家賃補助の一環として採用されている借り上げ社宅制度。住居にかかる費用を抑えて生活したい保育士さんは、借り上げ社宅制度を取り入れている園を転職先に選ぶとよいでしょう。今回は、保育士さん向けの借り上げ社宅制度について、同棲や結婚している場合の利用条件や、いつまで使えるのかなどを紹介します。

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■目次
保育士が利用できる「借り上げ社宅制度」とは?
借り上げ社宅制度とは、企業などの事業者が物件を借り上げ、従業員に対して価格を抑えて貸し出す制度です。
一般的な企業では福利厚生の一環として導入される場合が多く、保育業界では「保育士宿舎借り上げ支援事業」に基づいて市区町村ごとに行われています。
この保育士宿舎借り上げ支援事業とは、事業者が保育士用の宿舎を借り上げるための費用に対し、自治体が補助を行う事業です。では、事業の実施目的や概要を見ていきましょう。
目的
保育士宿舎借り上げ支援事業は、保育士さんにとって働きやすい環境を整備することを目的として実施されています。
地方から上京してきたり一人暮らしをしたりする保育士さんを支援し、定着させるための対策として進められている事業です。
概要
対象者
2022年時点で保育士宿舎借り上げ支援事業を利用できるのは、「採用された日から起算して9年以内の常勤の保育士」と定められています。(※2020年度までは、「採用された日から起算して10年以内の常勤の保育士」となっていました。)
ただし、市区町村の待機児童数や有効求人倍率によっては5年以内となる場合もあるので、対象者に当てはまるのか事前に確認しておきましょう。
補助基準額
補助金額は、全国一律で月額8万2000円が上限とされています。
しかし、地域の実勢に合わせ、市区町村別に1人当たりの上限金額を設定することとなっています。
実施主体
保育士宿舎借り上げ支援事業を実施しているのは、新子育て安心プランに参加する市区町村です。
全国すべての自治体で行われているわけではないため、厚生労働省の資料より勤め先の園が設置されている市区町村で実施されているのか確認しておきましょう。
出典:各市区町村の「新子育て安心プラン実施計画」(令和3年度)/厚生労働省
保育士の借り上げ社宅制度は住宅手当とどう違う?

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保育士さんが受けられる住宅補助の一つ、住宅手当。
借り上げ社宅制度と同様に住宅にかかる費用の一部を保育所側が負担してくれるものですが、支給方法と所得税がかかるかどうかについて違いがあります。
まず、住宅手当は保育士さんの基本給に手当として加える形で支給されるのが一般的です。一方借り上げ社宅制度の場合、家賃の自己負担額は給与から天引きされるようになっています。
また、住宅手当は給与に含まれる形で支給されるため、所得税の課税対象となります。一方借り上げ社宅制度の場合給与から天引きされるため、補助金額に所得税がかかりません。
他にも、住宅手当は保育園が独自で行う福利厚生の一環であるため、経営状態によっては突如なくなる可能性もあります。
その反面、借り上げ社宅制度は国主導で自治体ごとに行われているため、いつまで補助を受けられるのか見通しをつけやすいという違いもありますね。
保育士が借り上げ社宅制度を利用するメリット

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保育士さんが借り上げ社宅制度を利用するうえで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
引っ越しの負担を軽減できる
借り上げ社宅制度を利用する場合、あらかじめ決められた物件のなかから住居を選ぶことができます。
そのため、部屋探しのために不動産屋さんに行ったり内見をしたりする必要がありません。
引っ越し準備で忙しい中、部屋探しをせずに済むのは負担軽減になるでしょう。
初期費用や更新料がかからない
個人契約した物件の場合、家賃のほかに敷金・礼金などの初期費用、契約した物件の更新料などの諸費用を支払う必要があるでしょう。
しかし借り上げ社宅制度では保育所が物件の契約者となるため、保育士さんは初期費用や更新料を支払わずに済みます。
個人契約するよりも家賃負担が軽い
自身で直接物件を契約するより家賃負担を大幅にカットできるのも、借り上げ社宅制度を利用するメリットと言えるでしょう。
補助金額は自治体によって異なるものの、借り上げ社宅制度を利用すれば、自己負担が家賃の1割~2割程度で済む場合もあるようです。
また、市区町村の借り上げ社宅制度を採用しつつ、園独自の住宅補助も行っている園もあります。そういった園に勤めれば、ほぼ家賃を負担せずに生活できる可能性もありそうですね。
住宅手当より税負担を抑えられる
借り上げ社宅制度のメリットとして、住宅手当を受けるよりも税負担を軽減できることが挙げられます。
先ほど説明したように、住宅手当は給料として支払われるため所得税の課税対象となりますが、借り上げ社宅制度は給料として支払われないため、税金を支払う必要がありません。
同じ金額の補助を受けた場合に住宅手当より支出を抑えられるのは、借り上げ社宅制度を利用するメリットと言えるでしょう。
保育士が借り上げ社宅制度を利用するデメリット

