挙げることができるでしょう。
新規園は新しくオープンする保育園のため、職員はみんな初対面。
全員同じスタートラインに立って仕事をするため、フラットな人間関係を築きやすいかもしれません。また、いっしょに保育園を作っていくという一体感も生まれそうです。
既存の園に転職する際には、すでにできあがっている輪へ飛び込まなければならず、不安を感じてしまう方もいるかもしれません。
その一方で新規園は、そういったコミュニティができあがっていない状態なので、新鮮な気持ちで人間関係を築いていくことができそうです。
キャリアアップしやすい
新規園で保育士として働くと、キャリアアップしやすいというメリットがあるでしょう。
既存園でキャリアアップを目指す場合、同じ園で何年も勤続したり、役職がある保育士が退職するタイミングを待ったりすることもあるかもしれません。
しかし、新規園で主任や園長の求人募集に応募すれば、転職のタイミングで昇進する可能性もあるでしょう。
また、転職であれば給与の交渉もできるかもしれないので、キャリアアップするにはよいタイミングとなりそうです。
保育園を一から作り上げられる
保育園を一から作り上げることができるというのは、新規園で働くメリットと言えそうです。
既存園で働くなかで、ゼロから作り上げていくという経験を積むことはなかなか難しいですよね。
一方新規園は、園のマニュアルや行事予定など保育のやり方が決まっていないため、職員たち自身でアイデアを出して、一から決めていくことができるでしょう。
また、絵本やおもちゃを選んだり保育室を飾り付けたりと、自分たちの手で少しずつ保育園を形にしていく感覚を得ることができるので、開園に向けてモチベーションも高められそうですね。
保育士が新規園で働くうえで大変なこと

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新規園で保育士として働くメリットややりがいがたくさんある一方で、大変なこともあるようです。くわしく見ていきましょう。
開園前の準備が多く忙しい
新規園で働くうえで大変なこととして、オープンに向けた準備や仕事が多く忙しいということが挙げられるでしょう。
新規園はテーブルや椅子、おもちゃや絵本など、保育に必要なものを揃えるところからスタートします。
もちろん、道具や内装にかかるものだけでなく、保育マニュアルや園行事など、開園に向けて数多くの準備が必要になるため、仕事がハードになりがちかもしれません。
ただし、準備が大変な分、開園準備が終わった時の達成感は大きなものになりそうです。
オープニングスタッフは、保育園の立ち上げに携わることができる貴重な経験なので、大変さだけでなくやりがいも感じられるかもしれませんね。
前例がない
日々の保育活動において、お手本にできる前例がないという点を大変だと感じることもあるかもしれません。
自分たちでいろいろなことを決めることができる反面、おたよりの作り方や壁面装飾、行事で使う製作物など、さまざまなものを一から作らなければなりません。
前例がないことでうまく意見がまとまらなかったり、トラブルなどが発生した時に判断に困ってしまったりすることも考えられます。そのため、新規園で働く保育士には、臨機応変に対応できる力が求められそうですね。
経験がある人には負担がかかる場合も
新規園では、経験がある保育士に仕事が集まりやすいということもあるようです。
新規園のオープニングスタッフには経験者だけでなく新卒者もいるでしょう。
そうすると、長く経験を積んだ保育士さんに仕事が多く任されてしまうこともあるようです。
また、経験の浅い保育士さんへの指導を担当することもあるため、業務負担が増えてしまうかもしれません。
そのなかでも、人に頼られるのが好きな方や、指導者の経験をしてみたい方には新規園が向いていると言えそうですね。
新規園で働きたい保育士のための志望動機の書き方
ここでは、新規園に転職する際に役立つ志望動機の書き方を紹介します。
志望動機を書く時のポイント
新規園に応募するときの志望動機では、新設ならではのメリットに魅力を感じたことを伝えるといいでしょう。
たとえば、一から園を作り上げられることに魅力を感じた場合は、「まっさらな状態から少しずつ形にしていくことにやりがいや魅力を感じたため、自分の経験や知識を活かしてチャレンジしたいと考えました」といったように、新規園に適した内容を伝えることがポイントです。
