日本には、お正月に向けて年末に鏡餅を飾る風習があります。しかし、鏡餅の意味についてくわしく知らない保育士さんも多いのではないでしょうか。今回は、お正月に鏡餅を飾る理由や由来、干し柿やみかんといった飾りに込められた意味などを紹介します。子ども向けに伝える方法もまとめたので、保育園でお話してみましょう。
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■目次
鏡餅の由来や飾る時期
お正月を迎えるにあたって年末から飾られるようになる鏡餅。
まずは、由来や飾る時期から見ていきましょう。
由来
鏡餅は、かつて銅鏡と呼ばれていた丸い鏡に由来すると言われています。
三種の神器でもある銅鏡には神様が宿るとされ、神聖なものであると信じられていたようです。
そのことから、年神様の依り代となる丸い餅を鏡に模して、「鏡餅」と呼ぶようになったと伝えられています。
また、鏡餅が2段になっているのは、大小2段で月と太陽、陰と陽を表していて、福徳が重なって縁起がよいからと言われています。
時期
鏡餅は12月28日に飾るのが一般的です。
これは、鏡餅を飾る日として12月29日と12月31日を避ける風習があるためと言われています。
29日は「苦」を連想させることから苦餅と言われ二重苦につながると考えられており、31日は「一夜飾り」となり縁起が悪いとされています。
そのため、12月28日までに飾るか、遅くても30日には飾るのが習わしのようです。
そして、1月11日の鏡開きのときに鏡餅をおろして餅を食べるのが一般的となっています。
松の内(1月7日)が過ぎてから頂くのが基本ですが、なかには松の内が1月15日までという地域もあります。そういった地域では1月15日に鏡開きをしてお餅を食べるようです。
保育園に鏡餅を飾る際は、子どもたちにこのような由来を簡単に説明してみてくださいね。
お正月に鏡餅を飾る意味
そもそも正月行事は、すべて年神様を迎え入れてもてなし、お見送りするためのものと言われています。
元旦になると、年神様と呼ばれる新年の神様が各家庭にやってきて、幸福をもたらしてくれると考えられており、なかでも鏡餅は年神様の依り代であり、お正月の間は年神様の魂が宿る場所と伝えられています。
鏡開きをして魂が宿った餅玉をお雑煮としていただくことで、人々が年神様の運気を分けてもらい、無病息災を願うという意味があるようです。
鏡餅の飾りの意味
鏡餅は大小2つのお餅を重ねるのが一般的で、さまざまな飾りがついた三方と呼ばれる台の上に乗せることでしょう。
地域や家庭によって違いはありますが、ここでは基本的な鏡餅の飾りの名称と意味を紹介します。
四方紅
四方紅は、三方の折敷の上に敷いてお餅をのせる、四方を紅で縁取った色紙のことです。
天地四方(天と地、東西南北)を拝して災いを払い、新年の繁栄を願う意味が込められているようです。
御幣
鏡餅で用いられる御幣は、赤と白の四角形が連なったような帯状の紙のことです。
通常、御幣は神道の祭祀などに用いられ、竹や木に紙垂(しで)と呼ばれる白い紙を挟んだ形をしています。
赤は魔除けの色とされ、繁栄を祈願する意味が込められているようです。
裏白
裏白はシダの一種で、表面は緑色なのに対して裏が白いことからその名がついていると言われています。
裏白は、古い葉とともに新しい葉が生えてくることから、久しく栄えるようにという願いが込められているようです。
また、葉の裏が白いことから、後ろ暗いところがない清廉潔白の心を表すとも言われています。
昆布
古くは昆布の事を「広布」(ひろめ)と言い、喜びが広まっていくという意味があるようです。
また、蝦夷(えぞ)地方で取れることから、夷子布(えびすめ)と呼ばれ、七福神のえびすさまに掛けて福を授かるという意味もあると言われています。
さらに、「子生」という漢字を用いて表されることもあり、子宝に恵まれるようにという願いも込められているそうです。
橙・みかん
鏡餅の上に橙(だいだい)を乗せるのは、「家系が代々(だいだい)栄えますように」という願いが込められているからのようです。
これは、橙が冬に実が熟しても落ちず、枝についたまま何年も落果しないことから、1本の木に何代もの実がついている様を、長寿の家族に見立てて家族繁栄を祈願していたと言われています。
また、橙はみかんで代用されることも多いようです。
串柿
串柿は、干し柿を串に刺したものです。
柿は「嘉来」と表され、喜びや幸せをかき集めるという語呂合わせから、鏡餅に飾られていると言われています。
また、干し柿には大きな種が入っていることから、子宝に恵まれるという意味があるとも伝えられています。
鏡餅の意味を子ども向けに伝える方法
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鏡餅の意味や由来について子ども向けに伝える方法を紹介します。
絵本を読み聞かせる
鏡餅をテーマにした絵本を読み聞かせてみましょう。
意味や由来を言葉で説明しても難しいこともあるかもしれません。
絵本のかわいらしいイラストといっしょに説明すれば、視覚的に理解しやすくなり、子どもたちも楽しく学べそうですね。
簡単な言葉に言い換える
鏡餅について簡単な言葉に言い換えて説明してみましょう。
ここでは、子どもたちからの質問を想定した言い換え例を紹介します。
Q.鏡餅ってなに?
