Q.年上だけど保育経験は自分の方が上、という同僚にどのように接すればよいでしょうか。
A.結論から言いますと、「人として」は年上の方への接し方、「仕事として」は先輩としての役割を果たすべく接する、ということになりますね。
「自分がどう接してほしいか」をヒントに
難しく考える必要はありません。あなたが自分より年下の人に、どのように接してもらうと気持ち良いですか?まずはそこを基準にして良いと思います。そして、人によって「気持ち良い」と感じることは違いますので、その相手がどう感じているかを察したり、分かりにくければ聞くことです。例えば、年齢が近ければ「1つや2つ年上だからといって、敬語で話されるとかえってやりにくい」という相手であれば、同期や後輩と同じような言葉遣いでも構わないと思います。
保育現場の言葉遣いは、子どもたちの耳と目を意識して
しかし、明らかに年上に見える人に向かって、いわゆる「タメ口」で話すことは、いくら相手がそれでいいよ、と言っても控えて欲しいと私は思います。なぜなら、その言葉遣いを子どもたちが見聞きしているからです。
保育の現場では、いつも子どもたちの耳と目を意識してください。あなたの言動は、そのまま、子どもたちのお手本になります。
子どもたちに「敬語で話す大人」の姿を見せよう
現代社会では、核家族化の影響によって、家庭で大人が敬語で話す様子を見聞きする機会が激減しています。祖父母世代や親戚が身近でなく、親と子どもだけなので、どうしてもそうなりますよね。敬語が苦手な若者は、このように作られていると思います。ですから、園では、大人同士が敬語や「です、ます」で話す様子を子どもたちの目に耳に、たくさん入れて欲しいと思います。お父さんと話すママと、先生と話すママの言葉遣いが違うことを、子どもに見聞きして欲しいし、先生同士の会話にも、そういった礼儀の表れる部分を感じて欲しい。全ては子どものため。どうぞ意識してみてください。
仕事の先輩として、役割を果たそう
そして、「仕事として」は、きちんと先輩という役割を果たしましょう。これもまずは自分が先輩にして頂いたことで、どんなことが嬉しかったか、勉強になったか、と考えてみましょう。私自身は保育士の先輩方からさまざまなことを学び、今の自分を作っているのは諸先輩方のご指導の賜物!と思っています。1年目のド新人の時から、意見を聞いてくださり、アイディアを形にしてくださった。ミスをした時はリカバリーの方法を一緒に考え、一緒に対処してくださった。良いと思えば「いいね」「それ、面白いね」と認めてくださり、ちょっとイカンな、と思えば「先生の思いは?」と先にたずねてくださり、その上で「私はこう思うよ、これが大事だよ」と教えてくださった。あなたには「あんな先生になりたい!」と思う先輩はいますか?その方を目指し、真似をすることから始めてください。すると、改めて先輩の凄さを感じることになりますが、自分は自分らしく、というトコロまでいつかはたどり着けるはずです。
あの先輩のココと、この先輩のココ!いいとこ取りでOK!です。そしてあなたが、後輩から「目指したい先生」と言われる存在になるワケです。
忘れてはいけない 保育はテクニックより「ハート」
最後に、「保育にとって大切なこと」をいつも忘れない、ということを意識してください。
私の研修を受講される保育士さんの中には「年はとってるんですけど、まだ2年目で…」という方もいらっしゃいます。「どう見ても年齢がいってるので、ベテランだと思われてしまって困るんです」と仰います。私はこう返します。「いえいえ、保育で大切なのは、テクニックではなくハートですよ」
もちろん、テクニックは無いよりあった方が、便利に使える場面が多いでしょう。しかしそこに「心」が伴っていなかったら意味がないのです。
先輩として、経験から伝えられることは伝えたら良いと思いますが、「保育の心」については、先輩後輩関係なく、皆で学び合い、研鑽し合い、高め合っていくものです。
先輩ってなんだろう?この機会に一度、いろいろと考えてみると良いですね。
私は先輩に育てて頂きましたが、後輩からも、保護者の皆さまからも多くを学びましたよ。ほら、あなたも子どもたちから沢山のことを学んでいるでしょう?
※この連載では、現役の保育士の皆さんからのお悩みを募集しています。
こちら(info@hoikushibank.jp)まで、保育士お悩み相談と明記の上、お送りください。
プロフィール
内田淑佳(うちだよしか)
一般社団法人そだち 代表理事。心理カウンセラ―。
保育士、認可保育園の園長などを経て、一般社団法人を立ち上げ、子育て支援、保育運営サポート、研修講師を数多く務める。
カウンセラーとしてメンタルサポートの仕事に取り組みつつ、現役の保育士、保育教諭から主任・園長などの管理職、資格取得を目指して勉強中の人、潜在保育士などに向けて、保育の仕事の素晴らしさや、保育をする上で大切なことを伝え続けている。
ウェブサイト https://www.sodachi.net/