園で保育士さんが実演することが多いエプロンシアター。そもそもエプロンシアターとは何なのでしょうか?このコラムではエプロンシアターの大枠の説明から、指導案を考えるうえでのねらい、シアターの作り方、絵本や歌などお話にしやすいテーマの種類や選び方を解説して、エプロンシアターについて掘り下げていきたいと思います。
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エプロンシアターとは?
まずはエプロンシアターとはそもそも何なのか、その特徴やねらいについてみていきましょう。
エプロンを使った人形劇「エプロンシアター」
エプロンシアターは簡単に言えば、エプロンを使った人形劇。保育士のエプロンを舞台にして、フェルトで作った人形などを動かして劇を上演します。
エプロンの上でお話が繰り広げられるということで、普段とは違う保育士の出し物に子どもたちも珍しさから興味を持ってくれることも多いでしょう。保育士が子どもと向き合っていることもあり、表情や声で物語がより伝わりやすくなるという特徴があります。
その他にも読み聞かせとは違い、人形を使ってやるため子どもたちも想像しやすいこと、劇というスタイルのため子どもとの交流やアドリブがしやすいこと、エプロンの装飾やポケットを利用した仕掛けで子どもが楽しみやすいこと、などがあげられます。
エプロンシアターのねらい
エプロンシアターをするときや指導案にエプロンシアターを盛り込むときには、どのようなねらいを持って保育に取り入れればよいのでしょうか。エプロンシアターのねらいの具体例を紹介していきましょう。
・保育士のエプロンシアターを集中して聞き、物語の世界を楽しむ
・劇中の歌や掛け合いを通して、保育士や友だちとのやりとりを楽しむ
・季節の行事のエプロンシアターで行事や季節、文化に対する興味をもつ
・エプロンシアターを通して身の回りの生活習慣に気づき、自立や基本的生活習慣の確立へとつなげる
・数か月後に控えたイベントをテーマにして、子どもが行事について期待感を持てるようにする
などが主なねらいの具体例でしょう。
エプロンシアターは絵本のように物語の世界を楽しむと同時に、静かにお話を聞く、集中して聞くなどのねらいを設定する場合があるほかにも、季節の行事やイベントの導入、食育や手洗い指導にもつなげることができるでしょう。
達成したいねらいを設定することで、エプロンシアターの内容もそれにふさわしいものになるといいですね。
エプロンシアターの作り方
実際にエプロンシアターを作る場合はどのような流れで作っていくといいのでしょうか。エプロンシアターの簡単な作り方の流れを紹介していきます。
ねらいを決める
まずは、エプロンシアターのねらいを決めましょう。どのような目的でエプロンシアターを上演するかによってその内容や扱うべきテーマは大きく変わってきます。
エプロンシアターによって子どもたちに何を学んでほしいのか、どのような楽しみ方をしてほしいのか、何を導入するのかなどの計画を練って、エプロンシアターづくりに取り組むといいでしょう。
テーマを決める
エプロンシアターで上演するテーマを決めましょう。テーマは絵本や昔話でもいいですし、もちろんオリジナルのストーリーを考えてもいいでしょう。特にエプロンシアターの、エプロンの上でやるという特徴や人形や仕掛けを使った演出を活かせるテーマがよさそうです。
エプロンシアターに取り入れたい仕掛けや、見せ場を考える
エプロンにはポケットがあったり、ものによってはマジックテープを貼って人形をくっつけておけるなど、保育士の仕事道具である一方で、加工しやすいという特徴があります。こうしたエプロンの特性を利用して、思わぬところからキャラクターが飛び出す仕掛けを作ったりすると、子どもが予想外の人形の登場を楽しめますね。
また、エプロンは大きな舞台。その背景や場面設定も重要になってきます。見せ場をあらかじめ考えておくと、背景としてのエプロンの加工も考えやすいでしょう。
エプロンや人形を作る
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次に、エプロンを加工したり、人形を作りましょう。エプロンシアターは布やフェルト、綿などの子どもになじみのある素材を使うといいでしょう。
