保育士は「休憩時間が取れない」「労働時間が長い」職種だといわれています。子どもの命を預かる責任ある仕事だから仕方ないと考える一方で、体力が持たず辞めてしまう方も少なくありません。今回は労働基準法における休憩時間のルール、確保するためのポイントを紹介します。人材の定着化に向けて労働環境の改善に役立てましょう。
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保育士は休憩時間を取りにくい?
労働基準法で定められた「休憩時間」。雇用側は労働者に対して、勤務時間にあわせて休憩を与える義務があります。
一般の企業では勤務時間が8時間の場合、お昼休憩を1時間と設定することが多いでしょう。しかし、保育士にとってお昼はちょうど子どもたちの給食時間にあたります。
食事の準備や援助、その後は午睡の見守りに追われ、休憩が取りにくい状況…保育活動が続き、一日に一度も休憩がとれないと不安を抱える保育士も少なくありません。
このような場合、労働基準法違反となることはもちろん、過度な勤務が続き、離職率が高まることも考えられます。お昼休憩が取れない場合は別の時間帯に休憩を設けるなど、労働状況の改善が必要です。
自園の人材の定着を図るためにも、職員の勤務状況を把握し、休憩時間の確保に取り組んでいきましょう。
労働基準法で定められた休憩時間の概要
まずは、労働基準法34条で定められた休憩時間の概要をみていきましょう。
休憩時間の最低ライン
労働基準法で定められた労働者の休憩時間の最低ラインは以下の通りです。
労働時間 | 最低休憩時間 |
---|---|
6時間以上~8時間以内 | 45分 |
8時間を超す場合 | 60分 |
早朝保育で3時間勤務、夕方の預かり保育で4時間勤務など、労働時間が6時間以内の場合は休憩時間を設ける義務はありません。
また、パートやアルバイトなど雇用形態が違っても休憩時間の規定は変わらないため、あくまでも勤務時間の長さが目安となります。
休憩時間のルール
休憩は労働時間の途中に与える
休憩時間は原則、労働時間の途中に与える必要があります。そのため、9時~17時の勤務の場合に、勤務が終わる16時~17時まで休憩をおくことはできません。現場の保育士さんに休憩時間を設ける場合は、「労働時間の途中」であることを意識することが大切です。
休憩時間には仕事から離れる必要がある
休憩時間は必ず、仕事から離れて休む必要があります。例えば、休憩時間に職員が保育記録やおたよりを書いたり、保護者に電話をかけたりすることはNGです。保育現場を離れ、心身を休める状況を作ることを注意しましょう。
休憩は一斉もしくは交代で与える必要がある
基本的に休憩時間は一斉に与えることが義務づけられていますが、困難な場合は労使協定を結び、交代で与えることも可能です。
特に保育士さんは子どもを保育する必要があるため、職員が一斉に休憩を取ることは難しいでしょう。職員が交代で取れるように勤務体制を工夫する必要があります。
保育士の休憩時間を確保するポイント
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現場の職員が休憩時間を確保できるよう、管理者が取り組むポイントを紹介します。
勤務体制の見直し
まず、現場の職員の休憩時間の確保に向けて勤務スケジュールを把握して、勤務体制の見直しを図ることが大切です。保育士さんは子どもの保育活動を行うため、交代で休憩を取ることが考えられます。
職員一人ひとりの役割や勤務スケジュールの詳細をまとめ、給食時間など多忙な時間帯は避けて、誰がどの時間に休憩を取るか明確にしましょう。シフト調整などを行い、パート職員の出勤に合わせて、正社員の保育士さんの休憩時間を作るなど工夫することが大切でしょう。
休憩の取りやすい雰囲気づくり
他の職員が多忙な中で、休憩を取るのは申し訳ないと考える保育士さんもいるでしょう。主任保育士さんなどベテランの方が積極的に休憩の時間を取り、「休憩を取ることが当たり前」になるように職場全体で雰囲気を作り上げることが大切です。
また、職員同士が「休憩時間だよ。行ってらっしゃい!」と笑顔で声をかけ合うことで、休息が取りやすくなるでしょう。
保育ICTシステムの活用
休憩時間を確保するためには、職員1人1人の負担を減らす必要があります。保育士は保育活動以外にもおたよりや指導案作成、行事の企画運営など多岐に渡り、事務作業も多い仕事です。
業務の効率化を図るためにも、パソコンやタブレットを活用した保育ICTシステムの導入を検討してみるとよいかもしれません。
保育ICTシステムは園児情報や職員の労務管理、保護者へのお知らせ配信などさまざまな機能が備わっています。
導入することで、仕事量の削減や業務の効率化に役立つことから、休憩時間を確保にもつながるでしょう。
保育士の休憩時間を確保して離職防止につなげよう
保育士の離職防止を図るためにも、休憩時間をきちんと確保することが大切です。
法律に違反している場合に、自治体が行う労務監査などで指摘され、改善を求められる可能性もあります。
業務量の削減や勤務体制の見直しなどを行い、職員の休憩時間の確保に取り組んでいきましょう。