「鏡餅は、お正月に向けてお家のリビングや玄関に飾るものだよ。年神様っていう神様がやってくる場所なんだって。」
Q.どうして鏡餅を飾るの?
「鏡餅は神様が帰ってくるお家みたいなものなんだって。だからお正月に鏡餅を飾ってお迎えをするんだよ。そうすれば、神様がみんなに幸せを運んでくれるんだって。」
Q.どうして鏡餅の上にみかんが乗っているの?
「鏡餅の上に乗っているのは橙(だいだい)って言うんだよ。橙は何年間も実を落とさない果物だから、鏡餅の上に飾って家族みんなの長い幸せをお願いする意味があるんだって。」
このように、鏡餅がどんな意味を持っているのか簡単な言葉に言い換えて説明してみましょう。
魂や依り代といった難しい言葉は使わずに、「年神様が幸せを運んでくれる」「鏡餅は神様が帰ってくるお家になる」など分かりやすくイメージしやすい言葉を使うと、子どもたちも理解を深められるかもしれません。
鏡餅について理解を深める保育園での過ごし方
子どもたちが鏡餅とはどのようなものか理解したうえで、日本の伝統に親しめるような保育園での過ごし方を紹介します。
鏡餅の製作をする
鏡餅にちなんだ製作をしてみましょう。
2段のお餅や頂点に乗っている橙などが特徴的なため、お絵かきにも適したテーマと言えそうです。
また、紙粘土を重ねたり、新聞紙やティッシュペーパーを丸めたりして、立体的な鏡餅の製作に挑戦してみるのもよいでしょう。
以下は折り紙を使った鏡餅の製作動画になります。くわしい作り方を知りたい方は参考にしてみてくださいね。
関連動画:「お正月に折って飾ろう♪折り紙鏡餅/保育士バンク!」
鏡開きをする
鏡餅を飾っている保育園であれば、実際に鏡開きを体験してみましょう。
鏡開きをするにあたってさまざまな作法があるので、子どもたちに説明しながらいっしょに取り組むとよいかもしれません。
鏡開きは木槌などで叩いて割るのが習わしなので、子どもたちでもチャレンジしやすいでしょう。
お餅を食べる
鏡開きで割ったお餅を、お汁粉やお雑煮などに調理して保育園で食べてみましょう。
鏡餅を開いてできた餅玉には、年神様の魂が宿っているとされているため、残さずに食べるのが習わしです。
鏡餅の意味や由来とともに鏡開きについてあわせて伝えると、より関心を持ってくれるかもしれませんね。
保育園でお餅を食べる際は、子どもたちがのどに詰まらせないように注意しましょう。
小さめにちぎったり一つずつ口の中に入れることを伝えたりして、子どもたちの安全を見守りながら食べることが大切ですね。
鏡餅の意味を子どもたちに伝え、お正月の風習に親しもう
今回は、お正月に鏡餅を飾る意味や由来と、子ども向けに伝える方法などを紹介しました。
鏡餅は、かつて丸い形をしていた鏡に由来してその名前がつけられており、新年にやってくる年神様をお迎えする意味があるようです。
また、鏡餅とともに飾られる三方や橙(みかん)、干し柿などさまざまな飾りにもそれぞれ意味があり、繁栄や幸福を祈願していたそうです。
鏡餅について子どもたちに伝えるときは、絵本を読み聞かせたり簡単な言葉に言い換えたりして説明すれば、お正月行事について関心をもてるようになるかもしれません。
鏡餅の製作をしたり鏡開きを体験したりして、保育園でお正月の風習に親しめるとよいですね。