企業主導型保育事業と事業所内保育事業には、どのような違いがあるのかご存じでしょうか。それぞれの特徴を押さえておき、転職の際の園選びに役立てましょう。今回は、企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いについて紹介します。認可の有無や職員の配置基準、無償化の適用範囲など、項目ごとにくわしくまとめました。
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■目次
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の特徴
一見似たような印象を受ける「企業主導型保育事業」と「事業所内保育事業」。それぞれどのような違いがあり、どのような目的で実施されているのでしょうか。
まずは、企業主導型保育事業と事業所内保育事業の特徴から見ていきましょう。
企業主導型保育事業
特徴
企業主導型保育事業は、「子ども・子育て支援新制度」によって、内閣府が2016年度から企業向けに始めた助成制度です。
事業主拠出金を財源とし、一定の条件を満たすことで助成金が支給される仕組みとなっています。認可施設と同程度の整備費や運営費に対する助成を受けられるのが特徴です。
企業主導型保育事業の保育所は、企業が設置する保育施設として「企業主導型保育園」と呼ばれています。単独設置に加えて複数の企業による共同設置ができるほか、設置企業は運営を保育事業者に委託することも可能です。
目的
企業主導型保育事業は、従業員の多様な働き方に合わせて保育を提供する企業や、その従業員を支援するために創設されました。
夜間や短時間・土日のみや週2日のみ勤務など、あらゆる働き方に対応した保育サービスを提供し、待機児童対策に貢献することも目的の一つです。
対象
保育の対象は企業で働く従業員の子どもで、対象年齢に制限はありません。
また、定員の2分の1の範囲で地域枠の設定が可能であり、地域に住む子どもの保育にも対応しています。
事業所内保育事業
特徴
事業所内保育事業は、地域型保育事業の一つです。
地域型保育事業は、2015年に施行された「子ども・子育て支援新制度」により新設されました。
事業所内やその他のスペースに保育施設を設置し、企業が主体となって運営されているのが特徴です。
目的
従業員が就業中に子どもを預けられるようにすることで、育児と仕事の両立を支援する目的があります。また、待機児童の解消も目的の一つです。
2021年の厚生労働省の資料によると、0歳児~2歳児の待機児童の割合は、全年齢のうちの約87%を占めています。全体の約9割を占める0歳児~2歳児を受け入れることで、待機児童の解消も目指しているようです。
対象
預かる子どもは0歳児~2歳児を対象としているため、3歳児以降は連携園などに転園が必要です。
また、地域枠を設定して従業員の子どもだけでなく、保育を必要とする地域住民の子どもにサービスを提供しています。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違い①認可の有無
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企業主導型保育事業と事業所内保育事業の最も大きな違いは認可の有無です。
企業主導型保育事業のもと設置された保育所は国の基準を満たしていない認可外保育施設ですが、先述したように運営費や整備費について認可施設並みの助成が受けられます。
一方、事業所内保育事業のもと設置された保育所は、家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業と同様、国の基準を満たした認可保育所に属しています。そのため保育施設を開設するには市区町村の認可が必要です。
このように、企業主導型保育事業と事業所内保育事業では、認可の有無に違いがあるといえるでしょう。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違い②職員の配置基準
企業主導型保育事業と事業所内保育事業では、保育士の配置基準にも違いがあります。
企業主導型保育事業における配置基準は以下の通りです。
- 0歳児:子ども3人に対して保育士1人
- 1・2歳児:子ども6人に対して保育士1人
- 3歳児:子ども20人に対して保育士1人
- 4・5歳児:子ども30人に対して保育士1名人
以上の合計数に1人を加えた数以上の職員を配置する必要があります。
ちなみに、保育従事者の半数以上が保育士資格を有していなければいけません。
一方、事業所内保育事業における職員の配置基準は以下です。
- 子どもの定員人数が20人以上:認可保育所の基準と同様
(0歳児3人に対して保育士1人、1・2歳児6人に対して保育士1人) - 子どもの定員人数が19人以下:小規模保育事業A、B型の基準と同様
(0歳児3人に対して保育士1人、1・2歳児6人に対して保育士1人)
以上に加えてもう1人職員を配置する必要があります。
また、加えて配置が必要な場合、保育士に代わって保健師、看護師・准看護師を置ける特例が設けられています。
