児童発達支援管理責任者とは障がい児の保育や療育に関わる専門職のひとつで、「児発管(じはつかん)」という略称で呼ばれることが多いです。保育士さんの中には児童発達支援管理責任者(児発管)がどのような仕事をしていて、どのような職場で働いているのか気になる方もいるでしょう。今回は児童発達支援管理責任者(児発管)の仕事内容から働く施設、資格取得の流れなどを詳しく解説します。
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■目次
児童発達支援管理責任者(児発管)とは
児童発達支援管理責任者(児発管)とは、障がい児が通う施設において、専門性を活かして子どもたちの療育を行なう職員のことです。厚生労働省の資料によると、児童発達支援管理責任者は以下の役割を担っているようです。
- 個々のサービス利用者のアセスメントや個別支援計画の作成
- 定期的な評価などの一連のサービス提供プロセス全般に関する責任
- ほかのサービス提供職員に対する指導的役割
児童発達支援管理責任者の業務は個別支援計画の作成がメインですが、保護者の相談支援に加え、ほかの指導員への助言や指導なども行ないます。
障がいを持つ子ども一人ひとりの個性や能力をよく理解するだけでなく、保護者の意思を汲み取りながら、子どもが社会でよりよく生きられるように支援するのが児童発達支援管理責任者の役割と言えるでしょう。
児童発達支援管理責任者(児発管)とサービス管理責任者との違い
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児童発達支援管理責任者に似た職種に、サービス管理責任者という仕事があります。サービス管理責任者は、障がいを持つ方の支援計画の作成を行なう職種です。
2012年3月までは対象者の年齢が限定されていませんでしたが、2012年4月に児童福祉法が改正され、子どもを専門とする児童発達支援管理責任者という仕事が新設されたのです。
これにより、児童発達支援管理責任者は18歳未満の子ども(障がい児)を対象に、サービス管理責任者は18歳以上の大人(障がい者)を支援の対象とすることになりました。
児童発達支援管理責任者(児発管)の仕事内容
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児童発達支援管理責任者が担当する主な仕事内容を確認しておきましょう。
アセスメント・モニタリングの実施
アセスメントもモニタリングも、子どもたちに合った支援計画を作成する上で重要な工程です。
アセスメントとは、障がい児の情報を集めて分析し、自立した日常生活を営むために必要な課題を把握することです。具体的には、家庭や保育所、学校などでの様子、医療歴などの情報を集めて現状をしっかりと確認することなどです。
一方、モニタリングとは、支援計画に基づいて決められたサービスが提供できているかどうか、また、その実際の効果などを、利用者と提供者の双方で確認することです。
子どもにとって最適な療育の実施に際して、見直しの必要性を判断するために行なわれています。おおむね6カ月に1回以上実施することとされていますが、子どもの状態や家庭の状況に変化があった場合には、適宜行なう必要があるようです。
個別支援計画の作成
子どもによって伸ばすべき能力や適切な指導方法はさまざまです。そのため、学習能力を伸ばすための学習、人とのコミュニケーションに慣れる練習、集団内でのルールの理解など、あらゆる手段の中から適切な方法を見つけて個別支援計画を作成します。
子ども一人ひとりの能力や発達段階を理解し、保護者の希望や思いも汲み取りつつ個別プランを作成していくため、まさに専門性を活かしている仕事と言えるでしょう。
保護者への相談支援
児童発達支援施設を利用する保護者の中には、子どもの障がいへの不安や日々の子どもとの関わり方に戸惑っている方もいるかもしれません。
そういった保護者の悩みに寄り添い適切なアドバイスをすることも、児童発達支援管理責任者の大切な仕事となります。
ほかの指導員への指導や療育
個別支援計画の作成や保護者への相談支援といった専門的な仕事のほかにも、実際の療育のための訓練や指導に入ることもあります。
現場で個別支援計画に基づいた指導や療育が行なわれているかを確認し、必要に応じてほかの指導員に助言や指導をします。
