人材の育成や定着化のために重要な役割を持つ「保育士の新人研修」。人手不足の保育業界において、新人の受け入れ体制を整えることは大切でしょう。今回は、保育士の新人研修の役割や研修内容をまとめました。計画する際のポイントや研修のスケジュール例なども紹介しているので、参考にしてみてくださいね。
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保育士の新人研修の役割
新人研修とは、保育園で働き始める新人保育士さんに保育園の方針や仕事内容を理解してもらうための講習のことです。
保育園の研修は、実際に担当クラスに入ってもらい、教育担当の保育士さんが直接指導するという形式を取ることが多いでしょう。
また、園によっては新人保育士さん同士で学びあう場を設け、保育に関して意見交換を行うこともあるようです。
このように新人研修には、新人保育士さんが新しい環境に慣れ、保育士としてのスタートを切ることができるようサポートするという重要な役割があります。研修を計画する際のポイントをおさえ、研修内容を明確にして人材の育成に役立てていきましょう。
保育士の新人研修を計画する際のポイント
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目的やゴールを明確にする
新人研修を行う際に大切なのが、研修の目的やゴールを明確にすることです。例えば、「担任として子どもや保護者との信頼関係築く人材に育成する」「担当クラスの年齢にあわせた保育活動ができるように教育する」など具体的な目的を立てるとよいでしょう。
そのうえで、園長先生や副園長先生、教育担当者など職員同士で話し合い、指導する項目を整理して1年間でどのように育成するべきか、新人保育士さん向けのマニュアルを作成するとよいかもしれません。
園の職員としての育成方針を明確にし、成長を支えるために必要なことを考えていきましょう。
教育担当と研修内容のすり合わせを行う
保育士としての基本的なマナー、指導案の書き方、園児の情報管理など新人の保育士さんは覚えることがたくさんあります。主に教育担当者が指導を行うことから、職員同士で研修内容のすり合わせを行うことが必要かもしれません。
2年目や3年目と経験を重ねた保育士さんに、どのような研修があればよかったのかヒアリングを行い、研修内容を整理していきましょう。
実現可能な研修計画を立てる
新人研修の時期は行事などで忙しくなることが考えられるため、しっかり計画を立てて進めることが大切になります。
保育園での研修のスケジュール例は以下の通りです。
1日目:入社オリエンテーション・職員紹介など
2日目~6日目:担当クラスにて実践研修
・観察実習
・参加実習など
7日目:部分実習①
8日目:部分実習②
9日目:責任実習③
10日目:配属クラスの決定など
上記のように、新人保育士さんが教育担当者のクラスの保育に入るという形で実践研修が行われることが多いでしょう。観察や参加実習を経て、部分実習、責任実習とステップアップしていくことが考えられます。
教育担当の方が行事の企画運営などに携わっていると新人研修まで手が回らない可能性もあるでしょう。育成に集中できるように、業務の役割分担なども工夫するとよさそうです。
【事例あり】保育士の新人研修の内容
保育士の新人研修の内容の一例を紹介します。
保育士としての基本的マナー
まず研修では社会人として、自園の職員としてのマナーを伝えることが重要でしょう。各園で「先生と呼ばず、○○さんと呼び合う」などさまざまなルールを設けている場合もあるようです。
新人保育士さんにマナーや心構えを伝えるうえで重要な項目は以下の通りです。
<身だしなみ>
①髪型をまとめ、装飾品は控える
②清潔感があり、動きやすい服装を心がける
③香水は使用せず、メイクは控えめにする
<心構え>
①正しい言葉遣いを意識する
②笑顔で挨拶することを心がける
③報告・連絡・相談を徹底する
上記の項目を参考に、保育士としての基本的なマナーや心構えを確認するとよいかもしれません。研修を終えたあとも定期的に確かめる時間を設け、保育士さんは「子どものお手本」であることを意識できるような機会を作りましょう。
保護者対応
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新人保育士さんは保護者に対して、どのような対応をとればよいのか迷うことも多いでしょう。
特に子どもの欠席連絡、系列園からの連絡などの電話対応は、礼儀正しく応対することが求められます。研修では、新人の方向けにマニュアルを準備するとよいかもしれません。
新人保育士さんが学びやすいように教育担当が保護者役になり、実践的に練習するなど、研修内容を工夫するとよさそうです。
また、「クラスの子どもが怪我をしてしまった」「保護者から援助方法に対してクレームがあった」などさまざまな状況の中でトラブルが起こる場合もあるでしょう。
研修では、保護者への接し方やクレームに対応するポイントなども伝えられるとよいですね。
子どもへの接し方の指導
子どもへの接し方は経験を重ねることで身につくことが多いものですが、新人保育士さんの中には「子どものケンカの仲裁方法が分からない」「集団遊びが苦手な子への対応が不安」などさまざまな悩みを抱く方もいるでしょう。
研修では、経験を重ねることの大切さを伝え、保育園の方針をもとに事例などを提示しながら説明できるとよいですね。
指導案やおたよりの作成指導
子どもたちの健全な育成を支えるために、保育年間計画や月案・週案・日案などの指導案の作成は重要と言えます。
園によって形式が異なるため、先輩保育士さんの文例などを参考にして、書き方を指導していきましょう。
特に新人保育士さんは指導案を作成する際、「導入」について迷うことも多いかもしれません。研修では、エプロンシアターやペープサート、手遊びなど普段取り組んでいるものを職員同士で伝えあう場を用意するとよさそうです。
また、園だよりやおたよりの作成指導も行うことでしょう。
おたよりは、保護者と信頼関係を育むうえで重要な役割があります。新人保育士さんにおたよりの意味や構成の作り方などを教え、書き方のコツなども伝えられるとよいでしょう。
保育士の新人研修を行い、人材の定着化に役立てよう
新人研修は保育士としての成長を支える大切な機会になります。
はじめは新しい環境に慣れることに精いっぱいで不安を抱くことも多いでしょう。その気持ちを受け止めながら、少しずつ成長できるように思いやりをもって指導することも重要です。
新人の方にとって実りある研修となるよう、育成マニュアルや具体的な研修計画を立てて、実践できるとよいですね。