Q.「自分にとって、「よい保育」が、まだよくわからないのですが…」
A.「よい保育」…何が「よい保育」なのか。保育士さんが考えこんでしまうことは、よくあることだと思います。
それは、それだけ「よい保育」をしたい!という思いがあるということです。
素晴らしいことだと思います。
よい保育って何だろう?
では、今回は「よい保育」について考えてみましょう。
ご質問は「自分にとって」という言葉で始まっています。
自分が何をしたいのか、するべきなのか、というトコロでしょうか。
この質問は、「どのバスに乗ったら良いですか?分からないので教えてください」と同じ類の質問です。
もし、誰かにバスターミナルで、そのように質問されたら、あなたは何と答えますか?
「えーーーっと、どこに行かれるんですか?」じゃないですか?ですよね(笑)
行先を教えてもらわないと、どのバスに乗ったら良いのか、答えられませんよね。
つまり、大事なのは行先だということです。
あなたが保育の仕事に取り組むうえで、行先はどこですか?そこを明確にしてもらったら、おのずと答えが出てきます。
行先とは、つまり目的地=目的です。
保育の目的は、子どもたちの未来が望ましいものになること
保育の仕事の目的は何でしょうか?
「保育所保育指針」にはこう書いてあります。
「子どもが、現在を最も良く生き、望ましい未来を作り出す力の、基礎を培うこと」。
子ども自身の「最大の利益」を尊重し、子ども自身の持っている力で、それぞれが望ましい未来を作っていけるよう、乳幼児期の今、基礎部分を培いましょう。これが「保育の原理」です。
つまり、保育の目的は「子どもたちの未来が、望ましいものになる」ことです。
目の前に子どもたちが、どんな大人になってほしいか考えよう
目の前にいる子どもたちが、「どんな大人になって欲しいのか」と考えてみてください。
「こんな大人になって欲しい、こういう人になって欲しい」
そうして思い描く子どもたちの未来の姿が「保育の目的」なのです。
いかがですか?
きっと将来の姿、こうなって欲しいという姿が、ありますよね?
それを目的にすえたとき、では今、何をしたら良いのか、ということです。
こうなって欲しいという姿が明確になったら、あとは簡単です。
その姿を先生が見せていけば良いのです。
子どもはどうやって学びますか?
周りを見て真似をして学びますね。
日本語を聞いて育てば、日本語を覚えます。
アメリカで生まれた子は英語を覚えます。
関西の子は関西弁です。
周りにあるものを吸収するワケです。
よい保育とは、よい見本を見せること
例えば、日本語を覚えて欲しいと思えば、周りが日本語を使うことです。
正しい日本語を覚えて欲しいと思えば、周りが正しい日本語を使うこと、美しい日本語を覚えて欲しければ、美しい日本語…。
子どもたちに、自分の意見をしっかり言って欲しいな、と思えば、先生が自分の意見をしっかり言うこと。
挨拶のできる人になって欲しいと思えば、保育者が挨拶をしっかりすること。
まずは保育者が、良い見本を見せていくことですね。
優しい人、思いやりのある人になって欲しいな、と思えば、先生が優しい人でいてください。
思いやりの姿を子どもに見せてください。
人を大切にする姿を、先生自身がお手本として、子どもたちに見せていくこと。
これが一番大切なことです。
先生たちの姿を、子どもたちはよく見ています。
私たちは、いつも、子どもたちに見られています。
「よい保育」とは「よい見本をみせること」です。
迷ったら、保育士の姿が子どもにどう見えているかを考えよう
まずは「保育の目的」がブレていかないことが何より大事です。
何かに疑問を感じたら、「子どもに、保育者の姿がどう見えているか」を考えてください。
その姿が、将来なって欲しい大人の姿なのかどうか。
おのずと答えは出るハズですよ!!
※この連載では、現役の保育士の皆さんからのお悩みを募集しています。
こちら(info@hoikushibank.jp)まで、保育士お悩み相談と明記の上、お送りください。
プロフィール
内田淑佳(うちだよしか)
一般社団法人そだち 代表理事。心理カウンセラ―。
保育士、認可保育園の園長などを経て、一般社団法人を立ち上げ、子育て支援、保育運営サポート、研修講師を数多く務める。
カウンセラーとしてメンタルサポートの仕事に取り組みつつ、現役の保育士、保育教諭から主任・園長などの管理職、資格取得を目指して勉強中の人、潜在保育士などに向けて、保育の仕事の素晴らしさや、保育をする上で大切なことを伝え続けている。
ウェブサイト https://www.sodachi.net/