転職活動中の保育士さんの中には、退職理由の伝え方や保護者への対応などに悩む方もいるでしょう。厚生労働省の調査では、職場の人間関係や仕事量の多さを理由に辞める方も多いようです。今回は、保育士さんの退職理由で多いものを紹介します。また、ポジティブな伝え方や年度途中での離職方法、退職願の例文などもあわせてまとめました。

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■目次
保育士さんの退職理由
転職をするにあたって現在の保育園の退職をする際に、園長先生や副園長先生への離職の伝え方に悩むこともあるでしょう。退職の決断に至る背景はさまざまですが、他の保育士さんの退職理由を知りたい方もいるのではないでしょうか。
厚生労働省の保育士の現状と主な取組において「過去に保育士として就業した者が退職した理由職場」の調査を行ったところ、人間関係が最も多い退職理由として挙げられました。
続いて「給料が安い」「仕事量が多い」という理由を挙げる保育士さんが多く、保育士さんの労働環境に対する不満が主な退職理由であることがわかりました。
その他には体力面などの健康上の理由も退職理由となっており、保育士さんにかかる業務負担の大きさが伺えます。保育現場の人手不足という実状も影響しているといえるでしょう。
それでは具体的に、保育士さんの退職理由の例を詳しくみていきましょう。
職場の人間関係
職場の人間関係において、同じ悩みを抱えている保育士さんも多いのではないでしょうか。
意見や方針の違いだけではなく、性格や価値観の不一致、中には過度な叱責や批判などで一個人を苦しめるようなケースなど、さまざまな状況があるでしょう。
職場の雰囲気が悪く、保育に直接起因しない問題で悩み、退職を決意するケースも少なくありません。
給料が安い
保育士さんの平均給与は都道府県によって異なりますが、在住する県の平均給与を下回っている保育現場も多いでしょう。
生活基盤となる賃金が低いことは保育士さんにとって切実な問題となります。昇給や査定評価などを設けている職場もありますが、基準があいまいであったり昇給金額が低かったりなどの不満についても深く関わる部分であるといえるでしょう。
仕事量が多い
指導案の作成や保護者との懇談、おたよりの作成やイベント準備など保育士さんの仕事は多岐にわたり、常に仕事に追われているという状況の方もいるでしょう。
特に人手不足の現場では、一人の保育士さんに過度な負担がかかっているケースもあるようです。身体的・精神的にも負荷となる仕事量は大きな問題になり、保育士さんが退職を決意することにつながるでしょう。
労働時間が長い

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労働時間が長いことは仕事量の多さと同じように保育士さんを悩ませる問題かもしれません。
延長保育や残業に追われ、身体を休めることができない毎日が続いてしまうこともあるでしょう。我慢強い性格の保育士さんは、責任感から無理を重ねてしまい、最終的には退職に至ってしまうということも考えられます。
また、未就学児の子育て中の保育士さんの中で時短勤務ができないケースもあるようです。
育児・介護休業法で義務化されている時間短縮の勤務制度として、満3歳に満たない子どもを養育している労働者は条件を満たすと、勤務時間を6時間に短縮できる制度があります。
しかしながらその条件に該当せず、未就学児の育児と仕事の両立が難しくなり退職を考える保育士さんもいるかもしれません。
結婚・妊娠・出産
結婚や妊娠、出産は退職理由としてはポジティブな事由で退職する方もいるでしょう。結婚することで別の地域へ引っ越しをするケースもあるかもしれません。
また、妊娠を機に育児に専念する道を選んだり、子育てをしながら働きやすい環境への転身を考えたりする方もいるでしょう。
健康上の理由
個人的な事情を抱えているケースや、過度の労働で身体を壊してしまう場合もあるかもしれません。働くこと自体が難しくなり、現場を離れた保育士さんもいるようです。
異業種への興味
保育の仕事から離れたいと考え、転職を希望する保育士さんも多いでしょう。
理由はさまざまですが、今後の人生プランとして異業種にチャレンジしたい方もいるでしょうし、保育の仕事に前向きになれなくなってしまったということもあるかもしれません。
保護者とのトラブル
子どもの保育だけではなく、保育園に自分の子どもを預けている保護者とのコミュニケーションは保育士さんの重要な仕事のひとつといえるでしょう。
保護者の方との価値観の違いや、対応のミスから修復できないほど関係が悪化してしまうということもあるかもしれません。保育園側と協力し、問題解決ができればよいですが、上手く進められずに保育士さんが精神的に辛くなってしまうこともあるでしょう。
保育園の方針とあわない
職場の方針に納得できず、働き続けることが辛く感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
子どもとの接し方や保育への考え方など根本的な保育観が食い違ってしまい、お互いに理解を示すことができず、退職を決意するケースもあるでしょう。
このように、退職に至る理由は個人によってさまざまですが、紹介した退職理由と共通する考えをもつ方も多いかもしれません。
ここからは離職を決めた保育士さんがスムーズに退職を迎えるためのポイントをみていきましょう。
保育園への退職理由の伝え方とタイミング

