人材の定着率をアップするため、保育士さんがすぐ辞める理由を知りたい採用担当者の方もいるかもしれません。早期離職の理由として、上司や同僚との関係や業務量の多さ、待遇への不満などが挙げられるようです。今回は、保育士さんがすぐ辞める6つの理由や早期離職を防ぐ方法を徹底解説します。人材の定着化に向けて取り組んでいきましょう。

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■目次
保育士を採用してもすぐ辞めるのはなぜ?
保育士を採用しても早期退職などで人材が定着せずに悩む担当者の方もいるかもしれません。
辞めてしまう保育士さんが多いと園の運営に支障をきたす場合もあるでしょう。厚生労働省の資料によると、保育資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者のうち、保育士としての勤務年数の約半分が5年未満であることがわかります。

出典:『魅力ある職場づくり』に向けてp4/厚生労働省からの抜粋
勤務年数が5年以上10年未満の方が30.7%に対して、1年未満から3年未満の方が30.2%を占め、早期退職される方の割合も多いことがわかります。
なぜ、このように保育の資格を保有しながらもすぐに辞めてしまうのでしょうか。
まずは保育士さんが早期離職をする5つの理由について詳しく解説します。
保育士をすぐ辞める理由:①職員同士の人間関係
人間関係の悪さを理由に辞めてしまう保育士さんが抱く悩みについて、見ていきましょう。
園長や副園長との人間関係
園長先生や副園長先生が威圧的な場合やトラブルが起きても職員任せの対応を強いるケースなどは園の方針に疑問を感じ、辞めてしまう方がいるようです。
特に新人の保育士さんは、子どもや保護者への対応に不安を抱くことも少なくありません。上司の方に頼れない状況が続けば、転職を考えることもあるでしょう。
保育士同士の人間関係
保育施設では職員同士で協力して保育活動を行う場面が多いものです。
登園の見守りや食事や排泄の援助、製作活動の補助など協力して取り組みます。しかし、いっしょに働く職員が感情の起伏が激しかったり、保育観を押しつけてきたりする方の場合、「これから信頼関係が築くのは難しそう…」と不安を感じることがあるでしょう。
そのような状況が続けば、質問や疑問があっても「今聞いてよいのか」「誰に聞けばよいのか」とあたふたしてしまうことも考えられます。雰囲気の悪さが子どもの保育に影響してしまうのではないかという想いに駆られ、最終的に早期離職を選ぶこともあるようです。
保育士をすぐ辞める理由:②仕事量が多い

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保育園に就職すると日常的な保育業務以外にも覚えることがたくさんあり、仕事量の多さに驚く方もいるのではないでしょうか。
子どもの保育活動以外にも保護者対応や園内の環境整備、行事の企画、準備、運営などさまざまな業務を担うことでしょう。
指導案の作成や連絡帳、保育日誌など多くの書きものがあり、仕事量をこなせずに悩みを抱えるケースもあるかもしれません。
その結果、思い描いていた保育士の仕事内容とギャップを感じ、すぐに辞めてしまう保育士さんも少なくないようです。
保育士をすぐ辞める理由:③労働条件や待遇に不満がある
保育士という仕事に対して、労働条件や待遇に対する不満を抱える方も多いようです。
新人の方が抱きやすい悩みには以下のような点が挙げられます
- 勤務時間が長い
- 持ち帰り残業が多い
- 給与が安い
- ボーナスがない
- 事務作業が多く、保育に集中できない
一般的な企業では休憩時間がありますが、保育士さんは昼食時には子どもの援助、園児が帰宅した後も園内の環境整備や連絡帳の記入などがあり、なかなか休憩時間が取れないことも多いようです。
勤務体制を変えることの難しさを感じれば、「すぐに辞めて転職したほうがいいのでは?」と考える方もいるでしょう。
保育士をすぐ辞める理由:④キャリアアップが期待できない

