時短勤務で働きたいと考えている保育士さんもいるでしょう。正社員やパートでの制度の概要や対象者の条件など、詳細が気になりますよね。今回は時短勤務で働く保育士さんの働き方や給料、公立・私立での求人募集の状況などについてまとめました。あわせて働くうえでのメリットやポイントもお伝えします。
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■目次
保育士の働き方のひとつ、時短勤務制度とは
保育士として働きたいと考える場合、選択肢として正社員・派遣社員・パートなどさまざまなワークスタイルが思い浮かぶでしょう。
そのなかで近年注目されている勤務体系のひとつに、時短勤務という働き方があります。
主に子どもの出産前後や、子育て中の保育士さんが時短勤務制度を活用しているようですが、そもそも時短勤務制度とはどのような内容なのでしょうか。
概要
厚生労働省「短時間勤務制度(所定労働時間の短縮等の措置)について」の資料によると正式名称を「短時間勤務制度」といい、育児・介護休業法で義務化された労働者の権利と説明しています。
通常の勤務時間よりも労働時間を短縮して勤務できる制度になりますが、定められているいくつかの要件を満たす必要があります。
また、時短勤務保育士として働ける就業条件は園により違いがあるそうです。出退勤時間や仕事量、給料などについて事前に確認しておくと安心かもしれません。
今回は、保育士の時短勤務について、働き方や求人状況、給料などを紹介します。
時短勤務に必要な条件
厚生労働省の資料では時短勤務で働くための条件として、次のすべてに該当する労働者だと説明しています。
①3歳に満たない子を養育する労働者であること
②1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
③日々雇用される者でないこと
④短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
⑤労使協定により適用除外とされた労働者でないこと
上記の通り、短時間勤務制度は3歳未満の子どもを養育している場合に利用できます。
パートやアルバイトでも、「時短勤務で働く」などと表現することがあるかもしれませんが、短時間勤務制度は本来フルタイムで働く正社員や契約社員の保育士さんが対象になります。
なお、1日の所定労働時間は5時間45分から6時間までを許容としており、短時間勤務制度が適用されているときには育児休業をしないことが条件となっています。
出典:短時間勤務制度(所定労働時間の短縮等の措置)について/厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課
保育士が時短勤務で働く際の給料は?
時短勤務中の給料に関する法的な規則はないため、園や法人の規定によるところが大きいようです。
一般的に、時短勤務になって減少した労働時間分に対する給料が減る場合が多いでしょう。
【例:8時間から6時間に減った場合】
もともとの勤務時間よりも2時間短縮になるため、給料ももとの基本給から25%カットされる
また、ここから残業代が出なくなるうえ、基本給をもとに計算するボーナスも少なくなってしまうでしょう。
ただし、時短勤務によって減少した時間(例では2時間短縮のため25%)以上にあたる金額を、不当に減らされることは禁止されています。
そのため、勤務時間が8時間から6時間になったからといって、基本給の半分をカットされるといったことはないため安心しましょう。
制度を利用する際は、給料がどのくらい減るかを前もって確認し、疑問点は上司に質問しておきましょう。
時短勤務で働く場合の保育士のメリット
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正社員や契約社員の保育士さんが時短勤務を利用して働くと、給料はその分少なくなってしまいます。
それでも「短時間勤務制度」を利用して保育士として働くことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
子育てとの両立がしやすい
時短勤務で働くことで子どものお迎え時間に合わせての退勤が可能になるなど、子どもと過ごす大切な時間を確保できるようになるでしょう。
正社員としてのキャリアを維持しながら子育てができるのは、うれしいポイントですね。
将来もらえる年金が保障される
時短勤務に変更することで将来もらえる年金が減るのではと、心配になる保育士さんもいるかもしれません。