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ここでは、保育園への退職意向の伝え方の例文と申告時期について紹介します。
伝え方
退職理由がネガティブなほど、ストレートに不満をぶつけることは避けた方がよいでしょう。
悩んだり傷ついたりした事実があっても、相手側にも自分と同じように言い分や考えがあることを踏まえたうえで、話をするとスムーズに進めやすいかもしれません。
また、退職理由の伝え方は転職時の面接でも活用できます。面接時に前職の不満やトラブルをそのまま伝えてしまうと、マイナスの印象を与えてしまう場合がほとんどでしょう。
ここで、それぞれの退職理由を例に離職する際の伝え方や転職活動中の面接対応について紹介します。伝える際、スムーズなやりとりができるように工夫していきましょう。
伝え方の例文
退職理由別に、伝え方の例文をみていきましょう。
仕事量が多い・労働時間が長い
「効率よく仕事が進むように努力をしていましたが、どうしても業務に追われてしまうことが続きました。そのため慢性的に疲れがたまり、子どもと元気に過ごすことが難しく体力の面で限界を感じています。今回退職をさせて頂いて、まずは自分の身体を回復させることに専念したいと思っています。」
業務量が多い、自分の時間が作れないという言い回しよりも「頑張ってきたけれどこれ以上は身体を壊してしまう」という言い方に変えて伝えてみるのもよいかもしれません。
転職の際の面接においても同様です。
「今後も保育の仕事で頑張っていくためにも、一度休養をしっかりとり体力の回復に努めることが最善と判断し、退職を決意しました。」とすることで、この先も長く保育士として働く意志があることを伝えられるとよいですね。
また「現在は体調も完全に回復している」旨も伝え、健康上の問題がないことを理解してもらう必要があるでしょう。
人間関係がよくない
「日々の業務でいろいろな経験をしたり教えて頂いたりしてきたことで、今後もいろいろな現場で保育を実践しもっと経験値を増やしたいと思っています。新しく挑戦することになりますが、新たな環境で保育の仕事をしていきたいと考えています。」
「同僚や先輩と揉めた」「キツイことを言われた」などと伝えると、他の人を責めるように聞こえてしまいます。
「今の職場が嫌だから辞める」ではなく、「新たな環境で再度挑戦していきたい」という考えを伝えるとよいでしょう。
転職の面接でも、「新天地でより多くの子どもと関わることで経験を積みたい」「キャリアアップを図りたい」というポジティブな言い方をすることで、前向きな姿勢があることをアピールできるとよいですね。
タイミング
保育園側は保育士さんが退職することで、引継ぎや後任の人材採用など次に向けた動きをしなければなりません。
そのため、退職を決意したらできるだけ早い段階で意思を伝えましょう。
退職希望日まで日がない状態での申告は保育園側にとっても負担が大きく、引継ぎ期間も短くなり、他の職員さんへ迷惑をかけてしまうことが予想されます。
お互いにスムーズな対応がとれるよう、保育園側の都合も配慮したうえで伝えることが重要です。
転職に役立つ記事はこちら。
保育士さんの退職願における退職理由の書き方

