採用活動を行ううえで、離職率が低い園の特徴を知りたいと考える担当者の方もいるかもしれません。人材の定着化を目指し、「良好な人間関係を築く」、「職員の勤務形態の改善」など、退職を防ぐための取り組みは大切でしょう。今回は、離職率の低い保育園の特徴や低離職率を目指すための対策について紹介します。
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■目次
離職率が低い保育園の特徴とは
「早期退職が多く、人材が育たない」、「保育士が辞めてしまい、常に採用活動を行っている」など、自園の離職率が高いのではないかと悩む採用担当者の方もいるかもしれません。
厚生労働省「保育士の現状と主な取組p11」の資料によると、保育士の離職率は2018年度に9.3%と前年度よりも0.1%低く、保育士全体の離職率が減少しているものの、人材がなかなか定着しないことで採用活動が多忙となる施設もあるようです。
保育士の退職を防ぐためにも、離職率が低い保育園の特徴を把握し、園の雰囲気や職員の勤務形態などを見直すことが必要ではないでしょうか。
離職率が低い保育園には、主に以下のような特徴があります。
・人間関係が良い
・待遇が充実している
・休みがとりやすい
・残業が少ない
・教育・指導計画が充実している
それぞれの特徴を具体的に深堀りをし、保育士の人材の定着化に役立てましょう。
離職率が低い保育園の特徴:人間関係が良い
人間関係が良好な園は離職率が低く、人材が定着化していることが考えられます。
保育士さんは、子どもたちの健全な育成を支える役割があり、運動会や遠足などの行事、日常の保育活動の、職員同士で連携をとることが多いでしょう。
連携が上手くとれている場合は、良好な人間関係が築かれ、保育士さん一人ひとりが働きやすい職場と言えるかもしれません。
また、行事などで保育士同士が出し物を行う際も、雰囲気の良い園は職員同士の仲の良さが伝わることもあるでしょう。
さらに、いっしょに働いている職員と子どもの成長を分かち合うことで、自然と保育士さん自身にも笑顔が増えるかもしれません。仕事にやりがいを感じることで「この園で頑張りたい!」という意欲にもつながりそうです。
離職率が低い保育園の特徴:待遇が充実している
保育士さんの給与が高い、賞与や残業代もしっかりと支払われているなど、待遇が充実している園は、離職率が低いようです。
待遇が充実していると生活が安定するため、仕事に集中でき、子どもに対しても質の良い保育を提供できることにつながります。
待遇面に安心感を得ることができれば、保育士として長く働き続けたいと感じる方が多いのかもしれません。
離職率が低い保育園の特徴:休みがとりやすい
「土日祝日休み」、「有休が多い」など休みがとりやすい園は、保育士さんが辞めにくくなる要因のひとつでしょう。
保育士は、責任量や業務量が多い仕事だといわれています。
子どもの命を預かる職務であることから、責任を感じ、子どもへの関わり方に対して悩みを抱えることもあるかもしれません。
また、保育活動だけでなく、保護者対応や職員同士の連携する中で、気を張ることも多く、ストレスを感じる場合も少なくないようです。
このような悩みやストレスを抱えていても休みがとりやすいと、職場を離れて、リフレッシュできる環境が整っているということにつながりそうです。
離職率が低い保育園の特徴:残業が少ない
保育士さんは普段の保育活動だけでなく、日案や週案などの指導案、保育日誌や設定保育の準備などさまざまな業務量をこなすことが考えられます。
決められた労働時間内では終わらずに、残業が発生してしまう園も少なくないようです。
このような業務量の多さを軽減するために、ICTシステムの導入や職員間の仕事量の分担体制がしっかりと整備されていれば残業が少なく、働きやすいと感じるのかもしれません。
持ち帰り残業が少ない、またはないという場合は、結婚や出産などで保育士さん自身の生活環境に変化があった際も、仕事と育児の両立がしやすくなるでしょう。つまり、復職を希望し、離職率が低くなることにつながるといえそうです。
離職率が低い保育園の特徴:保育士の育成計画が充実している
保育士として働き始めたときは、誰しも子どもへの接し方や指導案の書き方、保護者対応が上手くできずに不安に感じる場合もあるでしょう。
このような新人保育士さんのための育成計画が充実しており、精神的なケアや教育・指導計画がしっかりと確立された園は、「この園で保育士として経験を積めてよかった」という安心感につながるでしょう。
また、中途採用の保育士さんに向けて、自園の保育方針や保育計画をしっかりと伝える機会を設けるなどして、受け入れ態勢が整備されている園は離職率が低いことが考えられます。
離職率が低い保育園を目指すための取り組み
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離職率が低い保育園を目指すための対策について紹介します。
良好な人間関係を築くための対策
人材の定着化を目指すためにも園内の雰囲気がよくなるように、良好な人間関係を築くことが大切でしょう。具体的な対策を紹介します。
仕事量を分担し、明確にする
保育士は担任と副担任、担任と補助などペアで保育活動を行うことが多いものです。連携が上手くいかないことで悩みやストレスを抱えてしまう可能性もあるでしょう。
仕事量の分担を曖昧にしていると、一人に対して過度な負担がかかる場合もあるため、しっかりと役割分担を行うことが大切かもしれません。
週案や日案を作成する際に、役割分担についてもしっかりと明記しておくとそれぞれの仕事量の見通しも立てやすいでしょう。
日々の保育活動の中でコミュニケーションを取りながら、互いを尊重できる関係性を築きあげていきましょう。
