プラスの積み重ねで子どもを伸ばす

保育士おとーちゃんの「保育の力」って何だろう?


前回は、子どものできない所を「できる」ようにする意図では、厳しく関わろうとも、優しく関わろうとも、その子への否定の関わりになってしまうことを述べました。
今回は逆に、プラスに認める積み重ねで子どもを伸ばしていくための保育士のあり方について書きたいと思います。


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子どもをあやつるような関わりはやめよう


前回の復習になりますが、できないことを「できるようにする」という意図というのは、例えば、好き嫌いのある子に対して、次のような関わり方です。


厳しい関わり:



「全部残さず食べなさい」と厳しい顔や言葉を向ける
「全部食べるまでデザートはあげません」


優しい関わり:



「残さず食べられたらえらいな~」とおだてる
「お野菜も食べたらデザートあげるね」とモノで釣る
「ほら、他の子は食べているよ」他児と比べる



こういった子どもへの関わり方は、一般の子育てでも、保育の中でもなんの疑問もなく使われているかもしれません。
厳しい関わりに関しては分かりやすい。でも優しい関わりは、一見ソフトなイメージがありますね。
これらは子どもを大人の思い通りに行動させようとする、子どもをあやつるような関わりであることに違いはありません。

何が問題かというと、その子自身の意欲や自発的な行動をもちいて、その子自身を伸ばそうとする関わりにはなっていないのです。

言い換えると、保育の専門性からすると、子どもの自主性・主体性を尊重した関わりではないのです。
それはつまり、子どもを大人の設定した型の中にギュウギュウと押し込もうとするような関わりです。

どれほど保育者が善意でその子に「できるようになって欲しい」と思っていた所で、その子からすれば自分のいまある姿の「否定」になっています。それはつまり「マイナス」のアプローチで子どもの姿を作ろうとする保育の姿勢です。

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再び登場「あぁ、そうなんだ」でありのままを受け入れる



では、どのように保育士が関わっていけばいいのでしょう?

まずはありのままの目の前のその子の姿を、そのまま受け止めてみましょう。
コラムの第2回でお伝えした「ああ、そうなんだ~」という気持ちがここで役に立ちます。
心の中で思うだけでもいいですし、実際に言葉に出して言ってみてもいいでしょう。

「ああ、そうなんだ。あなたはそのお野菜苦手なのだね」

あるがままを受け止めたら、保育者は結果を急がず子どもの姿を待ってみましょう。

待っただけでは、その子は変わらないかもしれないし、もしかすると自分からほんの少しだけでも食べようとする姿がでてくるかもしれません。

もし、例えちょっとだけでも自分からそれを食べてみようとする行動をとったら、そこを「認め」ます。
このとき「褒める」必要はありません。ただ「認め」ればいいのです。

「あ、自分から少し食べてみようとしたんだね」といったように、その事実を認めればいいのです。
認められるということは、これはその子にとって「プラス」のアプローチです。


プラスのモチベーション・意欲を蓄積させる



ほんの少しかもしれないけれど、ここで「プラス」が築かれました。
この「プラス」は意欲・モチベーションとしてその子の中に蓄積されていきます。

いま目の前の結果としては大きなものではないかもしれませんが、ここで蓄積された意欲・モチベーションはきっと次の機会につながっていきます。

このときなぜ、大げさに「褒める」必要がないかというと、そこには「しめしめ、褒めることでもっと、その子をできる子にしてやろう」という大人の作為が出てしまうからです。

子どもは大人の気持ちに敏感です。そういう気持ちがあると、「ああ、やっぱり自分のあるがままの姿を良くないと思っているんだな」と子どもに見透かされてしまいます。

「褒める」ことは、必ずしも悪いわけではありませんが、諸刃の剣になることがあることを覚えておきましょう。


子どもが自主的に伸びるためには信頼関係が大切



悠長に待っているだけで子どもってそんな都合のいい姿を出すものなの?と思う人もいるかもしれません。

もし、保育者であるあなたが子どもを「支配・管理」でとらえる対象と無意識でも心の内で思って保育をしている人でしたら、いくら待ったとしても子どもが自主的に前進する姿を見ることは難しくなるでしょう。

なぜ待っているだけで子どもが自分から好ましい姿を出すかというと、そこには「信頼関係」があるからです。
「信頼関係」を感じられない人に対しては、子どもは自主的な成長の姿を出すことはありません。自分を支配しようとする人、あやつろうとする人、信じてくれない人に子どもは信頼関係を強くできないからです。

だからこそ、「ああ、そうなんだ~」と現状を否定せずありのままを受け止める保育者の心持ちが必要だったのです。

「私のネガティブな姿であってもこの人は受け止めてくれた」という事実が、子どもにその保育者への信頼関係を築きます。

これがあるから、「待つ」ことで子どもの自分からの前向きな姿を見ることができます。

子どもを「正しい型」にはめたい気持ちをぐっとこらえて、結果を急がず「待って」見ましょう。

このことは実はとても大きな保育の専門性のひとつです。


「待てる」ことは子どもを信じられること



なぜかというと「待てる」ことは、子どもを「信じられる」ことだからです。

「私が介入しなければこの子は正しい姿にならないわよね」と子どもを低く見てしまえば、それは子どもを信じていないということです。
そういう保育者は目指すべき結果ばかりを急ぎ、待つことができません。

すると、叱ったりくどくど小言を並べてその子に正しい行動を無理やり作り出そうとしたり、その子をおだてたり釣ることで短絡的に「結果」を出そうとしてしまいます。

保育者が子どもの姿を伸ばしていく上で大事なのは、目に見える「結果を作り出すこと」ではないのです。
まず、「信頼関係」の構築があり、その上で子どもの自主的な意欲を無理なく導き出すことこそが本当の保育のプロとしての仕事です。

これをその子にかかわる保育者みなが理解し実践していけば、子どもの「できる」は「ついてくるもの」だということを実感できるでしょう。

「結果」は「保育者が作り出す」のではなく、「ついてくる」のです。


プロフィール



保育士おとーちゃん(須賀義一)

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1974年生まれ。大学卒業後、男性としてはまだ珍しかった保育士(当時は保父)資格を取得する。
2009年、保育士としての経験などを元にブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』を開設。

現代の子育てに合った具体的な関わり方を伝えつつ、多くの人からの子育ての悩み相談にも応える。

著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(ともにPHP研究所)など。

東京都江戸川区出身、墨田区在住。一男一女の父親。



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