人材の定着を目指すために、保育士の離職率について知りたい採用担当者もいるでしょう。厚生労働省の資料によると、「職場の人間関係」、「給与が安い」、「妊娠や出産」などさまざまな理由で退職する方が多いようです。このコラムでは、保育士の離職率や退職理由、離職を防ぐための対策などを紹介します。
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保育士の離職率はどのくらい?
厚生労働省の「保育士等における現状」の資料によると、2017年度の離職率は9.3%と報告されています。
そのうち、経験年数が低い職員の離職が多く、約半数が8年未満の方が現場を離れている状況です。
自園の離職率が全国平均よりも高い場合は、人材の定着において対策を立てる必要があるかもしれません。
ま保育士が離職する理由を把握し、早期退職の防止や職場環境の改善などに取り組んでいきましょう。
保育士の離職理由
厚生労働省の資料によると、以下のように約3割が職場の人間関係を理由に辞めていることがわかりました。
続いて「給与が安い29.2%」、「仕事量が多い27.7%」など労働状況に対して不満を抱える保育士さんも多いようです。
その他に結婚や妊娠、出産といったライフイベントにより、家庭と仕事の両立について不安に感じて辞めてしまう保育士さんも少なくありません。
保育士の離職理由について、詳しく見ていきましょう。
職場の人間関係
職員同士の連携が取れず、コミュニケーションが不足している場合に、人間関係の悪化を原因として、退職を考える保育士さんは多いかもしれません。
クラス運営や行事の企画など協力して行う中で、意見が食い違ったり、連絡の共有がスムーズにいかなかったりすることで、風通しの悪い状況となることもあるでしょう。
また、現場の職員の保育観に対して不満を感じると、子どもたちへの接し方や指導案の作成方法などについて疑問を感じ、違う職場に転職を考える保育士さんもいるようです。
給与が安い
「賃金が安い」、「仕事量が給与と見合わない」など待遇面に不満を感じて離職する保育士さんも少なくありません。
経験年数を積んでも給与の昇給につながらない園もあるため、継続的に働くことに対して不安になり、転職を考えるケースもあるようです。
このような状況の中で、全職員に対して月額6000円程度の昇給や役職に応じて月額5000円~4万円程度の手当の支給など、国としても保育士さんの待遇を改善する制度を設定しています。
しかしながら、給与に対する不満は依然として解消されていないようです。
仕事量が多い
保育士の仕事は、保育活動や行事の企画・運営、保護者対応、園の衛生管理などさまざまな業務をこなすことが考えられます。
業務量が多く、勤務時間内に仕事が終わらずに時間外労働や持ち帰り残業が発生していることもあるでしょう。
また、指導案や保育計画、連絡帳作成など書きものがあり、手書きで行う場合は時間がかかることもあるようです。
そうした仕事量の多さに気力・体力が続かず、違う職種に転職してしまうケースもあるのかもしれません。
労働時間が長い
保育士さんは労働時間が長く、残業時間が多いというイメージをもたれている方は多いかもしれません。
実際に早朝保育のための出勤などもあることから、気づけば「12時間~13時間働いている」という方もいるでしょう。
一般的な仕事は休憩時間がありますが、保育士は子どもたちの昼食の配膳や援助、午睡中は連絡帳の記入などで、なかなか休憩が取得しにくい状況にあるようです。
このような場合に、退職を考え、残業のない職種に就きたいと考える保育士さんもいるでしょう。
妊娠・出産
妊娠や出産を機に育児休暇を取らずに、現場を離れる保育士さんもいるようです。
仕事量の多さから、「仕事と家庭の両立は難しい」と考え、子育てに専念するために辞める場合もあるでしょう。
また、担任など重要な役割を果たしていると、「つわりがひどくても代わりの職員がいない」、「育児休暇後にクラス運営を行う自信がない」などが原因で、退職するケースも考えられます。
出典:保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善についてp10/厚生労働省
保育士の離職を防ぐための対策
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次に、保育士の長期雇用を目指して、離職を防ぐ対策方法を紹介します。
待遇面の改善
保育士の退職理由として、給与の安さなど待遇面に対する不満が挙げられます。
職員の仕事に対する満足度を高めるためにも、キャリアアップ制度の導入や福利厚生の充実させることも必要でしょう。
2つの取り組みについて詳しく解説します。
キャリアアップ制度の導入
国は保育士の待遇面の改善に向けて、処遇改善制度を設け、職務分野別リーダー、専任リーダー、副主任保育士といった役職を創設、手当の支給を設定しています。
このような役職に就き、手当を受けるためには、各自治体で開催される研修(乳児保育分野・食育分野など)に参加する必要があります。
待遇面を改善するためにも、現場でキャリアアップ制度を導入し、研修会場や研修内容を確認したうえで、職員が参加しやすい環境を整備するとよいでしょう。
福利厚生の充実
給与以外の福利厚生を充実させることで、職員のモチベーションが高まり、離職防止に役立ちそうです。
福利厚生には、法定福利厚生(社会保健や厚生年金基金など)と法定外福利厚生(住宅手当や特別休暇など)の2種類があります。
「家賃補助の上限8万2000円まで支給」、「リフレッシュ休暇を1年間で3日取得可能」といった自園で取り組むことができる内容を設定すると、仕事に対する満足度が高まることにつながるでしょう。
他園の福利厚生を参考するなどして、どのような内容を設定するか検討することも大切です。
良好な人間関係の構築
厚生労働省の資料では、人間関係が悪いことが原因で退職する方が多いことが分かりました。
離職を防ぐためにも、以下のような機会を設け、風通しの良い人間関係を構築することは重要です。
- 職員同士の交流会
- 園長先生や副園長先生による定期的な面談
- 職員の精神的ケアを行う相談窓口の設置
- 報告・連絡・相談しやすい環境の整備
保育士さんの中には、自身のクラス運営に不安を抱えたり、保護者との連携が上手くいかなかったりと業務中に悩むことも多いでしょう。
気軽に相談できるような関係性を作ることができるように、普段から情報共有をこまめに行い、協力できるチームの形成に取り組むとよさそうです。
結婚・出産後の復職支援
保育士は結婚や出産などを理由に現場を離れることがあるため、育児休暇の取得や復職を支援できるように体制を整えていきましょう。
周りの職員が率先して結婚の際の特別休暇や育児休暇を取得していると、自分自身が結婚や出産をしたときも「この園で働きながら結婚生活、子育てを頑張りたい」という気持ちを抱くことが考えられます。
また、復職後も状況に応じて正社員からパートへ移行できたり、時短勤務制度を活用できたりと雇用形態を多様化し、長期的に働くことができるように整備することも重要です。
出典:保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善についてp10/厚生労働省
保育士の離職率の低い職場を目指そう
保育士の離職を防ぐためにも、良好な人間関係の構築や労働環境の改善は大切なことでしょう。
職員のモチベーションを高めることは人材の定着につながるだけでなく、保育の質の向上にも役立ちそうです。
保育士の離職率の低い職場を目指し、保育士として成長できる職場となるように人材の定着に取り組んでいきましょう。
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