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保育士さんの中にはキャリアアップを考え、担任を経て主任や副主任などへの昇進を希望する方が多いでしょう。しかし、「役職が少ない園のため、昇格は期待できない」「経験年数を重ねても新人扱いが続く」など、キャリアアップの難しさを考えて離職する方もいるようです。
近年では国のキャリアアップ制度に基づいて、「主任」「専門リーダー」「副主任」といった役職を設けている園も増えています。
「この園でキャリアアップしたい」という意欲を高めるためにも、各園で環境の整備を行う必要があるでしょう。
保育士をすぐ辞める理由:⑤気力・体力が保てない
保育士は保育活動の他にも園児の安全性の確保、感染症対策など園内の環境を整える必要があるでしょう。
しかし、子どもたちの様子を常に見守りながら、衣服の着脱や食事の援助をし、保護者対応にも追われ…とさまざまな役割を担うことで気力や体力を保つ自信がなくなり、辞めてしまうケースがあるようです。
特に人材不足の園では、国の定めた職員の配置人数をぎりぎりの状況で運営を続けている場合も考えられます。保育士さん一人ひとりの負担が多い中、頑張りすぎて体調を崩してしまう方も少なくありません。
保育士をすぐ辞める理由:⑥責任の重さに対応できない
近年、保育園での衛生管理や安全管理体制が不十分なことから、痛ましい事故が報告されています。 このようなニュースを見るたびに、業務に対して不安を抱く保育士さんも多いでしょう。
保育士は園児の大切な命を預かる仕事になりますが、実際に「人手不足で子どもの安全性が確保できない」「子どもの人数が多く、衛生管理が行き届かない」など悩みを抱くことも考えられます。
仕事に対する責任の重さに耐え兼ねて、違う職種への転職を考える方もいるかもしれません。
保育士の早期退職を防止する方法
保育士さんが早期退職を希望する理由がわかったところで、離職を防ぐために必要な対策について見ていきましょう。
新人保育士さんの教育方法を見直す
まずは新卒、中途採用に向けて新人保育士さんの教育方法の見直しを行いましょう。
子どもたちの保育計画を立てる園は多いものですが、職員向けの教育計画を策定する園は少ないかもしれません。
一般企業では新人育成に向けたマニュアルを作成している会社もあるようです。保育施設においてもマニュアル化して育成体制を整え、キャリアアップに向けて指導していきましょう。
その際に教育担当を誰が担うかを決め、担当者がいない場合の代理についても明確にすることが大切です。新人保育士さんが仕事中に質問があっても「誰に聞けばよいのかわからない」という思いを抱かないよう、職員同士が連携することが重要かもしれません。
定期的に保育士さんと面談を行う
早期退職を希望する保育士さんの中には、仕事に対する悩みや不満を誰にも相談できずに辞めてしまうケースも多いようです。
このような状況を改善するためにも、職員に対して園長先生や副園長先生が定期的に面談を行い、メンタルケアに取り組む必要があるでしょう。
また、上司の方に相談することに抵抗がある方もいるかもしれません。
口頭で相談しにくい場合なども考え、SNSの活用や定期的なアンケート調査の実施などを行い、精神的ケアを重視した取り組みに目を向けることを意識しましょう。
残業時間や業務内容を把握し、仕事量を見直す
保育士さんの早期退職を防ぐためには、職場の労働環境を把握し、業務量の見直しを求められるでしょう。対策方法としてICTシステムの活用や仕事量に役割分担の明確化について紹介します。
ICTの活用
近年、保育士の労務管理や園児の情報管理などでICTシステムの導入している園が増加しています。
ICTシステムを導入すると、タブレットにカードリーダをかざすだけで簡単に出勤・休憩・退勤が打刻することができ、自動的に集計することも可能となるようです。
そのため、職員の残業時間や休憩時間などを正しく記録・把握し、勤務時間の調整もしやすくなります。園児の情報を一括管理することで職員同士の共有も簡略化につながるため、ICTシステムの活用を検討してみてもよいかもしれません。
役割分担の明確化
保育士の仕事は、保育活動以外に園内の清掃、壁面製作、企画運営などがあり、職員で役割分担を行うことも多いでしょう。
業務量に偏りがないのかを確認するためには、一人ひとりの業務を洗い出し、どのような分担が行われているのかを見直す必要があるかもしれません。
また、教育担当の方が新人育成に集中できる環境を整えることも大切です。それぞれの役割を明確にして、当番制などを取り入れると業務の効率化にも役立ちそうです。
保育士がすぐ辞める園にならないように職場環境を改善しよう
採用が成功しても保育士さんが早期退職してしまえば、人材不足は解消されません。
人材を確保することはもちろん大切ですが、保育士さんが働きやすい職場を作り、人材の定着化に目を向けることも大切になります。
定期的な面談やストレスチェック、仕事量の見直しなどを行いながら、職員一人ひとりが前向きにキャリアアップできるような環境整備に取り組めるとよいですね。