保育ドキュメンテーションに興味があるという保育士さんもいるでしょう。保育園で過ごす子どもの様子を写真などを活用して伝える手法として、近年注目されているようです。今回は、保育ドキュメンテーションの作成方法やメリット・デメリットを紹介します。あわせて、保育に導入する際に配慮するポイントもまとめました。
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■目次
保育ドキュメンテーションとは
近年、保育ドキュメンテーションという言葉を保育雑誌や研修などでよく聞くようになったのではないでしょうか。
実はよく分からない…という保育士さんも、保育園でこの手法を既に導入しているかもしれません。
ドキュメンテーションについて知れば、より有効的に活用することができそうですね。
まずは、ドキュメンテーションとはどういったものなのかを見ていきましょう。
発祥
ドキュメンテーションは、イタリアのレッジョ・エミリア市が発祥で、1991年に「最も革新的な幼児教育」として注目を浴びた教育法です。
「ドキュメンテーション」と名称が進行形であることは、常に成長し続けている子どもの様子を継続的に記録することが大切であることを物語っています。
内容
保育ドキュメンテーションは、保育現場における子どもの様子を写真や動画、言葉などを用いて記録する手法です。
子どもの表情や姿を収めた写真を添付することにより見える化し、誰が見ても分かりやすいように作成します。
目的
ドキュメンテーションを導入する目的のひとつとして、子どもが保育園でどのように生活しているのかを、その場にいない保護者に向けて分かりやすく伝えるということが挙げられます。
また、保育士にとっても保育実践の記録として残すことができるため、活動を振り返りながら自身の保育の質向上に繋げることも期待できます。
写真を活用する保育ドキュメンテーションの作成と実践方法
では、保育にドキュメンテーションを取り入れるにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、写真を活用する保育ドキュメンテーションの作成と実践方法を紹介します。
作成方法
保育ドキュメンテーションに写真を活用する場合は、次のような流れで作成しましょう。
1.子どもの様子を撮影する
まずは、保育園内や園外で日々子どもが生活している様子を写真に収めます。
その際、笑顔ばかりを追わずに、子どもが何か考えている表情や努力している姿など、あらゆる瞬間を撮影するようにしましょう。
また、活動内容がより伝わるように、遊んでいた場所や子どもの製作品などの写真も収めるとよいかもしれません。
2.子どもの様子をメモに残す
活動中に子どもの発した言葉や表情、行動などをメモに残しましょう。
その際、子どもが楽しんだり驚いたりしている理由にも目を向ければ、より子どもの様子を鮮明に記録することができそうです。
なお、安全のために子どもから目を離さないよう気を付けながら、子どもの様子を観察することが大切です。
実践方法
保育ドキュメンテーションを作成したら、保育園の廊下や保育室内など保護者の目につく場所に掲示しましょう。
記録したメモを基にして写真に具体的な言葉を添えれば、より鮮明に活動の様子を保護者へ伝えることができるかもしれません。
各クラス毎に場所を設けて、毎日子どもの様子を掲示すれば保護者に喜ばれるでしょう。
発表会や作品展など行事の際にも、これまで準備を進めてきた様子をまとめて展示すれば、子どもの努力してきた姿に触れて保護者は感動するかもしれませんね。
なお、子どもの作品を掲示するという方法も保護者に保育の様子を伝える手法として有効です。
作成した日時や制作時の子どもの言動を具体的に記しておけば、作品を通して子どもの成長を感じることができそうですね。
保育ドキュメンテーションのメリットとデメリット
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次に、保育ドキュメンテーションを導入する際のメリットとデメリットをまとめました。
メリット
子どもの成長過程が分かる
保育ドキュメンテーションを導入する際には、子どもの様子を継続的に記録することが大切です。
過去と現在の子どもの表情や言動を見比べることもできるので、例えば苦手を徐々に克服した様子などに触れれば子どもが成長したと気づくきっかけになるでしょう。
ドキュメンテーションを作成する際には、撮影した日時も記録しておくとよいかもしれませんね。
活動を振り返ることができる
ドキュメンテーションを通して、保育士さんが日々の活動の振り返りがしやすくなることもメリットとして挙げられるでしょう。
