深刻な保育士不足が続く中で、問題の解消に向けた取り組みが必要です。2021年10月の求人有効倍率は2.66倍。人材獲得競争は激化する今、「待遇改善」や「潜在保育士の復職支援」などを行い、人材の確保・定着化に役立てていきましょう。今回は、保育士不足を解消するための5つの取り組みを詳しく紹介します。

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■目次
保育士の人材不足の現状
保育士不足が解消されずに人材の確保に悩む採用担当者の方もいるでしょう。
厚生労働省の資料によると、2021年10月の保育士の有効求人倍率は2.66倍となっています。全職種の平均の求人倍率は1.16倍であることから、高い水準で推移していることが伺えます。

出典:保育士の有効求人倍率の推移(全国)/厚生労働省からの抜粋
有効倍率は前年度の同月よりも0.08ポイント上昇しており、保育士さんの人材確保に向けた競争が過熱している流れとなっています。
採用活動が困難な今、保育士不足の解消に向けた取り組みが必要でしょう。
ここからは5つの対応策を紹介します。
出典:保育士の有効求人倍率の推移(全国)/厚生労働省からの抜粋
保育士不足の解消への取り組み①待遇改善

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まず保育士不足を解消するためには、職員の待遇改善に目を向けることが重要になります。その理由や必要な取り組みについて見ていきましょう。
待遇改善が必要な理由
保育士は業務量が多いといわれる職種のひとつです。
保育活動以外にも、連絡帳の記入や保育計画、行事の企画、運営など多種多様な仕事に取り組みます。子どもの命を預かるという安全管理も任されていることから、職員一人ひとりの業務負担が問題視されています。
しかし、そのような流れの中で手取り12万〜13万円で勤務する保育士さんもおり、見合う給与がもらえずに待遇に不満を抱える方も少なくないようです。
待遇改善への取り組み
打開策として国からは以下のような処遇改善対策が行われています。
- 2022年の2月~9月まで約3%(月額約9000円程度)の賃金の増加
- キャリアアップ研修の修了・役職認定による月額5000円~4万円の昇給
このような処遇改善制度を利用することも重要ですが、保育施設が独自に給料の底上げに取り組む必要もあるでしょう。
例えば、
- 消耗品費の削減→ペーパーレス化の徹底
- 広告費の削減→SNSや自園のホームページの活用
といった園の経費削減に向けて見直しを行い、無駄をなくすことで保育士さんの待遇の改善を考えていきましょう。
保育士不足解消への取り組み②潜在保育士の復職支援
潜在保育士の復職の支援も保育士不足解消に役立つ方法のひとつです。
潜在保育士とは、保育士の資格を保有しながらも働いていない方のことを指し、2015年には約76万人存在しているといわれています。
このような方々に向けて積極的に職場への復帰を後押しすることは、人材の確保につながるでしょう。
具体的に必要な取り組みを紹介します。
体験会・研修会の開催
潜在保育士さんの中には、未経験やブランクがあることで復職に前向きになれない方もいるでしょう。子どもが好きという気持ちを持ちながらも、保育士という責任のある仕事を全うできるか不安..という方もいるようです。
このような方々に向けて職場体験会や研修会などを積極的に開くとよいかもしれません。
「保育園を4、5ヶ所回る見学バスツアー」や「現役保育士さんとの交流会」などを主催する自治体もあるようです。
まずは体験会や研修会などの開催に向けた流れを作り出し、安心して復職できるように支援の輪を広げられるとよいですね。
求人募集方法の工夫

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求人に潜在保育士さんに向けたキャッチコピーなどを記載すると、復帰を後押しするきっかけになるかもしれません。
以下のように園見学を勧める一文を求人票に記載してみるとよさそうです。
「保育士未経験でも大歓迎!ブランクがあってもサポートします!まずは職場見学に来てみませんか?」
「10年ブランクがあった方も即戦力として働いています。職場見学大歓迎です!」
この他にも保護者の方向けに求人情報を発信し、「ブランクありや未経験の方など、お知り合いの保育士さんがいましたら気軽にご相談ください!」などの内容を盛り込むと、紹介が受けられる可能性もありそうですね。
保育士不足解消への取り組み③労働時間の調整
保育士の仕事は「労働時間が長い」「残業が多い」仕事だといわれています。
このようなイメージを払拭するためにも、しっかり労働時間の調整を行い、働きやすい職場環境を作り上げる必要があります。
具体的な取り組みについて紹介します。
ICTシステムの導入
まず職員一人ひとりの勤務状況を把握するためにも、労働時間や残業時間を正確に把握しましょう。
その際は労務管理に特化したICTシステムの導入を検討するとよいかもしれません。
ICTシステムには職員の労務管理や児童の情報管理、保護者へのお知らせ機能などが備わっている電子システムです。
専用機器カードリーダーをかざすだけで、自動的に保育士さんの出退勤を記録することもできます。
このようなシステムを活用すれば、勤怠管理がしやすくなり、データを基に労働環境の改善に取り組みやすくなるでしょう。
変形時間労働制の導入
変形時間労働制とは、1ヵ月月単位や年単位などで仕事量の状況に合わせて労働時間を調整できる制度です。
保育士さんの仕事は、行事が多い季節や指導案作成や保育計画に忙しい時期は残業が多くなる傾向にあります。
変形労働時間制を導入すると、閑散期は休日を多めに設定してしっかり休んでもらい、繁忙期はいつもより長く働いてもらうなど計画的に調整することができるようです。
園の勤務状況に合わせて、このような制度を活用すると労働時間の調整に役立つかもしれません。
保育士不足解消への取り組み④働きやすい職場づくり
保育士不足の解消に向けて、居心地のよい職場環境を作りあげることが大切になります。
保育士さんは職員同士で協力する場面が多く、上手く連携がとれないと人間関係にひずみが生じ、離職してしまうケースも少なくありません。
チームワークを高めるためにも、食事会の開催や本音を語ることができる場を用意し、交流を深めることが重要でしょう。
「職員同士が相談しやすい」「お互いを励まし合える」ような職場環境を構築できるとよいですね。
保育士不足解消への取り組み⑤新人保育士に向けた手厚い育成

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せっかく採用しても早期に退職してしまう保育士さんが多ければ、人材不足を防ぐことは難しいでしょう。
新人保育士さんの定着化を目指すためにも、以下のような対策を立てることが大切です。
- 定期的な面談
- 歓迎会・交流会の開催
- 教育担当との信頼関係の構築の徹底
- 精神的なケアを行う人材の配置
不安を抱いた場合は気軽に相談できる関係性を確立し、安心して働くことができるように環境を整えていきましょう。
また、教育担当業務を担う保育士さんの中には、業務量が多く新人の育成に手が回らない場合もあるようです。仕事量の見直しを行い、育成に専念できる状況を作り上げることも大切ですね。
保育士不足解消に取り組み、人材定着・確保を目指そう
保育士不足の解消に向けて待遇改善や潜在保育士の復職支援など幅広い取り組みが重要となるでしょう。
士さんの人材の定着化や求職者の応募増加を目指すためには、職場環境の改善に目を向けることも大切です。
保育士さんが「ここでずっと働きたい」と思えるような職場を作り上げ、人材確保につなげていきましょう。