病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことを言います。転職を考えている保育士さんの中には、病院内保育について知りたいという方もいるのではないでしょうか。今回は、病院内保育の概要や役割、またそこで働く保育士さんの仕事内容やメリットなどについて紹介します。
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■目次
病院内保育とは?
ここでは、病院内保育とはどのようなものか解説します。
病院内保育の概要
病院内保育とは、病院内または病院に隣接した場所に設置されている保育施設のことを言います。この施設では、病院で働くお医者さんや看護師さんなどのような病院関係者の子どもを預かります。
病院関係者のための企業内保育園の一種で、託児所のイメージに近いかもしれません。
病院内保育の役割
「病児保育」と言葉は似ていますが、役割は全く異なります。病児保育は病気になった子どもを一時的に預かる保育であるのに対して、病院内保育は病院の中で健康な子どもを保育することを指すので、求人を探す際には混同しないように注意しましょう。
しかし、病院内であるため看護師さんが常駐している場合もあり、子どもに発熱や体調不良などの症状が出た際には看護師さんと保育士さんが連携して対応することができるようです。
病院内保育は、24時間交代で勤務するお医者さんや看護師さんが安心して子どもを預けながら働けるようにするために設置されているので、医療関係者の育児と働き方を支える役割をもっていると言えるでしょう。
また、近年では病院の人材確保のために設置していることもあり、医療業界の人手不足問題を解消するための一端を担っているとも言えそうです。
出典:医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-2/総務省
病院内保育士の仕事内容や働き方
病院内保育施設で働く保育士さんを「病院内保育士」と呼ぶそうですが、どんな仕事内容で給料事情は一般の保育士さんと比べて違いがあるのでしょうか。
仕事内容
病院内保育は病院内あるいは病院に隣接した場所にあるため、主な仕事は病院関係者の子どもを預かって保育することであり、保育内容自体は一般的な保育士さんと大きな差はないようです。
ただし、一般的な保育士さんはクラスを受け持ったり、行事やイベントの準備などを行ったりするのに対し、病院内保育士さんはクラスを受け持つこともなく、行事がほとんどないため製作作業や持ち帰り仕事が少ないかもしれません。
勤務体系
病院内保育士の勤務体系についてくわしく見ていきましょう。
雇用形態
病院内保育士の求人には正社員とパート・アルバイト募集のどちらもあり、地域限定正社員の募集を行っているところもあるようです。
しかし、認可保育園などに比べると病院内保育を行っている施設の数は少ないため、求人の数もそれほど多くないのが現状です。
勤務時間
保護者である医療関係者の働き方にあわせて、病院内保育は24時間体制で子どもを預かっているところが多いようです。
そのため、夜勤・早朝勤務、また宿直勤務など勤務時間も多岐にわたります。例えば正社員でも週1回の夜勤が入ったり、パートさんなどはシフト制で、夜勤・早朝のシフトに入ったりすることができます。
夜勤はその病院の勤務体系によるので、月に3回ほどあるところや、週に1回のところ、基本的に毎日行っているところなど園によってさまざまになります。夜勤をした場合には、1回につき2500円程度夜勤手当がつく場合もあるようです。
休日
一部の病院内保育施設では1日の実働時間を10時間にする代わりに週休3日制をとるなど、多様な働き方を認めている園もあるようです。
ほかにも、週に2回程度休園日を設けている園や、預かりの予約がない場合にはお休みになる園などもあり、一般的な保育園とは勤務体系に違いがあると言えそうですね。
給料や待遇
病院内保育士の給料事情や、待遇面について解説します。
平均給料
正社員の場合、初任給の平均は18万円前後であり、加えて夜勤手当が付いたり賞与や時間外手当が充実したりしていることが多いでしょう。そのため、一般的な保育士さんの平均的な給料よりは若干高いと言えそうです。
パートやアルバイトの給料は施設や地域によっても異なりますが、東京都の場合時給1000円~1200円程度の園が多いようです。
医療系研修の補助制度あり
施設によっては研修制度が充実しているところもあります。病院内にある保育園ということで、保育士さん向けに、医療系研修の受講費用に対して補助を出してくれる制度を設けているところもあるようです。こうした研修を活用すれば、病院内保育士としてスキルアップを目指すことができそうです。