事務作業・雑務
児童発達支援管理責任者は施設内の事務作業も担当します。たとえば、支援計画の書類作成、指導に必要な教材や職員の手配などが主な業務です。
また、送迎などを実施している施設ではドライバーとして車の運転することもあるようです。
児童発達支援管理責任者(児発管)が働く施設
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ここでは、児童発達支援管理責任者が働く施設について確認しておきましょう。大きく分けて「障がい児入所支援施設」と「障がい児通所支援施設」の2つがあります。
障がい児入所支援施設
障がい児入所支援施設とは、利用者がその施設に入所し、児童発達支援管理責任者の支援を受けながら生活する施設のことです。
この施設は、医療提供の有無によって「福祉型」と「医療型」の2つのタイプに分かれています。タイプは違っても、どちらも身体・知的・精神障がいを持つ子どもを対象としており、障がいへの対応だけでなく自立支援も充実させているのが特徴です。
福祉型障がい児入所施設では、保護や日常生活の指導、知識や技能の付与などが主に提供されます。一方、医療型の施設では、医療の提供もあわせて行なわれるのが一般的です。
障がい児通所支援施設
障がい児通所支援施設とは、利用者が通園して児童発達支援管理責任者の支援を受ける施設のことです。障がい児通所支援施設に該当するのは、以下のような施設があります。
- 児童発達支援センター
- 児童発達支援事業所(デイサービス)
- 放課後等デイサービス
児童発達支援センターは、事業所よりも大型の施設で地域全体の未就学児の子どもを対象としています。地域にある事業所や園などへ助言やサポートなども担当するのが特徴です。
児童発達支援事業所(デイサービス)は、児童発達支援センターよりも規模の小さい施設です。未就学児の子どもを対象としており、利用する子どもとその家族への支援を行ないます。
そして、放課後等デイサービスは18歳までの小学生以上の子どもを対象とする施設です。放課後や長期休みなどで利用できます。
これらの施設ではいずれも、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与や集団生活への適応訓練などのサービスを提供しています。
児童発達支援管理責任者(児発管)になるには?資格取得までの流れを確認
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児童発達支援管理責任者になるには、一定期間の実務経験と3つの研修を修了する必要があります。資格取得までの流れを確認しておきましょう。
STEP1:実務要件を満たす
実務経験は3つの要件に分かれており、要件によって以下のように経験年数が異なるのが特徴です。
相談支援業務経験が5年以上
相談支援業務とは、福祉や医療、介護、教育などの分野で、障がいに関する相談支援や自立に関する相談支援などに応じて、利用者への助言や指導を行なう仕事のことです。
児童相談所や福祉事務所、高齢者福祉施設、障がい者入所施設入所者の相談を受ける業務や特別支援学校の進路相談担当などが挙げられます。これらの業務を経験した年数が5年以上必要です。
ただし、5年の実務経験のうち、高齢者福祉施設または医療機関以外での経験が3年以上必要になるので注意しましょう。
直接支援業務経験が8年以上
直接支援業務とは、福祉・医療・介護・教育などの分野で、施設での介助や介護、保育や指導を通して、利用者の日常生活を手伝う仕事のことです。
介護老人保健施設でヘルパーとして働いていたり、障がい者を雇用している会社の雇用支援業務、特別支援学校の職業教育担当をしていたりすることなどが挙げられます。これらの業務を経験した年数が8年以上必要です。
また、相談支援業務と同様に、高齢者福祉施設や医療機関等以外での実務経験が3年以上必要となります。
国家資格取得者による相談支援もしくは直接支援の業務経験が5年以上
国家資格を取得しており、相談支援業務や直接支援業務に従事している場合、必要な実務経験の期間が短縮されます。
たとえば、保育士資格や児童指導員任用資格などを持ち、直接支援業務に従事している場合は、5年以上の経験があれば要件を満たしていることになります。
