幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、またタイミングや手続きのしかたを知りたい方もいるかもしれません。教員免許には有効期限が定められているため、いつまで使用できるのか、また対象者などを知っておくとよいでしょう。今回は、幼稚園教諭免許の更新について、手続き方法や期限切れした場合の対処法などをまとめました。

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■目次
幼稚園教諭免許更新の必要性
幼稚園教諭や保育教諭になるために必要な幼稚園教諭免許。
2009年4月1日に導入された教員免許更新制によって、幼稚園教諭免許を含む教員免許の更新が必要になりました。
教員免許更新制には、時代ごとに教育の在り方も変わっていくなかで、教員として求められる資質や能力を保持できるように、定期的に知識や技能をアップデートするという目的があります。
そして、最新の知識を身につけた教員が誇りをもって仕事にあたり、社会的な信頼を得ることを目指しています。
つまり、幼稚園教諭免許を更新することは、幼稚園教諭や保育教諭が子どもに対して、常に時代に即した新しい教育を行うために大切と言えるでしょう。
よりよい教育や保育を行うためにも、きちんと幼稚園教諭免許を更新することが重要になりますね。
幼稚園教諭免許の更新前に確認すべきこと
幼稚園教諭免許を更新するためには、更新講習を受講する必要があります。
まずは、更新講習の申し込みをする前に確認しておきたい、2つの項目を紹介します。
有効期間(修了確認期限)
まずは、自身の幼稚園教諭免許の有効期間(修了確認期限)をチェックし、いつまでに講習を修了すればいいのかを把握しましょう。
教員免許更新制の導入後に授与された新免許状と、導入前に授与された旧免許状によって期限が異なるので、くわしく解説します。
新免許状(2009年4月1日以降)を持っている場合
教員免許更新制の導入後に授与された新免許状には、10年間の有効期間が定められています。
過去に更新や延長の手続きをしていない場合は、幼稚園教諭免許状の裏に「有効期間満了の日」が記載されています。
また、今までに更新や延長をしたことがある場合は、手続きの際に発行された証明書に「有効期間満了の日」が記載されているので、いつまでに更新すればよいのか確認しておきましょう。
旧免許状(2009年3月31日以前)を持っている場合
教員免許更新制の導入前に授与された旧免許状には、有効期間は定められていません。
今までに更新手続きをしたことがある場合は、前回発行された証明書に次回の修了確認期限が記されています。
また、これまで更新手続きをしたことがない場合は、生年月日によって「最初の修了確認期限」が割り振られているので、文部科学省の「修了確認期限をチェック」を確認してみてくださいね。
受講対象者
幼稚園教諭免許状の有効期間や修了確認期限をチェックしたら、更新講習の受講対象者になっているかを確認しましょう。
受講対象者に該当していなければ講習を受けることはできないので、事前に知っておくことが大切です。
新免許状と旧免許状で共通の対象者
幼稚園教諭免許の更新講習の受講対象者は、普通免許状または特別免許状を持ち、以下に該当する方です。

また、今後教員になる可能性が高い者として、以下の方も更新講習を受講することができます。

旧免許状所持者の受講対象者のうち、①、③、④、⑥に当てはまる方は、「受講義務者」と言って更新講習の受講が義務付けられている方になります。
自身は受講対象者なのか、あるいは受講義務者なのかをきちんと把握しておきましょう。
講習の受講対象者となる保育士
先ほど紹介した受講対象者の⑩から⑫にある通り、幼稚園教諭免許を持つ保育士さんも更新講習を受けることができます。
くわしい勤務先や雇用形態ごとの対象の有無については、以下の表のとおりです。