時短勤務になっても厚生年金保険料の「標準報酬月額の特例措置」を届けることで、厚生年金は減額されないようです。
ただし3歳未満の子どもを養育しており、標準報酬⽉額を下回っている場合に限ります。
また「短時間勤務制度」を利用しないで単に勤務時間を短くするなどの変更をした際は、将来もらえる年金が減ってしまう場合もあるため注意が必要です。
フルタイムへ戻すことも可能
正社員として勤務している園で時短勤務の働き方へと移行しても、将来的にまたフルタイムで働くことも可能です。
子育てが落ちつく頃にもとの働き方に戻れるので、安心して子育てと仕事の両立を続けられそうですね。
また、短時間の正社員として働く保育士さんは、担任ではなくフリーや保育補助などとして働く場合もあるでしょう。
これには時短勤務で働くことへの心理的負担が少なくなるというメリットがありそうです。
時短勤務でも正社員というキャリアを継続できることで、その後の転職において有利に働くかもしれませんね。
出典:育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します/厚生労働省都道府県労働局
保育士が時短勤務でうまく働くためのポイント
ここでは、保育士さんが時短勤務制度を利用してうまく働くためのポイントを紹介します。
同僚にあらかじめ時短勤務になることを伝えておく
開園時間が長く、仕事量も多い保育の仕事では、時短勤務になることで周囲に迷惑をかけることに不安を感じる保育士さんもいるかもしれません。
そのためにも、今後時短勤務になることを同僚保育士さんに伝えて、あらかじめ味方を作っておくことが大切なポイントになります。
これから頼ることが増えるかもしれないということを念頭に、謙虚な姿勢で了承を得るとともに、感謝の気持ちを伝えておきましょう。
業務を整理して誰が見てもすぐ対応できるようにしておく
自分の持っている業務を整理して、すぐに仕事に取り掛かれるような工夫をしておくことも大切です。
自分自身でも限られた時間で効率的に仕事ができるようになりますし、誰かに頼むときも指示を出しやすくなるでしょう。
もし他の保育士さんを頼るときでも、引継ぎや説明を最小限に済ませられるようにしておくことで、「頼むことすら大変」という状況を軽減できそうですね。
取得する期間を決めておく
時短勤務を取得できる期間は園や法人の制度によって異なりますが、自身がいつまで時短勤務を継続するかを前もって決めておくとよいでしょう。
そうすることで、時短勤務期間に育児に専念するという時間の有効活用や、「〇年だけのだから頑張ろう」というモチベーションにつながるかもしれません。
時短勤務可能な保育士の求人事情
保育士として働くとき、出産前後や子育て中も継続して働くことを考慮して時短勤務で働ける園の求人を視野に入れてもよいでしょう。
公立と私立それぞれの保育園における、求人情報の特徴についてまとめてみました。
公立保育園の場合
公立保育園で働く保育士さんは、勤務年数が長い傾向にあります。
その背景には産休や育休の制度が充実していることや、残業が少なく働きやすいといった公務員保育士ならではの利点が考えられるでしょう。
公務員労働組合連合会により「短時間勤務制度」を導入する体制が整っているので、安心して時短勤務に切り替えることもできそうです。
育児休業だと職場を一定期間離れてしまいますが、時短勤務を利用することで育児と仕事の両立の負担が軽減されるかもしれませんね。
私立保育園の場合
私立保育園では、派遣やパートの時短勤務の求人も多い傾向があります。正社員の「短時間勤務制度」を導入している園なのかどうか、見極めることが大切でしょう。
「短時間勤務制度」を導入して間もない園では、職員との連携がとりにくかったり仕事量と勤務時間のバランスをとるのが難しかったりと、働きにくい場面もあるかもしれません。
時短勤務で働く保育士さんといっしょに仕事をする場合には、協力し合えるよう配慮できるとよいですね。
保育士の時短勤務を働き方の選択肢に入れてみよう
今回は、時短勤務で働く保育士さんのメリットや給料、私立・公立の求人状況を紹介しました。
出産を控えている、子どもとの時間を大切にしながら働きたいという保育士さんは、正社員からパートに移るべきなのか悩むことがあるかもしれません。
近年では正社員としてのキャリアを継続しながら時短勤務が可能な求人も増えているようです。
子育てと保育士を両立できる時短勤務という働き方を視野に入れることで、子どもとの時間を大切にしながら無理なく働き続けられるかもしれませんね。