保育士の給与事情。平均給料や、今後の賃金引き上げについて

保育士の退職理由の最も大きな要因に「給料が安いこと」が理由にあげられることや、持ち帰り残業が多いことなどから、保育士の給与は低いという認識が持たれる傾向にあります。

実際にデータを見てみると、特に近年では国や自治体の処遇改善が進められており、そのイメージはすでに過去のものと言えるかもしれません。このコラムでは、保育士の給与の実態や待遇改善の現状、今後上がる予定の給与について、データと照らし合わせながら解説します。



保育士の給与事情。平均給料や、今後の賃金引き上げについて
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保育士の給与事情


2017年の統計によると、常勤で働くフルタイムの保育士の給与は、全国平均で22.9万円でした。年間賞与は66.25万円で、年収換算すると約342.1万円です。この給与水準が高いのか低いのか、検討してみましょう。



保育士の給与は女性全体の平均給与とほぼ同額


この保育士の平均年収342.1万円を女性全体のお給料水準と比べてみましょう。というのも男性保育士も徐々に増えてきてはいますが、いまだ保育士の9割以上を女性が占めているからです。

2016年の女性全体の平均年収が345.5万円だったので、保育士の給与水準は女性全体の平均とほぼ同程度であることが分かります。なお、同時期の男性の平均年収は400万円を超えています。保育士の給与が安いと言われるのは、女性全体の給与水準が男性に比べて低い、ということも背景にあるようです。



給与水準と仕事内容


一方で、保育士の仕事内容の難しい点として、長時間労働や「持ち帰り残業」などが現場で指摘されており、「給与が低い」というイメージは、こうした「仕事内容との見合わなさ」と結びついているともいえそうです。


保育士の給与はどこで差がつく?


こちらでは、保育士の給与で差が付く要因を明らかにします。なお、この項目では、内閣府の2017年の調査を参照しています。(※この調査では給与額に年間賞与額も含まれています)



都道府県によっても大きく異なる


まず、日本では多くの職業で都道府県によって給与水準が異なります。これは人口や雇用状況、産業・経済力が地域によって異なるため。例えば都道府県ごとに定められている「最低賃金」が、地域によってかなりの差があることは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

保育士の給与についても同様のことが言えます。では、実際に保育士の平均給与が高い都道府県やエリアはどこなのでしょうか?厚生労働省の調査データから2013~2017年の5年間の平均年収を算出しました。

調査の結果は年度ごとにばらつきがあり、5年間の平均を用いることで給与改善の進んでいる各地の保育士給与の実態をより反映することができます。次の表は47都道府県の保育士の平均賃金をまとめたものです。
都道府県別の保育士給与

各都道府県の保育士の給与平均を比較すると、最も高い地域と低い地域では年収で最大120万円ほどの差があります。傾向としては、地方から都市部に行くほど給与面が充実していくようです。

というのも、保育士の給与の大部分は国や自治体からの補助金であり、人口が多かったり物価が高かったりする地域にはより多くの補助金が支給される、という理由があるためです。勤務する都道府県やエリアは保育士の給与を左右する大きな要因であることがわかりますね。



給与が高い都道府県と特徴的な取り組み


実際に保育士の平均給与が高い都道府県やエリアはどこなのでしょうか?厚生労働省の調査データから2013~2017年の5年間の平均年収を算出し、上位5位の自治体を調べてみました。



1位 愛知県  387.6万円

愛知県は安定して保育士の給与が高い都道府県です。県内には世界的な自動車メーカーの本社があり、比較的財政に余裕があることや、名古屋市において、公私立の保育園の待遇の差を埋める補助が手厚いといった背景があります。



2位 京都府  380.5万円

京都府も保育士の待遇が充実している自治体の一つです。特に京都市では私立の社会福祉法人間で賃金格差を少なくする制度が以前から運用されています。



3位 東京都  356.8万円

最も保育士が不足している東京都では、近年は保育士の給与が急速にアップしています。独自の待遇改善にも積極的で、2017年度からは月額4万4000円の給与改善を実施。

まだ年ごとにバラつきはあるものの2017年の調査結果では年収が平均397.6万円にまで向上しています。


4位 大阪府  348.8万円

大阪府の保育士給与は、突出して高いというわけではありませんが、平均的には高いレベルを保っています。都市部ならではの保育需要の高まりを受け、今後もさまざまな待遇改善策が待ち望まれるでしょう。



5位 神奈川県 348.3万円

横浜市、川崎市、相模原市の三つの大都市を抱える神奈川県では保育士の給与がかなり高くなっています。近年は共働き家庭の急激な流入によって、保育園が毎年のように新設されており、特に2013年から2017年にかけての給料アップ幅が大きいエリアでした。