写真や動画、言葉などを用いるので、子どもが活動に参加していた様子を具体的に記録することができ、子どもの成長過程が分かりやすく保育計画をする上でも役立ちそうです。
なお、子どもも写真や動画、作品などを通してその時々の活動を振り返ることができるので、楽しかったことや頑張ったことなどを保育士さんと共有できそうですね。
保育の質向上が期待できる
先述したように、保育ドキュメンテーションを通して子どもの様子を振り返ることができるので、活動における新たな発見や反省点などが浮彫になるかもしれません。
活動を終えたあとに改善すべき課題が分かれば、次の活動に活かすことができるでしょう。
また、保育ドキュメンテーションにより子どもの日々の成長を実感することができれば、保育士として仕事のモチベーションが高まり、質向上につながることが期待できそうですね。
保護者との信頼関係を築ける
保育ドキュメンテーションの活用は保護者とのコミュニケーションにも大いに役立ちます。
写真とコメントなどの記録があることで一日の様子を具体的に伝えられるので、保護者にとっても保育園での活動の様子がイメージしやすいでしょう。
保護者に保育園の様子を具体的に知ってもらうことができれば、保育園の方針に対する理解にもつながるかもしれません。
保育ドキュメンテーションを通して、子どもの保育について保護者と協力し合える関係性を築けるとよいですね。
デメリット
保育士の業務が増える
デメリットとしては、保育にドキュメンテーションを取り入れることにより、保育士さんにとって記録や振り返りをする業務が増えることが挙げられるでしょう。
保育士さんの負担が重いために保育ドキュメンテーションが継続できないとなれば、有効活用できずに終わってしまうかもしれません。
そのため、保育ドキュメンテーションを導入する場合には、保育士さんの業務負担を増やさないような工夫が必要でしょう。
例えば、パート保育士さんが新たに取り組める業務がないか役割分担を整理したり、書類作成に時間がかかる要因を見つけて改善したりと、これまでの保育業務を見直してみるとよいかもしれません。
個人情報の取り扱いに注意する必要がある
保育ドキュメンテーションを導入するにあたり、子どもの写真や動画などを活用する際にはあらかじめ個人情報の観点から保護者の理解を得ることが必要となります。
そのため、子どもの撮影がNGな保護者への対応などに悩むことが生じるかもしれません。
事前に保護者に向けた説明を行うなど、十分配慮しながら行うことが大切です。
保育ドキュメンテーションを導入する際のポイント
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ここでは、保育ドキュメンテーションの導入が保育士の負担にならないよう配慮すべきことや、取り組む際に意識したいことなどをまとめました。
従来のやり方を活かす
例えば掲示の仕方など、これまでとやり方や形式が大幅に変われば、保育士さんが新たな手法に慣れるまでに時間を要してしまうことが懸念されます。
例として、そのまま保育日誌の記入に活かせるような内容を意識しながら掲示するなど、現状の業務のやり方を活かしつつ見える化できるように工夫するとよいでしょう。
できる限り具体的に記録する
保育ドキュメンテーションを作成する際には、時間を置いて確認しても子どもの成長の変化を感じとることができるように、子どもの発言や活動の様子を具体的に記録するよう意識しましょう。
撮影時の日付も忘れずに残しておきたいですね。
業務をICT化する
保育ドキュメンテーションを取り入れることにより保育士さんの業務が増すようであれば、仕事を効率化するツールなどを導入することを検討してみてもよいでしょうかもしれません。
例えば、ICTを活用することで他の業務の負担などを軽減できれば、ゆとりを持ってドキュメンテーションに取り組むことができそうです。
また、写真や動画、コメントを保護者と共有できる機能を持つツールもあるようなので、保育士さんの負担にならないよう配慮しながら保育ドキュメンテーションを導入できるとよいですね。
写真を用いるドキュメンテーションを実践して保育の質の向上を図ろう
今回紹介した保育ドキュメンテーションには決められた形式はないため、その日の保育活動のなかからとっておきのシーンを決めて自由に作成してみましょう。
保育士さんの導入しやすい方法で日々の保育園での様子を「見える化」し、子どもの成長を楽しみながら自身のモチベーションも高められるとよいですね。
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