保育士の離職率が高まる中、「採用ミスマッチ」が起こる理由を知りたい担当者の方もいるかもしれません。中途採用が成功したにも関わらず、なぜ早期退職などによって人材の定着化につながらないのでしょうか。今回は保育士の採用ミスマッチが起こる4つの原因や、定着率アップに向けた対策方法について紹介します。
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■目次
保育士採用においてミスマッチを防ぐには?
保育士の人材が不足している中で、ミスマッチに悩む採用担当者の方もいるでしょう。
採用ミスマッチとは、企業側と求職者とのニーズにギャップがある状態をいい、せっかく入職してもらったにもかかわらず早期離職を招く恐れがあります。
保育施設の場合も、勤務開始後に求職者側と施設側の希望条件(勤務条件、園の方針、待遇など)が合わず、採用後にミスマッチが起こることも少なくないようです。
中途採用でミスマッチが起こる原因を詳しく見ていきましょう。
保育士の採用におけるミスマッチの原因:①人手不足による仕事量の多さ
保育士の仕事は、子どもの保育以外にも連絡帳の記入や園内の衛生管理、指導案作成、事務作業など多岐に渡る業務があります。園によっては人材不足が深刻化しており、保育士一人ひとりに過度な業務負担がかかる場合もあるようです。
そのため、新人保育士さんも「事前に説明された業務量と違う」「勤務開始後、すぐに担任を任されて仕事量が多い」といった感情を抱いてしまい、採用ミスマッチの原因となるケースも少なくありません。
保育士の採用におけるミスマッチの原因:②人間関係が悪い
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保育園は子どもの保育活動を支える中で、職員同士のチームワークが大切になる職種です。
しかし、新人保育士さんの中には職場の雰囲気が悪く、人間関係が上手くいっていないと感じるケースもあるようです。就職を後悔する方もおり、採用ミスマッチの大きな原因となることが考えられます。
厚生労働省「保育士さんの現状と主な取組」の資料においても、「過去に保育士として就業した者が退職した理由」として、約3割の方が「人間関係」と回答していることが分かりました。
職場の人間関係が悪い中、子どもたちに「友だちと仲良くしましょう」「友だちと協力しましょう。」など道徳的な保育活動を行っていると、自分の環境と子どもへの対応にギャップを感じる方も多いかもしれません。
保育士の採用におけるミスマッチの原因:③労働条件の相違
採用活動を進める中で、雇用形態や給与、休日といった労働条件のすり合わせを行いますが、充分な話し合いが行われていないと採用ミスマッチの原因となるようです。
実際、働いてみると「想像していたよりも賃金が安い」「勤務時間が長く残業が多い」などの理由から希望条件との相違を感じる方も少なくありません。
また、園側から面接時に「産休や育児休業に積極的」と説明を受けていながらも、実際は休日の取得に消極的であることがわかると、認識との違いに不安を抱く場合もあるでしょう。
保育士の採用におけるミスマッチの原因:④園の保育方針が合わない
各保育施設には、「音楽や英語を重視している」「運動や学習に力を入れている」といったさまざまな特色があります。
そうした保育方針の説明を受け、その内容に賛同して応募する方もいるでしょう。
しかし、実際に勤務してみると、「カリキュラムが多く、保育活動をこなすのが大変」「外遊びが少なすぎる」など、園の方針に疑問を感じて辞めてしまこともあるようです。
園と保育士さん自身の保育観に隔たりが生じることで、採用のミスマッチの原因になってしまうといえるでしょう。
保育士の採用ミスマッチを防ぐ!4つの対策
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①求める人材を明確にする
中途採用でのミスマッチを防ぐために、まずは自園がどのような人材を求めているのかを明確にしていきましょう。
現在の職員の勤務状況や残業時間、保育士一人ひとりの仕事量を把握することで、求めるスキルや必要な職員数が明らかになるといえます。
必要な人員数
実際にどの時間帯に何人の保育士さんが求められるのをデータ化し、現場の状況にあった人材を募集することができるでしょう。
求める人物像
求める人物像として以下の要件を意識して明確化するとよさそうです。
- 労働条件
- 経験年数
- 人柄・性格
- 他の職員との相性
特に保育士の人柄や性格は言語化しにくい部分ですが、この点を曖昧にせず、より具体的に示すとよいでしょう。
スキル面では「自分の保育観についてしっかりと説明できる」「子どもの対応の具体例を示し、適切に解答できる」など園独自の基準を設け、採用後のミスマッチを防げるように工夫するとよいかもしれません。
②求人票の内容は正確に記載する
求人票は、求職者側が保育園を選ぶ際の大切な指標となります。
採用が成功しても、求職者側が「実際の勤務状況が求人票と相違があった」という理由で離職することがないように、正しい情報を明確に記載しましょう。
求人の基本的な書き方
厚生労働省の「最低限明示しなければならない労働条件等」は以下の通りです。
- 業務内容
- 契約期間
- 就業場所
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働
- 賃金
- 加入保険
- 募集者の氏名又は名称
※(〇派遣労働者として雇用する場合は雇用形態:派遣労働者などと表記)
上記の内容を正確に記入し、求める人物像を求職者に伝えていきましょう。
残業が多い場合はどうする?