年数・経験によって変わる


保育士の給与は、経験年数によっても差が生まれてきます。認可保育園で同一の法人で働き続けていくと、自然とベースアップしていくところが多いでしょう。

2017年の厚生労働省の調査をもとに保育士の年齢別の月給、賞与等、年収を見てみましょう。保育士全体の9割以上をしめる女性保育士の給与です。


経験年数別の保育士給与

新卒年齢の20~24歳の保育士給与は、全国平均で20万円、賞与は基本給の約2カ月分の46.2万円、年収に換算すると約286.2万円でした。社会保険や年金などが引かれた手取り給与では月額16~17万円ほどの水準ですね。

これが30~34歳になると、月給は22.5万円、賞与は68万円、年収は約338万円まで上昇しています。65歳以上に関しては、現役引退後に再雇用という形で役職につかない方も含まれることが予想されるため、平均給与は下がっていますが、その他の年齢に関しては経験を積むことで給与が上がる傾向があるとわかります。



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リーダー、副主任、主任、園長など役職で変わる


基本給のほかに、役職であるリーダーや主任、園長などに就くことで、手当として給与が増える場合が多いでしょう。内閣府の2017年調査によると、認可保育園の主任の平均給与は39.7万円、年収は476.4万円。施設長(園長)は月給52.8万円の年収633.6万円でした。

今後も、2017年から始まった「副主任」(手当として月給に+4万円)や「専門分野別リーダー」(月給に+1万円)の配置によって、経験7年目程度の中堅職員への待遇アップが引き続き実施されていく予定です。

なお、この項目及びこれ以下の項目では、内閣府の2017年の調査を参照しています。(※この調査では給与額に年間賞与額も含まれています)



公立・私立の給与の違いはどれくらい?


一般的な私立認可保育園と公立保育園で給与の違いはあるのでしょうか。次の表は、2017年度の私立認可保育園と公立保育園の給与の平均を月収、年収、また役職別にまとめたものです。

私立・公立の園での保育士給与の違い

一般保育士の月給が26.2万円なのに対して、公立園では約2万円上回る28万円。役職手当がつくとこの差はより大きくなり、年収では主任で約150万円公立保育園のほうが高く、園長で約80万円ほどの差があります。

こうしてみると、私立保育園は給与が低いというイメージを持ってしまいそうになりますが、私立保育園は比較的若い時期にキャリアアップがしやすいという特徴があります。

私立の主任の平均勤続年数が19.6年なのに対して、公立では22.4年。園長の場合だと23.1年が私立なのに対し、29.8年が公立園の園長の平均勤続年数です。公務員は年功序列人事が徹底しているため、公立の保育園でキャリアアップには長い時間がかかってしまうのです。

近年は新規園で5年以上の経験で主任を募集していたり、10年以上の経験で園長になれる場合もあるので、早く昇進して給与も早く上げやすいというのが私立保育園の特徴です。



施設形態ごとの給与


ここからは、保育園の施設種類別に給与を見ていきたいと思います。次の表は、2017年度の施設形態ごとに常勤の一般保育士の月給、年収を一覧にしたものです。
施設の種類ごとの保育士給与

ぱっと見ただけでも、給与に違いがあることがわかります。各施設ごとの特徴を見てみましょう。



私立認可保育園


最も一般的な設置形態である私立認可保育園の平均給与額は、月給26.2万円。年収にして約314.4万円でした。これは全国平均の数値のため、地域や園児の定員によって差はあります。



公立保育園


自治体が運営している保育園で、保育士は地方公務員となるため、給与は各施設の中でも高くなっており、一般の保育士でも月給で28万円、年収にすると平均336万円でした。ただし、地方公務員の給与も自治体によってかなり差があります。



小規模保育


最も保育士資格者が多く配置されている、小規模保育のA型の平均給与額は、月額23.2万円。年収にすると約278.4万円です。

園児定員が19名以下であり、運営組織も小さなものになっているため、一般的な認可保育園に比べると給与はやや下がりますがアットホームな雰囲気で保育できるやりがいを感じることができます。もちろん、主任や園長になれば給与は上がります。



認定こども園


幼稚園と保育園を合わせた施設である「認定こども園」の月給額は私立の施設だけを見ると24.2万円、年収にして約290.4万円でした。

まだ比較的新しい施設のため、給与は私立認可保育園と比べて低いですが、今後幼稚園や保育園の認定こども園への移行が進むことによって、待遇が改善されていく可能性があるでしょう。