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保育士さんが借り上げ社宅制度を利用するうえで知っておきたいデメリットをまとめました。
選べる物件が限られている
借り上げ社宅制度を利用するデメリットとして、選べる物件が限られていることが挙げられます。
社員寮と比べれば自由度は高いようですが、希望するエリアとは異なる地域の物件しかない可能性もあるでしょう。
そのため、こだわって部屋探しをしたい方にとってはマイナスポイントになるかもしれません。
仕事とプライベートのオンオフをつけにくい
保育所が借り上げる物件は、園から近く通勤しやすい場所にあるケースが多いため、通勤にかかる負担が少ないでしょう。
その反面、同僚の部屋が近かったり、街中で園に通う子どもや保護者と会ったりする可能性もあります。
仕事とプライベートをきっちり分けたい方にとって、オンオフがつきにくいのはデメリットと言えるでしょう。
退職すると住めなくなることも
借り上げ社宅制度は、借り上げている保育所に勤める保育士さんのみ利用できる場合がほとんど。そのため、退職とともに物件を退去しなければならないケースが多いようです。
退職後に個人契約に切り替えれば住み続けられる場合もあるようですが、すべて自己負担となるため、家賃の支払いが難しくなることも考えられます。
借り上げ社宅制度を利用するときは、退職後の住居についても考えたうえで検討するとよいでしょう。
園によっては対象者が限られるケースも
先述したように、2022年時点では原則採用日から9年以内の常勤保育士さん(※パートも含む)が対象となっています。しかし、なかには園が独自に入居条件を設けているケースもあるかもしれません。
例えば、「現住所から園まで〇km以内はNG」「週に〇日・〇時間以上勤務する保育士のみ」などが考えられます。また、産休・育休や休職中の取扱いについても要確認です。
多くの場合求人には「規定あり」などの文言しか書かれていないため、対象者に該当するか気になる場合は園側に聞いておくとよいでしょう。
直接尋ねづらい場合は、転職エージェントに仲介してもらって確認するとよいですね。
保育士が借り上げ社宅制度を利用する際の注意点

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ここでは、保育士さんが借り上げ社宅制度を利用するときの注意点をまとめました。
いつまで利用できるか確認する
借り上げ社宅制度がいつまで実施されるのか調べておきましょう。
保育士さんの確保や定着を図る目的で開始されたため、人材が充足している地域では制度自体がなくなる可能性も考えられます。
2022年時点では実施が決まっていますが、いつまで継続するのかは発表されていません。
自治体や厚生労働省のホームページなどを確認したうえで、なくなる可能性も考慮しながら計画的に住宅選びを行うとよいですね。
結婚や同棲の場合についての規定を確認する
結婚、あるいは同棲している場合の規定を確認しましょう。
単身者に限定せず、結婚や同棲している場合も対象者に含んでいる自治体が多いようですが、なかには園が独自に規定を設けているケースもあるかもしれません。
求人票には、借り上げ社宅制度の利用条件について詳細に記載されていない場合がほとんどです。
園見学や面接の際に直接尋ねたり、聞きづらい場合は転職エージェントを介して質問したりするとよいですね。
転職エージェントを利用すれば、求人票だけでは分からない園の情報を聞くことができるので、うまく活用してみましょう。
保育士の借り上げ社宅制度について知り、転職先選びに活かそう
今回は、保育士さんが利用できる借り上げ社宅制度について、利用するときの注意点やメリット・デメリットなどを紹介しました。
借り上げ社宅制度とは、保育人材の確保を目的として自治体ごとに実施される「保育士宿舎借り上げ支援事業」に基づいた制度です。
保育士さんにとってさまざまなメリットがありますが、いつまで制度が続くのか、結婚や同棲、産休中なども対象になるのかなど、利用に際して細かく確認しておくことが大切になります。
今回紹介した借り上げ社宅制度のメリットやデメリットなどをふまえ、転職する際の園選びに役立ててみてくださいね。
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