出典:1.企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット/内閣府
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違い③受け入れ可能な子どもの対象年齢
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企業主導型保育事業と事業所内保育事業では、受け入れ可能な子どもの対象年齢にも違いがあります。
企業主導型保育事業の場合、保育施設で預かる子どもの対象年齢が定められていないため、0歳児から5歳児まで幅広い年齢の子どもを受け入れている園も多いでしょう。
一方事業所内保育事業では、保育施設で預かる子どもは原則0歳児~2歳児と定められています。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違い④助成金の範囲
企業主導型保育事業と事業所内保育事業は、どちらも整備費や運営費に対して助成金を受けられる点は共通していますが、助成制度や金額には違いがあります。
企業主導型保育事業では、設置費と運営費の助成金が併せて支給される仕組みです。
施設整備費は必要な費用の4分の3相当分が支給され、運営費は企業の自己負担相当分と利用者負担相当分を除く部分で補助されます。
一方事業所内保育事業の場合、施設設置費の助成金は大企業で全体の3分の1、中小企業では3分の2までと定められています。また、運営費は大企業の場合が現員1人当たり年額34万円、中小企業では現員1人当たり45万円で、体調不良児対応型の場合は更に加算される仕組みです。
または、運営費用から施設定員最大10名に運営月数と大企業月額1万円・中小企業月額5千円を算出した額の、いずれか低い方の助成金が適用されます。
出典:事業所内保育施設設置・運営等支援助成金のご案内P5/厚生労働省
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違い⑤無償化の適用範囲
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企業主導型保育事業と事業所内保育事業では、保育料無償化の適用範囲にも違いがみられます。
そもそも保育料無償化は、保育所や認定こども園に通う3歳から5歳までの子どもが対象です。
幼稚園に通う子どもは月2.57万円まで支援され、0歳から2歳までの子どもは住民税非課税世帯を対象に利用料が無償化されています。
そのなかで、企業主導型保育事業の保育施設に通う子どもについては、3歳から5歳までの保育の必要性がある子どもや、住民税非課税世帯の0歳から2歳に対し、標準的な施設利用料が無償化されます。
一方、事業所内保育事業などを含む地域型保育事業に通う子どもの場合、保育所や認定こども園と同様に無償化の対象です。
ただし、事業所内保育事業のなかでも認可外保育施設の場合は、無償化の対象となるために市町村から保育の必要性の認定を受ける必要があります。
認可外保育施設の場合3歳から5歳までの子どもは月額3.7万円まで、0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子どもは月額4.2万円までの利用料が無償化されます。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違い⑥地域枠の設定条件
企業主導型保育事業と事業所内保育事業は「地域枠」を設定し、従業員の子どもに加えて保育を必要とする地域の子どもにも保育サービスを提供し、待機児童解消につなげる役割を果たしています。
しかし、地域枠の設定条件には違いがあります。
企業主導型保育事業の保育施設は従業員の子どものみの利用も可能ですが、人数が埋まらないなどの理由から定員数の2分の1まで地域枠の設定が可能です。
一方事業所内保育事業の場合は、従業員枠のほかに保育を必要とする地域の子どもへの開放が義務づけられています。
11名~15名の場合は4名、21名~25名の場合は6名、31名~40名の場合は10名と、保育施設の定員によって地域枠の定員数が定められているようです。
出典:1.企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット/内閣府
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いについて理解しよう
今回は、企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いについて紹介しました。
両者には共通する特徴もありながら、助成金や無償化の範囲などについて違いがあります。
施設の職員資格や利用する子どもの対象年齢、地域枠の設定条件などを知っておけば、保育士として働く際の参考になるかもしれません。
保育士資格が無い場合でも、子育て支援員の研修を受講すれば働ける場合もあります。企業主導型保育事業と事業所内保育事業について違いを認識し、自分に合った保育施設で働けるとよいですね。
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