事業所内保育


保育士資格者が多い事業所内保育A型では、月給は平均21.1万円で年収換算では約253.2万円でした。事業所内保育は、認可保育園に比べると、やや運営補助金の額が少なくなってしまうため、給与にも反映されているようです。

まだまだ施設数も少ないこともあり、認可外の企業主導型保育も合わせて職場に近い施設が増え、待遇改善が進むことが期待されますね。



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保育士給与の今後の引き上げ対策



保育士不足、待機児童問題の現状を改善すべく、厚生労働省は保育士の給与引き上げについて次のような施策を行う予定です。



2019年度は、月額約3000円の給与UP予定



2019年4月から始まる2019年度には、これまでの保育士の給与に1%(=約3000円)の給与上乗せする予定と発表しています。1%と聞くと一見少ないように感じてしまいますよね。

ただこの予算案が成立した場合、2013年度からのこの取り組みと合わせると、合計で約13%(=月額約4万1000円)の給与引き上げが行われることになります。年収で考えると、約49万2000円の昇給が無条件で受けられるということになるので、大きな改善が見られると考えてよいでしょう。


出典:保育士確保/厚生労働省




キャリアアップ研修制度


2017年にスタートした「キャリアアップ研修」では、指定の研修を経て新しい役職に就くことで待遇を改善するという制度です。具体的には、保育経験がおおむね3年以上ある保育士を対象として、条件を満たせば職務分野別リーダーとなることができ、月額5000円の処遇改善がされます。

おおむね7年以上経験のある保育士は、条件を満たすと専任リーダーまたは副主任保育士の役職を得られ、月額4万円の処遇改善がされます。

保育士には役職自体が少なく、主任保育士に昇進するには約10年の現場経験が必要と一般的には言われています。ただ実際には、勤続7年以下の保育士が役半数と、ほとんどの保育士が役職を得る前に退職するという状態です。

これを受けて始まったキャリアアップ研修では、経験の浅い保育士でも研修を受けて、条件を満たすことで昇進、昇給することができます。そのため、より仕事にやりがいを感じられ、長く働ける環境を作ることが期待されています。



出典:保育士等に関する関係資料/厚生労働省


出典:保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について/厚生労働省



給与に加えて、手当も重要なポイント


給与額を比較するときに重要なのは、給与のうち実際に使えるお金(可処分所得)がどれぐらいあるのか、という点です。「保育士に長く働いてほしい」という思いのもと、保育業界では近年、各種手当などの福利厚生が急速に充実を見せています。この手当などのうち、代表的なところを見ていきましょう。



借り上げ宿舎には最大で年間約100万円のメリットが



保育士の場合、一人暮らしの方には他の民間企業では見られないレベルの住宅補助が受けられる場合があります。この代表的なものが、主に都市部の保育園で実施されている「借り上げ宿舎制度」です。

これはアパートやマンションの一室を、保育士の宿舎のために、保育園が代わりに契約し、その家賃に対して市区町村や国が補助をする制度。細かな規定は園によってさまざまですが、家賃の本人負担が0~1割で部屋を借りられるというものです。

仮に東京都内で借り上げ宿舎制度による上限82000円をフルに活用すると、年間で98万4000円にも達します。東京都内の保育士の平均給与は397.6万円(2017年)のため、都内では実質年収としては約500万円に迫ります。これは都内で働く女性全体の平均年収の464.8万円(全国1位)を大きく上回る数字です。



引っ越し手当など


都市部の保育園を中心に導入されているケースが増えてきました。就職・転職の際、引越しをともなう場合に園が引っ越し代や一時金などを補助するものです。

実費を補助するものから、「最大30万円まで」など上限を設けているところまでさまざま。借り上げ宿舎制度と同時に利用できる園もあり、新生活準備の負担が減るありがたい制度です。



改善しつつある保育士の給与


もともと女性一般のお仕事と比較すると、そこまで安すぎるということはなかった保育士の給与ですが、待機児童問題を背景に、さらに改善してきています。特に都市部では保育士が不足していることから、借り上げ宿舎制度などの手当面も含めて、待遇は今後もゆるやかながら向上していくことでしょう。

一方で、地域によって給与額に差があるところは否めません。そのため、保育士としてある程度の待遇を求める場合、求人情報だけでなく、就職や転職するエリアにも目を向けてみるとよいでしょう。



出典:保育士確保/厚生労働省


出典:賃金構造基本統計調査(2017年)/厚生労働省


出典:幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査(平成29年度)/内閣府


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