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保育園にもよりますが、退職時には退職届の記入が必要となる場合がほとんどです。
勤務先の保育園に決まったフォーマットがある場合は、それにあわせた届を提出しましょう。ここでは、決められた書式がない場合の退職届の書き方例を紹介します。
用意するもの
- B5サイズの用紙
- 封筒
- 黒のボールペン
書き方
1. 縦書きで1行目に、退職願と書く
2. 2行目の下段に、私儀と書く
3. 3行目の上段から、退職理由を書く
4. 退職理由を書いた次の行に、退職日を書く
5. 1行あけて提出日を書く
6. 次の行の下段に所属している部署と名前を書く
7. 次の行の上段から提出先の法人名と提出する方の役職と氏名を書く
一般的に、退職届には離職理由を詳細には書かず「一身上の都合」とし、会社都合の場合はそのように書きます。退職理由の後に書く日付は、記入日ではなく提出日のため注意しましょう。
また、提出する相手の氏名は前行の自分の氏名よりも上の位置になるよう調整して書きましょう。
保育士さんが退職理由を伝える際に注意するポイント

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その他に保育士さんの退職時に注意するポイントをみていきましょう。
引き止められた場合の対応を考える
退職を申告した際に、保育園側から引き止めにあうことも考えられるでしょう。
引き止められた場合、退職する意思が強い場合以外は、勤務を継続するにあたって自分の退職理由になった問題点に向けて解決策を話し合ってみましょう。
労働条件や職場環境など、退職の決意に至った部分がクリアにならない限り、勤務の継続を受諾しても近い将来にまた退職を考える可能性が高いでしょう。
希望がある場合には、何をいつまでにどうすることが条件なのか、明確な内容で交渉することが必要です。
「勤務継続はしない」、「退職の意思は変わらない」場合には改めて自分の意向を丁寧に伝え、誠意をもってお断りしましょう。
年度途中での退職希望の場合、園側に迷惑をかけない方法を話し合う
年度途中で辞めることに抵抗がある保育士さんもいるでしょう。
法律上、年度内退職ができない決まりはありません。ただし、勤務先の就業規則に定めがある場合は規則に則って退職申告をする必要があります。
また、年度途中での退職が推奨されない理由もあります。担任をもっている場合は園児や保護者に不安感を与えてしまったり、他の職員さんへの業務負担がかかったり、退職による周囲への影響が大きくなる可能性があります。
後々トラブルにならないよう、法律上の定めはないことは理解した上で、勤務先の保育園と相談し双方が納得できる形で手続きを進めるとよいでしょう。
保護者への報告を行う
退職が決まったら、保護者の方へ退職する旨を伝えましょう。
大切な子どもを預けている保育士さんの退職は、保護者にとって重要な出来事といえます。個人懇談などで会える場合は直接挨拶をし、会えない場合はおたよりなどでお知らせしましょう。
送迎のタイミングで伝える方法もありますが、同じタイミングで全ての保護者に報告することは難しいものです。タイミングのずれや、又聞きで情報が流れてしまうことで苦情に発展する可能性もあるかもしれません。
不要なトラブルを避けるためにも、確実に自分の言葉で挨拶するとよいですね。
異業種へ転職する
保育の仕事から完全に離れ、異業種への転職を考える保育士さんもいるでしょう。保育の現場から異業種への転職は難しいという意見もあるかもしれません。
しかし、どの職種であってもそこで頑張る意志や、活用できるスキルを上手くアピールすることで、異業種への転職の道が開く可能性があります。
転職時の面接では、資格を取得しながらも保育の仕事を辞めたという点に、疑問を持つ面接官もいるでしょう。
退職理由をネガティブな表現のまま伝えないことは前述の通りですが、「保育の現場で得た知識やスキルをこういう風に活かしたいと考えるようになった」など、応募先の職種につなげたい意志を伝えるとよいかもしれませんね。
保育士さんの退職理由はさまざま。上手に伝えて円満退職を目指そう
今回は、保育士さんの退職理由について伝え方のポイントを紹介しました。
退職理由は結婚や出産などのポジティブなものよりも、人間関係の問題などネガティブな要素がある場合の方が多いかもしれません。
しかしいずれにしても、保育園や保護者の方にお世話になった経験は少なからず誰しもあるのではないでしょうか。
保育園や関わりがあった方に向けて配慮やマナーを忘れずに、円満な退職手続きを行うことが大切です。
今後、同業の保育や異業種への転職など目指す道はそれぞれですが、スムーズに退職を迎えられるようポイントをおさえて手続きを進めていけるとよいですね。
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退職理由の伝え方によっては引き止めにあうことも。
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