保育士の求人を探すときに、園庭の有り・無しはどのぐらいの優先順位で見ていますか?待機児童の解消に向けて新規園が増えている近年。オフィスビルやマンションの1階部分などに設置された、園庭のない保育園が増えています。お散歩の手間やリスクが少なく、子どもをのびのび遊ばせられる園庭付きの園で働くことは、転職を考えている保育士さんにはぜひ重要視してほしい求人条件の一つです。園庭の役割や設備についておさらいしながら、園庭がある園で働くことのメリットについて解説していきます。
園庭についておさらい
まず、保育園の園庭とはどういった目的で作られたものなのでしょうか。バリエーション豊富な園庭の設備内容についてもまとめてみました。
園庭の役割
園庭の役割は主に下記の4つがあります。
(1)自然や虫、飼育動物とのふれあいの場
(2)サッカーや鬼ごっこなどの遊びができる運動場
(3)ブランコ、すべり台などの固定遊具の遊び場
(4)砂場、築山、水場など、友達とのイメージを広げてさまざまな表現遊びやごっこ遊びができる場
園庭は日当たりがよく風通しのよい立地で、日を遮る木陰などの場所も必要です。防火性、防犯性など安全性の確保を考慮して計画し、環境をつくっていくことが重要のようです。
また園庭は、ただ子どもが遊べる広い場所があれば良いというわけではなく、さまざまな観点から子どもの発達に適した環境がそろったところです。自然とふれ合ったり、遊具や砂場を使って自ら遊びを考えたり、子ども同士のコミュニケーションを育むなど、園庭を舞台に子どもたちも成長していきます。
園庭の設備
園庭の設備には、たくさんのバリエーションがあります。砂遊び場、遊具、水道、花壇をはじめ、可動式水遊び場、菜園、築山、斜面などといった設備が考えられます。他にも、摘んでもOKな草花がある場所や木登りできる木を設置したり、動物を飼ったりという環境も、園庭の設備として挙げられます。
東京都内の園庭実情
現在、新しい保育園の開設が相次いでいる東京都内の保育園の園庭事情について調べてみました。
都内ではどのくらい園庭がある?
2017年の「100都市保育力充実度チェック」によると、東京都内23区の認可保育園の園庭保有率は平均で約51.2%。およそ半分の保育園は自前の園庭をもっていません。
23区内で、認可保育園の園庭保有率が最も高いのは足立区(83.3%)、次いで北区(75.3%)、板橋区(74.1%)となっています。反対に保有率が最も低いのは文京区(18.3%)、次に港区(24.1%)、中央区(27.9%)となっています。
園庭の設備に差が
東京大学大学院教育学研究科の調査によると、園庭の設備環境にも差があるという結果がで出ています。園庭のある園も、園庭がなく公園などで代用している園も合わせると、園庭の基本的な設備…砂遊び場や固定遊具、水道、菜園などについては、8割以上の高い設置率でした。反対に、築山や斜面、水路や池、飼育動物がいる環境を備えている園はどちらも半数以下でした。
園庭がある園のメリット
園庭がある園には、子どもたちの成長にはもちろん、保育士さんにもたくさんのメリットがあります。
遊びを通して学べる
遊びは乳幼児期の子どもにとって学習の基礎で、他では補うことができない重要な要素とも言われています。自然にふれることで四季を感じたり、虫を発見したり、砂場や遊具の設備がある中で子ども同士で遊びを考えたり、遊びを通してコミュニケーションの取り方を学んだりと、室内とは違う環境下での遊びを通して、たくさんの学びを得ることができます。
また、そういったことを子どもに身につけてほしいという保育観を持っている方であれば、理想の保育を実践しやすい環境ですね。
お散歩の手間がない
園庭があればお散歩に出かける手間をかけることなく、気軽に屋外に出て遊ぶことができます。お散歩に行くとなると、保育士さんたちは子どもたちを守るためにさまざまなことに気をつけなければなりません。
例えば、公園に着くまでに子どもたちが安全に歩ける道はあるか、設置されている遊具は安全か、トイレはあるかなど、チェックすべきことがたくさんあります。お散歩中も車に気をつけたり、危ないものがないか注意して見たり、また、子どもたちが周辺に迷惑をかけないようにと見守らなければなりません。