受講義務者に該当している場合、所定の期間内に更新手続きを行わなければ免許状が失効します。
一方受講対象者に該当する場合、受講義務はないものの、更新を希望する方は講習を受けることができます。
幼稚園や保育所等で「補助」または「支援員」として働いている方は、教諭などの教育職員として勤務している場合と、校長や園長などの教育の職にある場合は、免許状を更新する義務があります。
自身が「教育職員」に該当するかどうか不安な方は、勤めている園の管理職の方に確認してみるとよいでしょう。
また、「認可外保育施設」「小規模保育施設」「事業所内保育施設」に勤務している保育士さんは、⑧に該当しない限り受講対象者ではありません。
幼稚園教諭免許の更新手続き方法

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幼稚園教諭免許の更新期限や受講対象者を確認したうえで、免許状を更新するために必要となる手続き方法を、手順に沿って解説します。
1.更新講習を選んで申し込む
まずは、受講する更新講習を自身で選んで申し込みましょう。
講習の選択
文部科学省の「令和3年度 免許状更新講習の認定一覧(令和3年1月現在)」には、更新講習を実施している認定大学の情報が掲載されています。ホームページや講習内容などを参考にしながら、受講したい講習を選ぶとよいでしょう。
講習内容は大学によって異なりますが、教育の最新事情や学校をめぐる近年の状況の変化、道徳教育や国際理解などといったテーマが主に取り扱われているようです。
講習の申し込み・費用
更新講習を受講する際は、受けたい講座を開講している大学に対し、各自で直接申し込みをするのが一般的です。
講習のタイプは対面式講習とオンラインによる通信式講習の2種類があり、自分に合った方法を選ぶことができます。
オンラインを利用すれば、大学まで足を運ぶことなく更新講習を受けられるので、まとまった時間を取りづらい方は検討してみてもよいかもしれません。
また、更新講習を受講するためには費用がかかります。
おおむね3万円前後が相場のようで、すべて受講者の自己負担となります。
講習にかかる費用は一律ではなく開設者ごとに設定されているため、受講前にきちんと確認しておきましょう。
2.更新講習を受講
更新講習には3つの領域があり、幼稚園教諭免許を更新するためには、これらの講習を合計30時間以上受講する必要があります。くわしい内容を1つずつ見ていきましょう。
必修領域:6時間以上
必修領域は、免許状の種類に関係なくすべての受講者が受講する共通の講習で、6時間以上受講することが求められています。
- 国の教育政策や世界の教育の動向
- 子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)
- 子どもの生活の変化を踏まえた課題
必修領域は、以上の事柄を網羅した内容の講習となっています。
選択必修領域:6時間以上
選択必修領域は、自身の免許状の種類や勤務する学校の種類、または教育職員としての経験に応じて選択し受講するもので、6時間以上受講することが決められています。

上記のうち、1つあるいは2つの内容についての講習が開設されることとなっています。
選択領域:18時間以上
選択領域の講習は、対象職種(教諭・養護教諭・栄養教諭)に応じたものを受講・修了する必要があります。ただし、受講者が任意に選択して受講することができるようです。
講習は「幼児、児童又は生徒に対する教科指導及び生徒指導上の課題」についての内容を扱い、18時間以上受講することが求められています。
このように、幼稚園教諭免許の更新講習は3領域に分かれており、共通内容もあれば自身で選択して受講できるものもあります。
また、更新講習をいつ受講するのかは、自身で決めることができます。
基本的に長期休業期間や土曜日・日曜日に開講されることが多いので、平日なかなか時間を取れない場合でも安心して対応できますね。
しかし、有効期間満了の日、あるいは修了確認期限の2年2カ月前から2カ月前までの2年間が、更新講習を受講できる期間となっているので注意が必要です。
3.免許管理者への申請
幼稚園教諭免許の更新講習を修了すると、各大学等から修了証明書(履修証明書)が発行されます。
修了証明書や必要な書類をまとめて、免許管理者へ提出しましょう。
免許管理者は、現職教員の場合は勤務地が所在する都道府県の教育委員会となり、保育士さんを含む現職教員以外の場合は、住所地の都道府県教育委員会になります。
免許管理者に更新講習修了確認の申請を行い、認められると免許状が更新されて、更新講習修了確認証明書または有効期間更新証明書が届きます。
新しい免許状が発行されるわけではないので、次回の更新まで大切に保管しておくようにしましょう。更新の証明書が手元に届いたら、幼稚園教諭免許の更新手続きが完了となります。
出典:教員免許更新制【3】免許状更新講習の受講について/文部科学省
出典:教員免許更新制【6】有効期間の更新(免許状更新講習の修了確認)について/文部科学省
出典:令和3年度 免許状更新講習の認定一覧(令和3年1月現在)
幼稚園教諭免許の有効期間の延長や修了確認期限の延期について

