次世代の保育士を育てるために実習生の指導に取り組む採用担当者の方もいるでしょう。自園の保育方針や業務内容を伝え、保育士として成長できるように指導することが大切です。今回は実習生を指導する際の注意点や保育実習日誌の添削方法を紹介します。「身だしなみが整っていない」「指示を待っている姿が多い」などケース別の指導ポイントもまとめました。
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保育実習生の指導に取り組もう
保育士の卵を育てる大切な機会「保育実習」。後輩を育てるために必要な期間ですが、中には指導方法について悩む方もいるかもしれません。
そもそも保育実習には以下のような目的があります。
- 保育士としての経験を積む
- 子どもとの関わり方を学ぶ
- 社会的なマナーを身に着ける
このような目的があることを理解したうえで、実習生にとって学び多い機会となるように指導することが大切になります。
実習生の指導ポイントや日誌の添削方法などを把握して人材の育成に役立てていきましょう。
保育実習生を指導する際に気をつけること
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まずは実習生を指導する際に気をつけるポイントを紹介します。
実習生のフォロー態勢を整える
実習生を受け入れるうえで大切なのが、園のフォロー態勢を整えることです。指導担当や配属クラスを決定し、実習生の成長を支えられるように準備しておきましょう。
物理的な環境を整える際に必要な物をまとめました。
- 実習生用のロッカーや机、椅子
- 園の設備や保育方針・内容を示した資料
- 職員の名前・担当クラスの子どもの名前一覧
新しい環境に戸惑う実習生も多いでしょう。職員同士で意見を言い合い、必要なものをリストにして準備するとよいかもしれません。
最初に園の特色や保育方針を伝える
最初に実習生には園の特色や保育方針について詳しく伝えていきます。
保育園ごとに「子どものことをニックネームで呼ばない」「音楽遊びのときは自主性を大切にするために必要以上に声かけをしない」などさまざまなルールがあることでしょう。
実習生は新しい環境に慣れることが精いっぱいでルールを汲み取ることに時間がかかるかもしれません。実習が始まる前に園の方針を明確化して、きちんと説明できるようにしておきましょう。
実習スケジュールを明確に伝える
幼稚園実習、保育園実習と施設によって違いがあるものの、実習期間は約2週間であることが多いかもしれません。
最初に実習スケジュールを伝えておくと、実習生も見通しを立てて部分実習や責任実習の準備ができるでしょう。
実習スケジュールの一例と内容は以下の通りです。
日程 | 実習内容 |
---|---|
1日目 | 園の説明・観察実習 |
2日目 | 観察実習 |
3日目~6日目 | 参加実習(5日目:部分実習において絵本の読み聞かせあり) |
7・8日目 | 休み |
9日目 | 部分実習(帰りの会) |
10日目 | 部分実習(設定保育) |
11日目 | 責任実習(全日) |
12日目 | 参加実習・実習の振り返り |
- 観察実習:保育士と子どもの様子を記録する
- 参加実習:保育士の補助を行う
- 部分実習:ひとつの場面を全て担当する
- 責任実習:1日の保育を全て担当する
事前にスケジュールを実習生に渡し、疑問や質問がないか確認するとよいでしょう。指導案の提出期限なども含めて伝えられるよう、内容を明確化することがポイントです。
また、各幼稚園、保育園で実習中に行事を予定しているケースもあるかもしれません。その際は、行事の流れなどをあらかじめ伝え、当日に戸惑わないようにフォローすることも大切ですね。
【ケース別】保育実習生の指導ポイント
ケース別に実習生の指導ポイントを紹介します。
身だしなみが整っていない
実習生の中には身だしなみに問題がある方もいるかもしれません。実習生とはいえ、子どもたちにとってはお手本となる存在です。
保護者の方から大切なお子さんを預かっているということを伝え、身だしなみを整える大切さを理解してもらいましょう。
以下のような身だしなみのチェック表を作り、自身で確認してもらうとよいですね。
身だしなみのチェック項目 | チェック内容 |
