保護者と保育園の関係の中で重要な「保育料」ですが、保育士としては普段直接受け取ることがなく、仕組みも複雑。
実はよくわかっていない方も多いのではないでしょうか。
保護者としては毎月の対価として支払っているもの。
理解した上で普段の保育にあたっていくことも重要です。
ここでは基本的な仕組みを見ていきましょう。
保育料・利用者負担とは
〇保育料利用者負担って?
保育にかかる費用(人件費、事業費、管理費など)を保護者など(子どもと同一世帯に属して生計を一にしている父母及び扶養義務者)の所得に応じて住んでいる市町村が決定する、保育所や幼稚園などを利用した負担額を利用者が負担することです。
世帯の所得の状況やその他の事情を考えて定めることとされており、現行の幼稚園・保育所の利用者負担の水準を基に国が定める水準を限度として、実施主体である市町村が定めることとなっています。
平成27年4月より、子ども子育て支援新制度が施行されたことにより、名称が保育料→利用者負担となっています。
〇保育料・利用者負担額の仕組み
・利用者負担額は市・町・村民税によって決まります。
旧制度(平成27年3月分まで)の保育料は、源泉徴収票などの資料を基に、世帯の「所得税額」を基準として決定されていました。
平成27年度以降は、世帯の市町村民税額の「均等割額」や「所得割額」を基準として決定されます。
・毎年の所得の状況に応じて、9月に金額の見直しを行うため、年度の途中で負担額が変更することもあります。
4月分~8月分は前年度の所得に応じて決められ、9月分から翌年3月分までは、当年度の所得に応じて決められることとなります。
・保育の必要時間に応じて「保育標準時間」と「保育短時間」とに区分されています。
・認定こども園や小規模保育事業などを利用している場合は、施設や事業所へ直接利用者負担額支払うことになっています。
(保育所(公立・民間)を利用している場合は、これまで通り住んでいる市町村に支払う形になります)市町村が定めることにより、国が定める階層よりも細分化した階層区分を設定しやすく、制度の改正による影響の緩和も期待されています。
〇保育料・利用者負担の軽減について
1)母子世帯、父子世帯、在宅障がい児(者)を有する世帯などに該当していると認定された場合、保育料の一部を軽減されます。
軽減の対象となるのは、上記の認定がされている世帯のうち、1号認定子どもの保育料表中の第2~3階層、2号・3号認定子どもについては、第2~7階層に該当した世帯となっています。
※ただし、母子・父子・在宅障がい児(者)の有する世帯等に該当するかどうかには、一定の条件があるため、詳細は市町村の担当窓口まで問い合わせる必要があります。
2)1号認定子どもの多子軽減
年少(3歳児)~小学校3年生までの範囲内に子どもが2人以上いる場合、その中で最も年齢の高い子どもを第1子、次に年齢の高い子どもを第2子と計算します。
第1子は保育料表の全額負担となりますが、第2子は半額、第3子は無料となります。
3)2号・3号認定子どもの多子軽減
小学校就学前の範囲内で、保育所(園)、幼稚園、認定こども園等の施設を利用している子どもが2人以上いる場合、その中で最も年齢の高い子どもを第1子、次に年齢の高い子どもを第2子と計算します。
第1子は保育料表の全額負担となりますが、第2子は半額、第3子は無料となります。
保育料・公定価格とは
〇公定価格とは?
1号・2号・3号の認定区分や保育必要量、施設の所在地などを基にして、 施設を運営するために必要となる費用を計算した上で、国(内閣総理大臣)が定める基準によって最終的に算定されています。
(子ども・子育て支援法27条3項1号、29条3項1号などより)
ここで言う保育必要量とは、月を単位として内閣府令で定める期間において施設型給付費等を支給する保育の量となります。
また、施設の運営に必要な費用の計算にあたっては、施設毎の職員配置基準などを基にした人件費・事業費・管理費などの運営にかかるコストも考慮して検討されています。
施設に払われる費用の基本額としては、園児一人当たりの単価を決めた上で、施設毎の状況に応じての加算となるので違いが出てくるという構成になっています。
基本額については、
・園児の設定区分や年齢
・保育必要量
・地域区分別
・利用定員別で要素としたものと人件費や事業費
・管理費などを要素とした2つの共通した要素
について検討されています。
〇公定価格の設定のための手続き
公定価格は、施設型給付費・地域型保育給付費の対象となっている教育・保育、地域型保育にかかる費用の額を計算するための基準であるため内閣総理大臣が定めることとされています。
その際には、文部科学大臣や厚生労働大臣と協議していくとともに、子ども・子育て会議の意見を聴かなければいけないこととされています。
(子ども・子育て支援法27条4項、29条4項などより)
〇給付費などの種類
1)施設型給付費:特定教育・保育施設(認定こども園、幼稚園、保育所)を利用する1号認定子ども~3号認定子どもに対応しています。
2)特例施設型給付費:緊急時の償還払いや地域に認定区分に対応している施設がない場合などに市町村が必要と認める場合に対応しています。
3)地域型保育給付費:3号認定子どもに対応しています。
4)特例地域型保育給付費:緊急時の償還払いや地域の認定区分に対応している施設がない場合など、市町村が必要と認める場合に対応しています。
これらの4種類の給付費を設定した上で、2号認定の子どもや3号認定の子どもについては、「保育の必要量」において2区分(長時間、短時間)を設けており、これに対応する公定価格を設定することが必要とされています。
保育料について正しく知って、保護者の負担も理解しておこう!
保護者と保育園の関係の中で重要な「保育料」のこと、理解できましたか?保育士としては普段直接受け取ることのないお金ではありますが、保護者としては毎月の対価として支払っているもの。
理解した上で保育にあたっていくことも重要です。
基本的な仕組みは知っておきましょう。