お散歩は、近所の人とのコミュニケーションを図ったり、子どもが社会と触れる機会になり、保育にとって大切な日常ですが、こうした労力や安全性を考えると、園庭があることのメリットは大きいと言えます。
園庭は公園に比べて安全
保育園でもセキュリティ面が強化されている昨今で、園外の人も自由に出入り可能な公園で子どもたちを遊ばせることは、100%安全とは言い切れません。
また、地面にガラスなどの危ないものが落ちている可能性もあるので、保育士さんたちは常に目を見張らなければなりません。その点自園の園庭には園内の人しかいない上に、環境の管理もしやすいので、安全な空間を保ちながら安心して子どもたちを遊ばせることができます。
運動量が増える
早稲田大学の調査では、園庭の有無によって、通っている園児の運動量に差がでるということが明らかになっています。園庭のある園では約6300歩/1日、園庭のない園では約5000歩/1日と、約1000歩/1日もの差がでるようです。運動量が増えることで子どもの健康な体作りや、体力増進にも良い影響を与えるでしょう。
昨今ではボール遊び禁止の公園があったり、ゲームやスマートフォンの影響で子どもの運動離れが進んでいると、文部科学省は指摘しています。これにより反射神経が発達しにくくなり、ケガのリスクが高まるようです。
こういったことを防ぐために、運動遊びを日常的に取り入れて反射神経を育て、ケガの危険に対してすぐに反応できることが大切です。こうした発達のほとんどが3~8歳の間に行われるため、園庭によって運動量が増えることは大きなメリットと言えます。
園庭がある園のデメリット
園庭があればいいことづくめのようにも思えますが、実はこんなデメリットもあります。
環境の維持が大変な場合も
園庭には草木や花などの自然があるので、その手入れが大変な場合もあります。例えば、草むしりや、水やり、植え替えなどの作業が必要な場合、自分の仕事だけで十分忙しい保育士さんの仕事がさらに増えてしまいます。
専門の業者にお願いしたり、保護者にボランティアとして手入れ作業をお願いしている園も多いので、職員だけで手に負えないときには、手を借りるのも一つの手段です。
泥で汚れる
保育士さん自ら手入れ作業をする場合、泥で汚れたり、虫に遭遇したりということもあるでしょう。衣服や靴、手が汚れたり、虫に会ったりということも考えられるので、そういったことが苦手な保育士さんには少々つらいかもしれません。
園庭のない園の工夫
園庭を持っていない園では、それを補うための工夫をしています。
室内での運動遊び
園内のお遊戯室などの広い部屋を使って、体を動かす活動を取り入れています。例えば、外部から講師を招いて体操教室を行ったり、室内でのレクリエーションを行ったりという工夫をして、子どもたちが体を動かせる機会を作っています。
公園への散歩
園庭のない園では、日常保育の中に積極的にお散歩を取り入れています。子どもの安全を守るために気をつけるべき点は多いですが、園庭がないことを補えるように保育士さんは努力をしています。
園庭開放に遊びに行くことも
近隣の園や、系列の園の園開放に遊びに行くことで、園庭がないという点を補うことにつながるでしょう。園開放であればある程度の安全は確保できますし、園児向けの遊具がそろっているので、子どもたちにとっても体を動かし、遊びで学びを得る良い機会になります。
園庭のある園でお仕事を探してみませんか?
園庭のない園は、子どもへの目が届きやすく、小規模なので子どもに対して細やかな保育をすることができます。しかし、外で体を動かすことによって得られるさまざまな可能性を妨げてしまうことにもつながりかねません。園庭でしか得られない学びや発見のサポートができるのも、園庭を持つ園で働く保育士さんの醍醐味ではないでしょうか。
もし今の職場での悩みが、体力的にきついということであれば、「園庭あり」の保育園に転職することで少しでも解決につながるかもしれません。見落としがちな「園庭あり」の求人条件ですが、ぜひ園庭の有無にも目を配って求人を探して、より良い転職をかなえてくださいね。
出典:保育園を考える親の会「100都市保育力充実度チェック 2017年度版」