保育士さんが子どもと関わる中で重要な保育の質とは、どのような意味があるのでしょうか。今回の記事では厚生労働省の資料をもとにわかりやすく解説します。実際に保育の質の向上を目指した3つの実践事例についてもまとめました。子どもたちを取り巻く環境が変化する昨今、どのような取り組みが必要なのか考えていきましょう。
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■目次
保育の質とは
子どもたちが安心して園生活を送ることができるよう、日々保育士さんは誠実に子どもたちと向き合っていることでしょう。
ただ、慢性的な人材不足による業務負担、職員の配置人数の少なさなどからなかなか保育の質の向上を目指すことが難しい環境で働く方も…。
保育の質の向上を目指すためには保育士さんの環境改善が必要な一方、園からの働きかけも重要となります。
そもそも保育の質とは「子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくことを支える環境や経験のこと」を言います。
また、保育の質の向上を目指すためには以下のプロセスが必要です。
出典:保育所等における保育の質の確保・向上に係る関連資料/厚生労働省からの抜粋p6
上記を見ると国の制度・政策を形成したうえで各園が地域の実情や園の特色、保育観などにあわせて実践的な取り組みが重要であることがわかります。
実際に多くの園で「職場環境の整備」「行事の見直し」「保育記録の振り返り」など、さまざまな視点から保育の質の向上を目指した取り組みが行われています。
ここからは厚生労働省の資料を基に3つの実践例について詳しく紹介します。
出典:保育所等における保育の質の確保・向上に係る関連資料/厚生労働省
【保育の質の向上へ】職員の対話を大切にしたリーダーシップ体制の確立
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職員体制を整え、保育の質の向上を目指した事例を紹介します。
主な取り組み
子どもたちの保育活動を支えるうえで職員の協力体制の確立は重要なポイントになります。
ある園では職員同士の話し合いの中で園長や管理職からの助言や意見を中心に展開されることが多く、現場の担任が発言をためらったり戸惑ったりする場面があったようです。
現場の中心人物であるミドルリーダーが積極的に園長とのパイプ役、担任の意見の吸い上げを行うことで職員間の対話が増えていきました。
その結果、職員同士が相談する機会も増え意見の共有が行われることで、さまざまな視点から子どもたちへの理解が深まったようです。
協力体制が整ったことで「自分は一人で保育しているわけではない」という安心感も芽生え、保育の質の向上につながった実例ですね。
実践に活かすポイント
まず、園長先生やミドルリーダーが担任のよき相談相手となることが大切になるでしょう。
聞き役に回ったうえで担任に任せて見守ったり、肯定的な対応を取り入れたりすることで自信を持って保育できるようにサポートすることが必要です。
保育士の働きやすさに目を向けて、職員同士の協力体制を整えていくことが大切ですね。
【保育の質の向上へ】行事の進め方の見直しや職員同士の対話を増やす取り組み
職員間で行事の見直しが行われ、子どもの主体性を高める行事へと変更した事例です。
主な取り組み
子どもたちが日頃の練習成果を発揮する運動会は大切な行事のひとつ。
ある園では運動会の演目が保護者の方から見て満足できる内容になっていることに気づき、見直しが行われたそうです。
職員間で対話を重ね、子ども同士で「運動会について話し合う」機会を設けた結果、普段の遊びの延長として表現できる行事に変更されました。
子どもたちが衣装を手作りしたり遊び要素が含まれたプログラムを取り入れたりと、さまざまな工夫を凝らす中で子ども主体の運動会の実現につながったようです。
子どもの主体性を高めるためにはどうすればよいのか、職員同士の対話も大切にした事例となります。
実践に活かすポイント
職員間で「子どものための行事とは何か」「子どもたちにとって運動会の演目がどのような経験になるのか」などを繰り返し話すことがポイントのようです。
また、行事内容の変更に伴い、丁寧に保護者に目的を説明することも重要になるでしょう。
改善後も再度見直しを行い、行事の目的や意味の話し合いを重ねることも大切になりますね。
【保育の質の向上へ】保育記録の振り返りを基に職員や保護者への共有を実現
保育記録の共有の仕方を一工夫することで保育の質の向上につながった事例です。
主な取り組み
ある園では保護者の方に向けて毎日の保育活動をボードに記載し発信していましたが、保護者の方の反応が薄く、手ごたえを感じなかったそうです。
一人の職員が外部研修に参加したことをきっかけに、その状況に変化が訪れます。
今までは文章に写真をそえる方法で掲示物を作成していましたが、写真から子どもたちの姿や経験の読み取りを行ったうえで文章を記載するやり方に変更したのです。
子どもたちが遊びに夢中になっている様子や、活動を通して子どもの経験の大切さを文章で表現しました。
取り組みは全体の職員に広がり、担任同士で保育を話し合う場面も増え、掲示物を見た保護者からの質問も多くなったそうです。
保育記録の在り方を見つめ直すことで園全体が子どもの理解を深め、保護者とのコミュニケーションも活発になった事例ですね。
実践に活かすポイント
保育記録に写真を活用し、子どもの様子や感情を丁寧に読み取ることがポイントになります。
また、職員間で掲示物を作成することで保育の楽しさを共有し、互いに子どもの成長を感じる機会を設けることも大切です。
保育の質の向上を目指すために今何ができるか考えよう
保育の質の向上を目指すためには、まずそれぞれの園がどのような課題を抱えているのか、明確にする必要がありそうです。
その課題に対して職員同士で意見交換を行い、改善に向けたプロセスを話し合うことが重要ですね。
しかし、中には保育の質の向上に向けて取り組めない状況の方もいるかもしれません。
ときには「子どもの主体性を大切にしたくても他の業務に追われて辛い…」などと不満を抱くこともあるでしょう。
そんなときは環境を変えるのも一つの手段!
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