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やむを得ない事由によって免許状更新講習の課程を修了できないと認められる場合は、幼稚園教諭免許状の有効期間あるいは修了確認期限を延ばすことができます。
やむを得ない事由として認められるのは、以下に該当する場合です。
- 休職中であること
- 産休、育休、病気休暇、介護休暇中であること
- 地震、積雪、洪水その他の自然現象により交通が困難となっていること
- 現職教員の身分を保持したまま、海外派遣中であること
- 専修免許状の取得のための課程に在籍していること
- 教員となった日から有効期間の満了の日(または修了確認期限)までの期間が2年2カ月未満であること
- その他免許管理者がやむを得ないと認める事由があること
- 所持する免許状の授与の日から修了確認期限までに10年経っていない場合(旧免許状所有者の場合のみ)
また、所持する免許状によって申請できる対象者が定められているので紹介します。
新免許状を所有している場合の該当者
新免許状を持っている方の場合、以下に該当する方が有効期間の延長を申請することができます。
- 現職教員
- 実習助手、寄宿舎指導員、学校栄養職員、養護職員
- 教育長、指導主事、社会教育主事、その他教育委員会において学校教育または社会教育に関する指導等を行う者
旧免許状を所有している場合の該当者
旧免許状を持っている方の場合、修了確認期限の延期を申請できるのは以下に該当する方です。
- 現職教員
- 教育長、指導主事、社会教育主事、その他教育委員会において学校教育または社会教育に関する指導等を行う者
有効期間の延長や修了確認期限の延期をしたいときには、期限の2カ月前までに免許管理者に申請する必要があります。
さまざまな事情によって更新講習を受けるのが難しいことが想定される場合は、早めに手続きを済ませておきましょう。
出典:教員免許更新制について/内閣府
幼稚園教諭免許の更新をしなかったらどうなる?
幼稚園教諭免許の更新をし忘れた場合、免許状が期限切れとなってしまいます。
そして、更新講習の受講義務者に該当する方や、新免許状を持っている方の免許状が期限切れとなった場合は、そのまま失効となります。
ただし、旧免許状を持っていて現在教諭免許を使わない仕事に就いている方は、期限切れとなっても失効扱いにはなりません。
免許状が期限切れとなり失効してしまったものの、再度授与を希望するという場合は、30時間の講習を修了して免許管理者に必要な書類を提出すれば、修了確認を受けて再度新しい免許状をもらうことができます。
出典:教員免許更新制【7】失効・再授与について/文部科学省
幼稚園教諭免許の更新方法を知って、期限内に手続きを済ませよう
今回は、幼稚園教諭免許の更新について、手続き方法や講習内容、更新を忘れた場合の対応などについて解説しました。
幼稚園教諭免許を更新するには、講習の受講や免許管理者への申請など、ある程度の費用や時間がかかります。しかし、オンラインでの受講にも対応しているため、忙しい保育士さんや幼稚園教諭の方でも時間に余裕をもって取り組めば更新しやすいでしょう。
また、更新をしなかったら免許状が期限切れとなり、受講義務者に該当する場合は失効してしまいます。
再び免許状を授与してもらうためにはさまざまな手順を踏む必要があるので、なるべく期限内に更新手続きを済ませておくことが大切です。
幼稚園教諭免許の更新講習の受講対象者には一部保育士さんも含まれているため、該当する方はいつまでに更新すればいいのかを確認し、忘れずに対応するようにしましょう。