エプロンに柔らかい素材のものを選び、人形の裏にマジックテープを貼っておけば、動いていないキャラクターをエプロンの上に留めておけますね。
既製品を利用する
エプロンシアターにはさまざまなねらいやテーマに合った既製品が販売されています。こうした既製品は物語の内容やキットがひとまとめになっており、新人の保育士さんや裁縫が苦手な方でも作りやすいものが多いです。園の方針によって使用できるかどうかは異なりますが、エプロンシアターをやりたいと考えている方は、こうした既製品の利用も考えてみてはいかがでしょうか。
エプロンシアターのテーマ選び
エプロンシアターの題材に使うものの種類や、テーマを選びのポイントをまとめました。
絵本や昔話
絵本や昔話をテーマにするのは定番の方法です。いつもの絵本や昔話をエプロンの上で上演してみましょう。普段とは一味違った演出や、仕掛けがあるといいですね。
また、絵本や昔話は子どもは何度も聞いていることが多いもの。そうした場合は所々にアレンジをしてみたり、アドリブでちょっと話を変わった方向へもっていったりなどの工夫をするのもよいでしょう。
歌を中心にする
歌を劇中にみんなで歌うことを想定して、物語を考えてもいいかもしれませんね。童謡などの歌はシンプルなものも多い一方、昔の言葉遣いをつかっていたり、子どもがまだ知らない言葉も使われている場合があります。
それをエプロンシアターで具体的な場面にしてあげることで、いつも歌っている歌とは違う楽しさを見つけられるでしょう。
行事や季節のテーマを使う
行事や季節のテーマを使うのもいいでしょう。お泊り保育が控えている場合は、子どもがお泊り保育について考えるきっかけをつくりましょう。
また、七夕の導入としてエプロンシアターで織姫と彦星の物語を上演してあげると、子どもがより七夕の意味を理解することができるでしょう。
冬なら、風邪予防の導入として手洗い、うがい、風邪を中心にした物語を考えるのもよいですね。
ここまで絵本や歌、イベントなどのテーマになりそうなものを見てきましたが、いずれの場合も、エプロンシアターで達成したいねらいを忘れないように心がけて製作するようにしてくださいね。
エプロンシアターを成功させるために
エプロンシアターもせっかくなら子どもに喜んでもらい成功させたいもの。ここでは保育士さんがエプロンシアターを成功させるためにするべきことを紹介していきます。
練習をしっかりと
練習をしっかりとすることは重要です。エプロンシアターは絵本とは違い、保育士が人形などを動かして物語を進めなくてはなりません。1人でやる場合も多く、仕掛けの出し方、間の取り方や話し方も子どもが楽しむためには大事な要素です。
同僚や先輩に見てもらってアドバイスをもらってもいいですね。あまり読むことのない絵本や物語にした場合は、子どもには見えないところにカンペを用意してもいいでしょう。子どもが楽しめるように十分練習、準備して臨むようにしましょう。
表情、声、動きにはメリハリをつけて
エプロンの上でやるということで、子どもの顔が見える位置、保育士が中心となって子どもと直接対面するような体制で劇を進めていきます。顔が子どもと近く、声も届きやすいでしょう。紙芝居を読むように、声や表情にもメリハリをつけて子どもが楽しめるようにしましょう。
また人形の動きも大きく動くと、物語がエプロンの狭い世界を飛び出していくようで楽しいですね。
子どもの様子をみてアドリブ
子どもの顔もよく見ることができるのがエプロンシアターの特徴ですから、子どもの様子を見てアドリブを入れてもいいですね。保育士が1人で動かすことも多いため、物語の内容を多少変えても問題ありません。
その分、子どもとの掛け合いを楽しんだり、アドリブを入れて子どもが楽しめるように工夫してみましょう。
エプロンシアターで楽しい時間を
エプロンシアターは、普段の読み聞かせとは違うエプロンの上で上映される劇ということでさまざまな特徴や、それによって達成できるねらいがあります。
作り方は簡単とは一概には簡単とは言えませんが、さまざまな工夫を凝らすことができるため、子どもも喜んでくれるでしょう。
テーマやねらいをよく考えてエプロンシアターを成功させましょう。