また、人材不足の園は、時間外労働が発生する場合も多いかもしれません。
その際はここ数カ月の残業を平均した数字などを記入することが大切です。それだけを記載すると「残業がある園」という印象で終わってしまう可能性もあるでしょう。
「未経験OKアットホームな環境の中で保育活動ができます!」
「お盆・年末年始に長期休暇の取得可能!子育て中のママもたくさん働いています。」
など、違った視点で自園の特色をアピールして、求職者の目に留まるような工夫も必要になります。
ただし、このように求人票によいことばかり記載するのではなく、マイナスになりうる点も正確に記入することは、ミスマッチの軽減につながるかもしれません。
③保育士採用における面接内容を見直す
面接は、保育士の採用を決定するために重要な項目です。
保育施設では面接を通して求職者とコミュニケーションを取りながら、人柄や自園への適性などを選考します。求職者の人物像を知る大切な機会となる一方で、園の仕事内容を具体的に説明する場となります。
例えば、園見学を行ってから面接してもよいでしょう。
実際の保育現場を紹介すると、一日の保育活動の流れや子どもとの接し方、カリキュラムの説明、勤務体制などを伝えやすくなります。
求職者が勤務を開始する前に働き方や保育方針など具体的なイメージを持つことにつながり、継続的な勤務を後押しできるかもしれません。
また、面接ではよい面ばかりではなく、残業や業務負担などのデメリットも正直に伝えることが大切です。併せて、どんなサポートを行なっているかも説明すれば求職者側も安心して働くことができるでしょう。
④採用後のフォロー体制を整える
保育士さんの採用のミスマッチを防ぐためには、採用後のフォローが重要となるでしょう。
新人の方の不安を和らげるためにも、具体的な対策を練っておきましょう
歓迎方法を工夫する
歓迎会やウェルカムボードを作成し、新人保育士さんに歓迎の気持ちを表しましょう。「あなたと仕事ができることが嬉しい」「いっしょに子どもの成長を見守りましょう」といったメッセージを伝えるとよいかもしれません。
仕事に追われ、新人保育士さんを迎える余裕がないという場合もあるかもしれません。しかし、具体的に歓迎の想いを伝えることで、職場の和やかな雰囲気が伝わり、早期離職を防ぐことができそうです。正社員、パートなど雇用形態に関係なく、平等に歓迎することがポイントです。
新人育成マニュアルを作成する
教育担当の方が忙しい場合や人手不足の園では、新人保育士さんへのサポートが行き届かないケースもあるようです。事前に新人育成マニュアルを作成し、フォロー体制を整えていきましょう。
電話対応や会議の参加の仕方、保護者への接し方などのポイントをまとめるとよいかもしれません。
また、「子どもが足をくじいてしまった」「保護者からクレームがあった」などさまざまなトラブルが起こることも考えられます。事例などを挙げて説明し、報告の仕方や対応方法を伝えるとよさそうです。
その他にも、精神的にケアできる人材を配置したり、意見交換をする時間を設けたりと、悩みを解消して保育に集中できるよう、環境を整えていきましょう。
保育士の採用ミスマッチの防止対策に取り組み、人材確保に活かそう
保育士の人材不足の中、採用ミスマッチを防ぐことは大切です。
園側と求職者側の考えのズレが生じないように、求人票の作成や面接の応対を心がけていきましょう。
また、多忙なあまり、新人保育士さんを充分にフォローする余裕がない保育施設もあるかもしれません。まずは日常的にできる取り組みなどを考え、新人の方が「不安を抱いていないか」「疑問や質問はないか」などの配慮をして、信頼関係を築くことが大切です。
保育士の中途採用を成功に導き、人材の定着に繋げるためにも、採用におけるミスマッチの対策に取り組んでいきましょう。