保育士資格が取得できる国家試験対策として、民間企業が提供する「通信講座」で取得を目指すことができます。今回は、通信講座の勉強に必要な費用や学習期間や国家試験の合格率と難易度、実技試験対策や実習やスクーリングは必要かなど、通信講座とはどんな学習スタイルで、どのようなメリットがあるかを、受講前に分かるよう詳しくまとめました。
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■目次
保育士資格の取得を通信講座で目指すには
通信講座は資格取得に国家試験合格が必要
保育士資格取得には次の2つの方法があります。
・指定保育士養成施設である大学・短大・専門学校・通信制教育で、指定単位をすべて取得し卒業する
・国家試験で筆記試験9科目全て合格後・実技試験2科目(3科目中から選択)を合格することで取得できる
指定保育士養成施設で単位を取得して卒業し、資格を取るためには、最低2年以上・費用は最低でも50万円以上かかります。
現在、民間企業が用意する通信制の「通信講座」とは資格取得のために、国家試験合格を目指して試験対策をするための、独学用教材を勉強するスタイルを指すことが多い傾向です。
通信講座を始める前に国家試験の受験資格の確認を
・学歴による受験資格
国家試験の受験資格は学校教育法に基づいた大卒・短大卒であれば、どの学部学科でも無条件に受験資格があります。しかし、中退、専門学校卒、高卒、中卒の場合にはある一定の基準を満たさないと受験資格が得られない場合が多いため、受験資格をしっかり確認してください。
学歴による受験資格についての詳しい説明はこちらから
・職務経験による受験資格
中学や高校を卒業している場合、指定されている施設で、ある一定期間の勤務経験があれば、受験資格が得られます。
職務経験による受験資格についての詳しい説明はこちらから
・特例制度による受験資格
幼稚園教諭免許状を取得していて、定められた期間の実務経験がある人には、試験のうち幾つかの科目が免除になります。
特例制度についての詳しい説明はこちらから
出典:「特例制度について/一般社団法人全国保育士養成協議会」
通信講座の勉強スタイル
国家試験に合格するための独学スタイルになります。
専用の教材を購入
通信講座では、各会社が試験対策用に編集した教科書、問題集、DVD、インターネットなどの教材を使って勉強します。保育士になるための筆記試験対策用教材が、全教科一式セットになっています。科目別で教材が分かれていて、科目ごとに購入を決められる通信講座もあります。自分の弱点を克服するための補助・追加教材や、実技対策用の教材などは、別途購入が必要なケースが多いです。
学習スタイル
基本的には教材を使っての独学スタイルです。多くの通信講座は定期的もしくは自分のペースで添削課題の提出サービスを設けています。提出した課題を指導員に添削してもらい、見直すことで弱点を克服していけるシステムです。疑問点や質問は通常、メールや郵便で受けてくれます。eラーンニングのコースを設けている講座では、直接講師に質問することが可能な形態もあります。PCを使ってのゲームのような反復トレーニングや、DVDの映像でより具体的で分かりやすい説明をするなど、工夫を取り入れた学習スタイルを打ち出す通信講座が増加しています。
通信講座で保育士資格を目指す場合の期間と費用
学習期間と最短期間
勉強期間は1~2年間が一般的です。
多くは教材が一括で届くため、興味のある教科や得意な教科から始めるなど、自分のペースで勉強を進めることができます。頑張り次第では勉強期間を短期間で終えることも可能で、最短で3~6カ月の勉強期間で取得する人も。幼稚園教諭免許を持っている人で特例制度が適用される場合は、免除教科があるため、より短期間がつ安い費用での通信講座の利用が考えられます。また、添削を受けられる「学習補助期間」は、通常1.5~2年間ほどの期間を設けている通信講座が多く、補助期間内で無理なく学習を進め、3~4回の試験チャレンジが可能です。
学習費用
通信教育の費用は、すべての教科を購入するか、選択教科のみ購入するかで費用が変わります。また、筆記試験に合格しないと実技試験は受験できないため、実技試験対策コースは別途販売になっていることが多いです。また、別料金で通学制講座を設けている講座もあり、利用するコースや形態によって変わってきます。
一般的には、講座数ごとの教材費が主な内訳で、1講座5000円程度、全講座約5万から、選ぶ教科数や特殊な講座を選択すると30万円程度になることも。
しかし、通学制や通信制の大学・専門学校にかかる費用を比べると、安い費用で済むことは大きな魅力の1つです。
通信講座で保育士の国家試験を目指す場合の合格率と難易度
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保育士の国家試験合格率と難易度
厚生労働省が年2回発表している保育士試験の全教科合格者の割合は、例年20%前後と合格者の割合が少なくなっています。保育士資格と同じ医療・福祉分野の国家資格の合格率を見てみると、看護師資格試験の合格率は2018年度で91.0%、薬剤師では、70.58%の受験者が合格しており、同じ国家資格でも保育士の資格取得の難易度は高いといえるでしょう。
出典:「第103回薬剤師国家試験の結果について」/厚生労働省
出典:「第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験及び第107回看護師国家試験の合格発表について」/厚生労働省
通信講座の国家試験合格率と難易度
通信教育で国家試験の合格を目指した場合、通信教育各社が公表している全試験合格率は50%ほどで、一部教科の合格は30~40%前後と低くない合格率となっているようです。試験は1年間に2回受験でき、合格科目は3年間持ち越しができるので、自分の学習ペースで全教科合格を目指すことができます。
保育士資格を通信講座で目指す場合の実技・実習対策
通信講座の場合は学校と違って、スクーリングなし、実習はありません。ただし保育士資格の取得には、筆記試験と実技試験の両方の合格が必須です。どのように対策をするべきでしょうか。
通信講座での実技試験対策
国家試験では筆記試験合格後に、3教科の中から2教科選ぶ実技試験の受験があります。
実技対策を独学で行うには、ピアノ等は1人では難しいため、自分で教室を探して通う方法があります。通信講座では、対策用に別途で教材によるコースを追加購入できるよう用意があることがほとんどです。実技対策用の通学講座を設けているところもあります。教材ではDVDやWEBを使った配信授業など、視覚的に見て分かりやすいよう工夫されています。作品を提出して添削も受けられるサービスもあります。
実習
「実習」は資格取得の要件ではありませんが、いざ試験に合格し、資格を生かして就職したい場合、求人案件で実働経験を求められるケースも多いです。実習がない分、実務経験はパートや保育補助で働くなどして、自身で経験を重ねる場を探すことが必要になります。
通信講座は保育士資格をさまざまな境遇や環境から目指せる
保育士資格を目指す上で、国家試験の受験資格は、現在ではより多くの人が目指しやすい間口の広い規定になっています。通信講座では、国家試験を受験する資格を得るために、働きながら試験対策の勉強を両立することが可能です。費用面や学習期間、勉強スタイルも、より自分に合った自由度の高い方法が多数の選択肢から選べます。勉強に対するモチベーション維持ができるよう、自分に合った無理のない学習計画を立て、保育士試験にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。