また、「主任になることを目指しているので、新規園で園作りの経験をしてキャリアアップに役立てたい」など、自分のキャリアプランもあわせて話すと、将来の見通しを立てている人材として評価してもらえるかもしれません。
ただし、新設園ならではの魅力を伝えるだけではなく、きちんと園の保育理念や方針に共感している姿勢をアピールすることも大切になるでしょう。
例文
「私は、貴園の掲げる『子どもたちの個性を尊重し、豊かな心を育てる』という保育理念に共感したため応募いたしました。
これまで勤めていた園は園庭がなかったこともあり、室内での遊びがメインの活動内容でした。私は、子どもたちが外でのびのびと遊ぶことを大切にする保育をしたいと考えています。そのため、貴園のように広い園庭を持ち、子どもたちが自由に遊ぶ姿を大切にする保育に魅力を感じました。また、新しくオープンする園ということで、職員同士で協力し合い、子どもたちが過ごしやすい環境を一から作ることができるという点にも大変興味を持ちました。
理想の保育を実現するための一歩として、自身の経験を活かし園作りから携わりたいと考えております。」
新規園のオープニング求人を探すときのポイント

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開園に向けた新規園の求人を探すときのポイントを紹介します。
都心を中心に探す
オープニング求人は、エリアを都心に絞って探すといいでしょう。
新規園が増えている背景に待機児童問題が関係しているとお伝えしましたが、特に東京都を含む首都圏や、大阪などの人口が多い主要都市に待機児童が集まっているようです。
そのため、都市部を中心に新規オープンの求人を探すことで効率よく自分にあった園を見つけられるかもしれません。
前年度からこまめにチェックする
新規園は、新年度が開始する4月にあわせてオープンすることが多く、それに合わせて前年度の秋ごろから求人が増えてくるようです。
そのため、各園の採用活動が本格的になるのは、一般的な保育士求人のピーク、かつ既存園の転職市場も活発になる9月以降と言えるでしょう。
秋ごろに説明会や面接などを経て内定者が決まり、2~3月ごろには顔合わせや打ち合わせをスタートし、4月にオープン、という流れが一般的かもしれません。
新規園の求人は待遇などがいいことも多く人気が高いようなので、自身の条件に合う求人がないか、こまめにチェックしておくとよさそうです。
転職サービスを利用する
毎年保育園が新設されていることもあり、さまざまな求人のなかから園を選ぶことに迷う方もいるかもしれません。
そんなときは、転職サービスを利用してみましょう。
転職サービスを利用すれば、自身の希望の条件をアドバイザーに伝えるだけで、条件に合ったおすすめの求人を探してくれます。
また、転職活動のさまざまな不安なども相談できるほか、履歴書や面接対策などをしてくれることもあるようです。
新規園に転職したい場合、公開されている園の情報が少なく判断に困ってしまうこともあるかもしれないので、転職サービスを利用することを検討してみるのもよさそうですね。
出典:保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」を公表します/厚生労働省
新規園で働く魅力を知って、保育士求人を探してみよう
今回は、新規園の特徴や、働くうえでのメリットと大変なことなどを紹介しました。
新規園は、待機児童の解消を図る目的で設置され、その数は年々増えています。
もちろん保育園数が増えるだけでは待機児童問題の解決にはなりませんが、重要な一翼を担っている存在と言えるでしょう。
新規園で保育士として働くことには、新しい環境で一からの人間関係を築くことができたり、園を作り上げるやりがいを感じることができたりするというメリットがあるようです。
その一方で、仕事量が多く忙しかったり、ときには対応力を求められたりとハードな面もあるかもしれません。ただ、大変なことが多い分、開園した時の達成感は大きなものとなりそうですね。
働くうえでのメリットや大変なことをふまえ、保育園の立ち上げという貴重な経験を積める新規園で働いてみてはいかがでしょうか。