また、医師や看護師、保健師などの資格を持ち、相談・直接支援業務に従事している場合は、3年という期間で資格要件を満たせます。また、これも同様に医療機関や高齢者福祉施設以外での経験が3年以上必要です。
詳しい経験年数や職種・資格に関しては、都道府県や自治体などが定める要件によって異なることもあるので、自身の住む地域の資格要件をチェックするようにしましょう。
STEP2:基礎研修を受ける
STEP1で実務経験を満たした方は、基礎研修を受ける必要があります。かつて、基礎研修を受けるには児童発達支援管理責任者の実務要件を完全に満たさなければなりませんでした。
しかし、2019年に行なわれた法令改正によって、実務要件を満たす2年前から基礎研修の受講が可能となったのです。これにより、相談支援業務は3年以上、直接支援業務は6年以上、国家資格取得者は1年以上の実務経験があれば受講できるようになりました。
STEP3:基礎研修後にOJT研修を受ける
基礎研修の終了後は、原則2年間のOJT研修を受けなければなりません。OJTとは「On the Job Training」の略で、職場の上司や先輩が実際の業務を通じて、部下や後輩に指導してスキルや知識を身につける教育法のことです。このOJT研修では、児童発達支援管理責任者としての業務を行ないます。
なお、すでに児童発達支援管理責任者が配置されている事業所でのOJT研修の場合、2人目の児童発達支援責任者として配置してもらうことが可能です。つまり、OJTによる実務経験が2年を満たない場合でも、個別の支援計画の原案を作成することができます。
STEP4:実践研修を受ける
2年間のOJT研修を修了したあとは、「サービス管理責任者等実践研修」を受講しなければなりません。
受講時間は14.5時間で、受講を終えると正式に児童発達支援管理責任者として働けるようになります。
児童発達支援管理責任者(児発管)になるには何年かかるの?
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児童発達支援管理責任者になるためには、実務経験を満たすことと研修を修了することが絶対条件です。
実務経験が少なくとも5年以上必要であり、さらに3つの研修を受けなければなりません。そのため、最低でも5年以上はかかることを理解しておきましょう。
また、実務経験には年間180日以上の勤務が必要な上、基礎研修と実践研修については定員に上限があります。
希望したタイミングで受講できるとは限らないので、6年以上もしくはそれ以上の年数がかかることを把握しておくようにしましょう。
児童発達支援管理責任者(児発管)のやりがい
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児童発達支援管理責任者として働く場合、どのようなやりがいがあるのでしょうか。
一人ひとりに寄り添った支援ができる
大規模な保育施設などで働いていると、子ども一人ひとりと密接に関われる時間が少なくなってしまうこともあるかもしれません。
一方で、児童発達支援管理責任者は、児童発達支援施設などにおいて子どもたちに最適な個別支援計画を作成することが主な仕事内容です。
子どもが抱える問題に向き合い自立をするサポートを行なう中で、障がいを持つ子どもとより近い距離で深く関わり合えるため、一人ひとりに寄り添った支援ができるでしょう。
専門性を活かして働ける
児童発達支援管理責任者は、経験の中で得た障がいや児童、福祉などについての知識を活かし、個別支援計画の作成や療育をすることができます。
また、保護者の相談にも専門的な観点から対応できるため、子どもと保護者との関わりにおいて、専門性を活かして働けることがやりがいにつながるでしょう。
保育士の経験を活かして児童発達支援管理責任者(児発管)を目指そう
資格を取得するまでにある程度時間のかかる児童発達支援管理責任者。しかし、保育士として働いた経験が直接支援業務の実務経験とみなされるため、3年以上保育士として勤務した経験がある保育士さんでも挑戦しやすい仕事でしょう。
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出典:障害児支援(通所・入所共通)に係る報酬・基準について≪論点等≫/厚生労働省
出典:相談支援専門員及びサービス管理責任者等の研修制度の見直しについて/厚生労働省