---|---|
爪はのびていないか | |
長い髪の毛は結んでいるか | |
前髪で顔が隠れていないか | |
ピアスやネックレスなどのアクセサリー類は外しているか | |
香水など強い香りのものをつけていないか | |
特に、爪がのびていた場合は、子どもたちを傷つけてしまうこともあるかもしれません。充分注意するように伝えましょう。
敬語が身についていない
敬語を上手に使いこなせず、言葉遣いが荒い実習生もいるかもしれません。「です・ます」口調を心がけ、保護者の方と話す際も丁寧に対応するように声をかけていきましょう。
また、中には「あの~」「また~」など語尾をのばすといった口癖がついている方もいるかもしれません。社会人として働いたときに言葉遣いがなっていないと苦労することも多いものです。口癖を直すように声をかけることも大切ですね。
積極性が見られない
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実習生の中には「指示しないと動かない」「指示を待つことが多い」など積極性に欠ける方もいるかもしれません。
そのような方には改めて『実習の目的』を伝え、保育実習でたくさんの経験を積んでほしいことを話しましょう。また、不安や心配な点がある場合は相談に乗り、コミュニケーションを図ることも大切にするとよいですね。
特定の子どもとばかり接する
いつも特定の子とばかり関わる実習生もいるかもしれません。
子どもたちの中には自分から積極的に実習生に関わろうとする子もいれば、人見知りでなかなか話しかけることができない子どももいます。そういった子にも目を配ることを伝え、多くの子どもと向き合うことを伝えましょう。
保育実習日誌の添削ポイント
最後に保育実習日誌の添削ポイントをまとめました。保育実習日誌は実習生がその日に学んだことや気づいたことを記載する大切な日誌になります。添削を行い、実習生の成長を支えていきましょう。
①誤字脱字はないか
まずは実習日誌全体を読み、誤字脱字がないかチェックしていきましょう。誤字脱字があった場合は見直しの大切さを伝えるとよさそうです。
②表記ルールに沿っているか
保育実習日誌を書く際、表記ルールを設けている幼稚園や保育園は多いでしょう。
例えば、
- ✕子供→〇子ども
- ✕勉強する事→〇勉強すること
- ✕健康の為→〇健康のため
- ✕出来る→〇できる
など、細かな規定を設けている場合もあるかもしれません。園の表記ルールに従って添削することが大切です。
③実習生自身の考えを記入しているか
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実習日誌には「子どもの姿」や「保育者の援助方法」「実習生の活動の様子」の内容を書く欄があるでしょう。
実習生は自身の気づいたことや考えをこの欄に記載していきますが、記録が中心になり、自身の考えが書かれていないこともあるかもしれません。
「保育者の声かけについてどのように感じたのか」「実習生の行動の振り返り」などが記載されているのかを確認し、気になった点を添削していきましょう。
④意欲が高まるコメントを記入する
実習生は不安や緊張感の中で実習に取り組んでいることが考えられます。実習日誌ではよかった点をできるだけ褒めて、子どもたちと自信をもって関わることができるようにコメントを記載していきましょう。
例えば、
「今日は子どもたちと積極的に関わっていましたね。〇〇先生とたくさん話ができて子どもたちもとても楽しそうでした。〇〇先生は子どもたち一人ひとりに丁寧に対応していて、とても安心感があります。もう少し大きな声で話せるとより〇〇先生のよさが表れると思いますよ。」
といったようにまずはよい面を褒め、続いて期待することや課題を伝えられるとよいですね。
受け入れ態勢を整えて保育実習生の指導に取り組もう
実習生の中には「子どもとの接し方が分からない」「保育日誌を書くことが苦手」などさまざまな不安を感じながら実習に臨んでいる方もいるでしょう。
受け入れ態勢を整えて、少しずつ保育士として成長することができるように見守ることが大切です。
また、できるだけ実習生のよい面を褒めて「これからも保育士としてたくさんの経験を積んでいきたい」という意欲を育てられるような指導ができるとよいですね。