適材適所の人材配置を目指す
主任や園長が人材配置を行う際は、職員同士が良好な人間関係を築きあげるために相性のよい保育士を担任、副担任とするなど、工夫することが大切でしょう。
保育士の中には「子どもへの関りは上手だが、保育士の人材育成を上手くできない」、「保育士人材の育成に長けているものの、保護者対応に不安がある」などさまざまな特性があるかもしれません。
保育士一人ひとりの不安要素を補い合えるような人材配置を心がけることは、良好な人間関係を作りあげる第一歩となりそうです。
職員間で定期的にコミュ二ケーションの場を設ける
多忙な保育活動の中で、職員同士でお互いを考え方や人柄などを知る機会が少ない場合もあるでしょう。
園児の登園後や朝礼時など、積極的に職員間でコミュニケーションの場を設け、良好な人間関係を作り上げられるように、意識するとよいかもしれません。
保育に対する悩みや不安を分かち合い、お互いが相談し合える間柄になることで協力体制を確立できると、雰囲気の良い保育現場となりそうです。
待遇の充実化を目指すための対策
保育士の待遇を改善することは、職員が自園で長期的に働きたいという意欲につながるでしょう。
どのような対策が必要なのかを、具体的にまとめてみました。
運営における経費の見直しを行なう
職員の昇給を考え、自園の運営の経費についての見直しを行うとよいかもしれません。
例えば、通信費の見直しを行い、インターネットのプロバイダーを変えることで経費を抑えることができるかもしれません。
また、ペーパーレス化に向けて、ICTシステムを活用して指導案の作成などを行うことで、消耗品費の削減にもつながる場合もあるでしょう。
現場の保育士さんに経費削減についての意見を求め、アイデアを募集するなどして、園全体で経費削減に取り組んでいきましょう。
独自のキャリアアップ制度を導入する
保育士さんの役職は、園長、副園長、主任と3つの役職以外を設けていない園も多いかもしれません。
学年主任、担任、副担任の他に、行事や保育計画のリーダーを配置するなどして、キャリアアップ制度を明確に設け、役職に応じた昇給の提示行うと、仕事に対してのやりがいを感じやすくなるでしょう。
各園の保育方針によって職員に求めるスキルには違いがありますが、「児童英語インストラクターの資格を取得することで3000円の昇給」、「絵本専門士の資格取得で昇給相談」など、保育士のスキルアップを後押しするような取り組みも大切かもしれません。
勤務形態を改善するための対策
保育士が離職してしまう原因の一つが、長時間労働や持ち帰り残業などの負担が考えられます。
保育士の勤務形態を改善するためには、どのような対策が必要なのか具体的に見ていきましょう。
休憩時間を設ける
一般的な企業では、お昼や勤務の合間に休憩を設けていることが多いでしょう。
しかし、保育士さんは子どもたちの保育活動があることからお昼休憩などがない場合が考えられます。
会議の合間や保育活動の合間に休憩をとることもあるようですが、明確な規定がない園も少多いかもしれません。
保育士の勤務環境を改善するためにも、明確な休憩時間を設定し、保育士さんが一息つける時間を設けましょう。
会議の在り方を見直す
保育施設の中には長時間の会議などを行うことで、労働時間が長くなり、保育士さんに負担がかかっている場合もあるようです。
子どもたちの活動の様子や保育計画などを共有することは大切ですが、効率的に会議を進められるように工夫することも大切かもしれません。
会議の進行、内容の見直しを行い、会議時間が長引かないように気をつけていきましょう。
ICTシステムを導入する
ICTシステムとは、保育活動を行ううえで必要な園児管理や職員のシフト管理、保護者へのお知らせ配信などさまざまな機能が備わった電子システムです。
パソコンやタブレット、携帯などを活用することができ、職員同士の情報共有の簡略化やクラス便りを一斉送信できるなど、保育士の業務負担の軽減につながるでしょう。
保育士の育成を強化するための対策
保育士の育成計画が確立されていない場合に、「この園では保育士として成長することができない」と考える方もいるかもしれません。
離職率を下げるためにも、保育士の育成を強化するための対策について見ていきましょう。
教育・指導体制を見直す
保育士さんが働きやすい環境にするためにも、職員への教育・指導体制の見直しは大切でしょう。
保育士一人ひとりに教育担当を設け、育成を支えるシステムを構築するとよいかもしれません。
特に新人の保育士さんは環境に慣れずに不安を感じている場合もあるでしょう。
精神的ケアができる教育担当を配置し、気軽に相談できる信頼関係を築くことも大切です。
独自の育成マニュアルを作成する
保育施設には、運動に特化した保育園やリズム遊びを重視している幼稚園など、さまざまな保育方針があるでしょう。
そのため、保育士がどのようなスキルを身につけ、成長していくべきかというのは園によって違いがあるかもしれません。
各園で保育士の育成マニュアルを作成し、それぞれがスキルアップできるような取り組みを実施していきましょう。
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離職率の低い保育園を目指し、人材の定着化に向けて取り組もう
今回は、離職率が低い保育園の特徴をふまえ、低離職率を目指す取り組みについて紹介しました。
保育士さんの採用が成功しても人間関係や勤務形態などに不安を感じた場合に、早期退職を招く可能性もあります。
「この園で長期的に働きたい」、「この園で働くことで保育士として成長できる」と思ってもらえるように、働きやすい環境を作り上げることが大切して、人材の定着化に取り組んでいきましょう。