保育士の勤務時間は、正社員やパートなど雇用形態のほか、勤務スタイルによっても大きく変わるようです。今回は、シフト制や固定制など多様な働き方を選択できる保育士さんの勤務時間について、平均時間数や時間外労働の実態を紹介します。また、勤務形態やパターン別の勤務時間例などもあわせてまとめました。
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保育士の勤務時間は長い?
時間外保育や延長保育などを行うことも多い保育園。
保育士さんは、朝から夜まで働いているイメージや長時間労働の仕事という印象を持たれることも多いかもしれません。
ここでは、保育士の平均勤務時間や時間外労働について説明します。
平均勤務時間
2019年の厚生労働省の資料によると、保育士の1カ月あたりの平均所定内実労働時間数は163時間と説明されています。
1カ月に20日勤務した場合を例にすると、1日の勤務時間はおよそ8.35時間となる計算です。
原則1日の労働時間は8時間と定められているので、そこまで勤務時間が長いわけではなさそうですね。
時間外労働の実態
厚生労働省の資料によると、2019年の保育士の時間外労働時間数の平均は1カ月あたり4時間となっています。1カ月に20日勤務した場合、1日の時間外労働は約12分程度です。
ただ、実際には行事の準備や製作物などの持ち帰り仕事があることも多いため、実態としてはもう少し多いかもしれません。
時間外労働をなるべく減らし、所定の勤務時間内に仕事を終えるためには、ICTシステムを活用して業務を簡素化したり、業務を可視化して優先順位をつけたりするなど、取り組み方を工夫することが必要となるでしょう。
出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省
保育士の勤務形態
保育士さんはどんな勤務形態で働くことができるのでしょうか。簡単に解説します。
シフト制勤務
シフト制は、基本的に勤務時間や出勤日が固定されていない働き方のことを言い、保育士さんにとって最もポピュラーな働き方でしょう。
1日単位や週単位など園によってさまざまですが、出勤の時間や退勤の時間、休日なども一定ではなくバラバラなのが特徴です。
ただ、シフト制のなかにも「自由シフト制」「固定シフト制」「完全シフト制」といった種類があります。
なかでも固定シフト制の場合は、出勤する曜日や時間帯をあらかじめ相談しておくことで、毎週同じようにシフトが組まれることになっているそうです。
固定時間勤務
固定時間制度は、一般的に企業などで多く導入されている勤務形態です。
就業規則によって、曜日や終業時間、休日が定められており、それにしたがって勤務する働き方を指します。
固定勤務制を導入している保育園もありますが、一般的ではないようです。
決まった時間に働きたい方や、先々の予定を組みたい方などには向いている働き方かもしれません。
短時間勤務
短時間勤務制度は、育児・介護休業法によって定められている働き方です。
園によってはこの制度を導入しているところもあるかもしれません。
対象となるのは「3歳に満たない子を養育する労働者」で、育休明けの保育士さんが職場復帰しやすくするための勤務形態のようです。
原則として、1日の所定労働時間が6時間(5時間45分~6時間)と決められているので、育児をしながら保育士の仕事を両立したい方にはぴったりの働き方かもしれませんね。
変形労働時間制勤務
変形労働時間制とは、勤務時間を週単位や月単位などで設定し、繁忙期や閑散期などの時期に合わせて勤務時間を調整できるものです。
基本的に、労働基準法において労働時間は1日8時間、週に40時間までと定められています。
しかし、変形労働時間制を導入していれば、労働時間を月や年単位で調整できるので、繁忙期に1日8時間を超えて労働した週があったとしても、他の週の労働時間を減らすことで時間外労働として扱わなくてよいこととなります。
繁忙期と閑散期のメリハリがある園で働く保育士さんに向いている勤務形態かもしれません。
【パターン別】保育士の勤務時間
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保育士の勤務時間を、勤務形態のパターンごとに紹介します。
シフト制で働く場合
多くの保育園では、「早番」「中番」「遅番」といった3つの時間帯に分かれたシフトを採用しているでしょう。
シフト制で働く場合の勤務時間の例は以下のようになります。
- 早番【7時〜16時】:登園前の準備や子どもたちの迎え入れを行う
- 中番【9時〜18時】 :朝の会や帰りの会、日中の保育を行う
- 遅番【10時〜19時】:帰りの会のあとに子どもたちを預かる
※勤務時間6時間以上の場合45分以上、
勤務時間8時間以上の場合1時間の休憩
中番の時間帯は保育士が多く必要になるため、シフトに入る割合も多くなるようです。
パートやアルバイトなど、数時間の勤務の場合は朝や夕方以降の時間に入ることもあるかもしれませんね。
固定勤務で働く場合
正社員の場合、固定勤務で働くと基本的に1日8時間労働となります。
主に、子どもたちが保育園にいる日中の時間帯に働くことが多いようです。
固定勤務で働いた場合、「8時~16時30分」「9時~18時」などが一般的な勤務時間かもしれません。
短時間勤務で働く場合
短時間勤務制度は1日6時間までと定められているため、早朝からお昼過ぎまで働く場合やお昼前から夕方頃まで働く場合などがあるでしょう。
短時間勤務で働く場合、勤務時間は「8時~15時」「9時~16時」などとなりそうです。
変形労働時間制勤務
保育園の場合は1週間や1カ月単位の変形労働時間制を採用していることが多いかもしれません。
1週間単位と1カ月単位の変形労働時間制で働いた場合の勤務時間の例は以下のようになります。
<1週間単位>
<1カ月単位>
変形労働時間制を採用している園で働けば、普段から「週末が忙しい」「月初のほうが忙しい」など、ある程度忙しさのパターンが決まっている園において、残業時間を削減することができるでしょう。
保育士さんと園の両者にメリットがある働き方と言えそうです。
保育士の休日・有給休暇について
ここまで、保育士さんの勤務時間や勤務形態について見てきましたが、休日や有給休暇をきちんととれるのか気になった方もいるかもしれません。
保育士さんは主に週休2日制、あるいは完全週休2日制で働いていることが多いようです。
完全週休2日制で働いた場合、年末年始や夏季休暇、祝日などを含めると年間でおよそ120日程度休めることになります。
一方週休2日制で働いた場合、週休1日の週が月に1度あったと仮定すると、休暇や祝日を含めて年間でおよそ105日から110日程度休めると考えられるでしょう。
また、最近は働き方改革の影響で有給休暇の取得を促進している保育園も多くあります。
行事前の忙しい時期や人手不足の園などでは取りづらさを感じることもあるかもしれませんが、しっかりと職員に休みを与える園も増えつつあるようです。
仕事と私生活を両立してバランスよく働きたいという方は、求人票や園のホームページなどで休日数や有給休暇の取得実績などを確認しておくとよいでしょう。
保育士の勤務時間の実態を知り、自分に合わせた働き方を選ぼう
今回は、保育士の平均勤務時間や時間外労働、パターンごとの勤務時間について紹介しました。
保育士の平均勤務時間や時間外労働はそこまで長いわけではないものの、持ち帰り残業という習慣が残っている園もあるため、一概に長時間労働ではないとは言い切れないかもしれません。
保育士の働き方として一般的なのはシフト制ですが、正社員やパートやアルバイトなどの雇用形態にかかわらず、固定勤務制や変形労働時間制など多様な働き方を採用している園も多くあるようです。
最近は保育士さんが働きやすいように積極的に休みを増やしたり時間外労働を減らしたりする取り組みをしている園もあります。
自分に合った勤務スタイルを選べば、仕事とプライベートのメリハリをつけて働けるかもしれませんね。