テーマパークの優待制度
全国展開しているような法人が運営する院内保育園では、テーマパークの入場優待などの独自の福利厚生をしているところもあるようです。福利厚生が充実していると、お休みの日にリフレッシュしやすくなりそうですね。
病院内保育士になるために必要な資格
病院内保育士として働くうえでは保育士資格を持っていることが望ましいでしょう。
しかし、病院内保育において医療行為が行われることはなく、一般的な保育園のように保育を行うため、特別な医療系の資格やスキルが求められることはないようです。
ただし、慢性的な保育士不足によって人ひとりの負担が大きくなってしまうのを軽減できるように、ある程度経験のある保育士さんを募集している園もあるかもしれません。
しかし、ブランクがある方や保育士としての経験が浅い方を歓迎し、研修制度が充実しているような施設もあるため、経験が少ない方でも安心して働くことができそうです。
また、保育士資格を持っていなくても施設によっては資格取得見込みの方もOKのところもあるため、求人に応募する際には相談してみるといいかもしれませんね。
病院内保育士として働くメリット・デメリット
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一般的な保育園で働く保育士さんとは異なる、病院内保育士ならではのメリットやデメリットについて見ていきましょう。
メリット
病院内保育士として働くメリットを紹介します。
小規模で子どもとかかわる時間が多い
病院内保育のメリットの一つは小規模な環境で保育ができることと言えるでしょう。病院内保育は毎日同じ子どもが預けられるわけではなくクラスもないため、比較的少人数の子どもを預かることが多いようです。
そのため、一人の保育士さんに対しての子どもの人数が少なく、一人ひとりと向き合って深く関わることができると言えるでしょう。
風邪などの体調不良に迅速に対応できる
病院内保育は病院の中や付近で行われているため、体調不良の子どもが出た場合にはすぐに病院と連携して対応することができるというメリットが挙げられるでしょう。
また、保護者の方は病院内で勤務しているため連絡もつきやすく、保護者の方にとっても安心と言えそうです。
行事やイベントがほとんどなく、準備を要さない
一般的な保育園にあるような運動会やそのほかの行事やイベントがほとんど行われないため、行事を理由とした忙しさがないというメリットが挙げられるでしょう。
イベントに向けた製作物や持ち帰りの仕事なども少ないため、子どもたちの保育により集中することができると言えそうです。
デメリット
一方で、病院内保育士として働くデメリットにはどのようなものが挙げられるでしょうか。
勤務時間が不規則
病院で働いている人の子どもを預かるため、勤務時間が不規則になることが考えられるでしょう。
保護者である看護師さんやお医者さんは、夜勤や急なシフト変更が発生したり、救急患者のために急に出勤することもあるため、保護者の勤務時間にあわせた柔軟な対応が求められそうです。
そのため、夜勤などのシフトに臨機応変に対応できる人材を求めている求人も多く、パートやアルバイトの求人を出しているところも多いようです。
求める保育がしづらい場合も
病院内保育は小規模で行われていることから園庭もなく、限られた場所で保育を行っていることが多いため、広々とした場所での外遊びやプール遊びなどは難しくなってしまうでしょう。
したがって、子どもたちと思い切り外で遊んだり、季節ごとの行事やイベントを楽しみたいと考えたりする保育士さんにとっては理想と異なることもあるかもしれません。
また、クラスを受け持つこともなく、子どもたちの顔ぶれも日によって変わるため、同じ子どもの成長を近くで見守りたいという方にとっては物足りなく感じてしまうこともありそうです。
病院内保育以外にも、保育士から転職しやすい異業種を知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
病院内保育とはどのようなものかを知り、転職するときの選択肢を広げよう
今回は、病院内保育の概要や求人状況と、病院内保育士の仕事内容や給料、働くうえでのメリットなどについて紹介しました。
病院内保育とは、病院で勤務する人々の子どもを預かり、医療関係者の育児を支える役割を担っています。基本、保育士資格を持っていれば病院内保育士として働くことができ、少人数保育ができることや残業などが比較的少ないというメリットがあります。
病院内保育士は求人数が少ない傾向にはありますが、給料や福利厚生が充実しているところや行事が少ないところを重視して求人を探すのであれば、病院内保育士を視野に入れてみてもいいかもしれませんね。